ユーフォルビア・峨眉山

ユーフォルビア・峨眉山 ユーフォルビア

ユーフォルビア・峨眉山とは

ユーフォルビア・峨眉山(がびざん)は、鉄甲丸(E. bupleurifolia)と瑠璃晃(スザンナエ、E. susannae)の交配種とされる園芸植物です。自生地はなく、種としての学名もありません。Euphorbia ‘Gabisan’ と書かれることがありますが、品種名として発表された記録は見つかっていません。

パイナップルや松かさのような球形の枝が、子株を出しながら群れて育ちます(臺北典藏植物園)。表面には落ちた葉の跡が盛り上がって並び、うろこのような模様になります。暖かい時期に育つ夏型です。名前や姿の似た交配種に蘇鉄キリン(ソテツキリン)や怪魔玉があり、売り場で名前が入れ替わっていることもあるので、購入時は株の形もあわせて確かめてください。

基本情報

項目 内容
学名 Euphorbia ‘Gabisan’(流通名。E. bupleurifolia × E. susannae の交配種とされる。種としての学名はない)
別表記 峨眉山(がびざん)、Gabisan。海外の ‘Cocklebur’(’Japonica’ とも)を同じものとする解説がある
科/属 トウダイグサ科 / ユーフォルビア属
原産地・自生環境 なし(園芸交配種)
生育型 夏型
耐寒温度(乾燥状態での下限) 最低5℃が目安
成株のサイズ目安 枝1つは高さ2〜5cm・直径約4cm(臺北典藏植物園)。子株を出して群生する
栽培難易度 中級
中級分枝型
  • 鉄甲丸(E. bupleurifolia)× 瑠璃晃(E. susannae)の交配種とされ、種としての学名を持たない。
  • 直径4cmほどの球形の枝が群れる点で、太い幹の上に稜のある枝を広げるムランジーナや、太い幹から円柱形の枝を横に広げるギラウミニアナとは形が大きく異なる。
  • 名前の似た蘇鉄キリン(ソテツキリン)とは別の植物として流通している。国内の販売店の解説には、蘇鉄キリンを怪魔玉(鉄甲丸×鱗宝とされる)と鉄甲丸の交配とするものがあるが、どちらも交配の記録はない。

名称と表記について

日本では「峨眉山」という流通名が定着しています。海外では、同じ鉄甲丸×瑠璃晃の交配とされる ‘Cocklebur’(Euphorbia × japonica、’Pineapple Head’ とも)が流通しており、台湾の臺北典藏植物園は峨眉山の学名欄に ‘Cocklebur’ と書いています。ただ、World of Succulents は ‘Cocklebur’ を米国カリフォルニアの交配家 Edward Hummel の作としていて、国内の園芸サイトがいう「日本で作られた峨眉山」と同じ株かは確かめられていません。日本語で調べるときは「峨眉山」で検索するのが確実です。

区分 表記例 補足
本ページの表記 峨眉山(がびざん) 国内園芸で最も一般的
学名表記 Euphorbia ‘Gabisan’ E. bupleurifolia × E. susannae の交配種とされる株の流通名。種としての学名ではない
和名・流通名 峨眉山 読みは「がびざん」「がびさん」の両方が使われ、「蛾眉山」「娥眉山」と書かれることもある
英語表記 Gabisan(流通名)。Cocklebur・Japonica(同じ交配とされる海外の流通名) 峨眉山と同じ株かは確かめられていない
検索のコツ ユーフォルビア 峨眉山 / Euphorbia ‘Gabisan’ / Euphorbia bupleurifolia x susannae 和名検索が最も有効

峨眉山は、E. bupleurifolia(鉄甲丸)と E. susannae(瑠璃晃)の交配種とされます。国内の園芸サイトは日本で作られた品種と書き、英語の百科サイトは同じ組み合わせの ‘Cocklebur’ を米国で作られたものとしていますが、どちらも交配の記録は示しておらず、だれがいつ作ったかは確かめられていません。「峨眉山」は国内で定着した流通名で、種としての学名ではありません。

なお、Euphorbia abdelkuri(アブデルクリ)はソコトラ諸島に自生する野生の種で(WCVP)、交配種の峨眉山とは別の植物です。

名前は中国・四川省の峨眉山にちなむとする園芸サイトがありますが、だれがどんな理由で名づけたかの記録は見つかっていません。

規制と流通

峨眉山は人工的な交配で作られ、栽培下で殖やされてきた園芸植物です。親とされる鉄甲丸はCITES附属書I(2026年3月に附属書IIから移行)、瑠璃晃(スザンナエ)は附属書IIです。CITESの決議(Res. Conf. 11.11)では、親が附属書に掲載されている交配種も条約の対象になり、注釈のない附属書Iの種から人工繁殖させた交配種は附属書IIとして扱うと定められています。そのため、人工繁殖された峨眉山は附属書IIの扱いとなり、輸出入には輸出許可書などの書類が必要です(2026年10月時点、Species+で確認)。流通する株はすべて栽培下で殖やされたもので、国内での売買にCITESの許可は関係しません。

国内では子株を外して挿し木で殖やした株が流通しています。詳しくは購入前に確認しておきたいポイント(生育型や株の状態の見分け方)もあわせてご覧ください。

購入の際はCITES(ワシントン条約)の仕組みを理解したうえで、来歴が明確な株を選ぶことが重要です。詳細はCITESガイドをご参照ください。

形態の特徴

幹・茎

枝は球形で、高さ2〜5cm・直径約4cmほどです。枝は根元から次々に出て群れになり、若い枝は緑色で、のちに褐色になります(臺北典藏植物園)。表面には落ちた葉の跡がこぶ状に盛り上がってらせん状に並び、松かさのような模様になります(臺北典藏植物園、Llifle)。この模様が見分けるときのいちばんの目印です。

地下には太い根があり(臺北典藏植物園)、World of Succulents と Llifle は、一部が地中に埋まった短い塊茎から枝が四方に出るとしています。

トゲ

峨眉山に刺はありません。表面の突起は、落ちた葉の跡が盛り上がったものです(臺北典藏植物園、Llifle)。ただし、切り口から出る白い乳液(ラテックス)は皮膚や目に触れるとやけどのような炎症を起こすことがあるので(World of Succulents)、作業のときは十分に注意してください。

葉

枝先に長さ3〜5cmほどの細長い葉を束になってつけ、パイナップルのような姿になります(臺北典藏植物園)。葉は落葉性で、乾燥が続いたときや冬の休眠中に落ちます(臺北典藏植物園、Llifle)。観賞の中心は、葉の跡が並ぶ枝の質感と群れた姿です。

花

臺北典藏植物園は、花は緑色でまれにしか咲かないとしており、World of Succulents は ‘Cocklebur’ の開花はこれまで観察されていないとしています。開花時期の記録は見つかっていません。

項目 内容 補足
花色 緑色(臺北典藏植物園) 咲くことはまれ
花の印象 控えめ 造形重視の植物
開花時期 不明 開花の記録が少ない
香り 不明
鑑賞ポイント 枝表面のうろこ模様と群生姿 若い枝は緑色で、のちに褐色になる(臺北典藏植物園)

自生地と育て方の考え方

峨眉山は園芸交配品種であるため、自生地は存在しません。ただし、親種とされる2種はともに南アフリカ原産で、それぞれ異なる環境に適応しています。

瑠璃晃(E. susannae)は南アフリカのリトルカルーに固有の種で、ランゲバーグ山脈の北側のふもとの一部に限って、石英の礫が広がる場所のへりに生えます。知られている生育地はごく狭く、絶滅のおそれがある種とされています(Jabar ほか 2021)。多くの株は茎の先だけを地上に出して石に紛れています(Llifle)。鉄甲丸(E. bupleurifolia)は東ケープ州からクワズール・ナタール州にかけての高い草原の斜面で、岩盤のわきに隠れるように生えます。SANBI は、鉄甲丸は生育中に暖かさ・湿り気・中程度の光を必要とし、休眠中は乾かしておくとしています。親の自生地から峨眉山の育て方がそのまま決まるわけではありません。峨眉山そのものについて、臺北典藏植物園は水はけと通気のよい用土を使い、暖かい時期は用土が乾いたら水を与え、寒い時期は室内に移して水を控えるとしています。

冬は気温が低く、用土が乾きにくくなります。この状態で水を与えると、根や茎の付け根が傷みやすくなります。Llifle も、冬の水やりで腐りやすいとしています。

World of Succulents は日なたを好むとし、室内では日の当たる窓辺に置くよう勧めています。国内の園芸サイトには、日当たりが悪いと間延びして丸い形が崩れるとするものがあります。一方、臺北典藏植物園は夏の強い直射日光は避けるとしています。

峨眉山の栽培は「日当たり・高排水・冬の断水」を基本軸とします。成長期(4〜10月)はしっかり光に当てて乾燥したらたっぷり水を与え、冬は基本的に断水します。

乳液の危険性も管理上の重要事項です。植え替えや剪定の際は手袋とゴーグルを着用し、乳液が皮膚・目・粘膜に触れないよう注意します。ユーフォルビアの乳液は強い刺激性を持つため、作業後は石けんで十分に洗い流してください。

形態と個体差

峨眉山はユーフォルビア属の交配種とされ、自生地を持たない。枝は高さ2〜5cm・直径約4cmの球形で、表面に落ちた葉の跡がこぶ状に並び、松かさやパイナップルのような姿になる(臺北典藏植物園)。地下には太い根があり、一部が地中に埋まった短い塊茎から枝が出るとする解説もある(World of Succulents、Llifle)。

枝は根元から次々に出て、群れた株になる(臺北典藏植物園)。刺はなく、表面の突起は葉の跡である。枝先には長さ3〜5cmの細長い葉が束になってつき、乾燥が続いたときや冬に落ちる(臺北典藏植物園、Llifle)。

交配種なので野生の株はなく、流通する株はすべて栽培下で殖やされたものである。国内の園芸サイトには、日当たりが悪いと間延びして丸い形が崩れるとするものがあるが、光の量で葉の跡の模様がどう変わるかを書いた記録は見つかっていない。

ムランジーナやギラウミニアナは自生地のある野生の種で、交配種の峨眉山とは形も来歴も異なる。

育て方

多肉性・塊根性のユーフォルビアに共通する基本方針は「乾湿のメリハリ」「温度と水やりを連動させること」「低温期は乾かし気味を維持すること」です。茎や根を傷つけると白い乳液(ラテックス)が出ます。皮膚・粘膜を刺激するため、植え替えや剪定では手袋を着用し目への接触を避けてください。

峨眉山の光・置き場所の管理は?

春から秋は屋外の直射日光が基本です。光が足りないと、茎が細く間延びして育つ(徒長)ことがあります。室内から屋外へ移す際は明るい日陰から1〜2週間かけて慣らし、急な直射による日焼けを防いでください。

詳しくは光と置き場所を参照してください。

峨眉山の温度管理と越冬方法は?

冬は最低5〜8℃を下回らないように室内で管理し、最低気温が15℃を下回り始めたら準備して、10℃を下回る前に取り込みます。気温が下がり始めたら水やりを減らし、低温と過湿が重なる状況を避けてください。

詳しくは温度管理と越冬を参照してください。

冬越しの具体的な手順(取り込み・断水と加温・春の戻し方)は冬の管理で解説しています。

峨眉山の水やり頻度と量は?

生育期(春〜秋)は用土が乾いてからたっぷり与え、低温期はほぼ断水に近い管理が基本です。「根が水を吸える状態かどうか」を見極めることが重要で、迷った場合は与えない判断が安全です。

詳しくは水やりの基本を参照してください。

峨眉山への肥料の与え方は?

光と温度が整った成長期に限り、薄めの液肥を少量ずつ与えます。休眠期は施肥しません。

施肥の基本は肥料の基本を参照してください。

峨眉山に合った用土と配合は?

排水性と通気性を重視した配合が基本です。ユーフォルビアに適した配合はユーフォルビアの用土設計を参照してください。

峨眉山の鉢の選び方と植え替え時期は?

植え替えは成長期の入り口(春)が適期です。乳液が出るため手袋を着用して作業してください。詳しくは植え替え方法を参照してください。

鉢の素材やサイズの選び方は塊根植物の鉢の選び方を参照してください。

実生株と現地球の違い

ユーフォルビア・峨眉山は交配種なので、流通する株はすべて栽培下で殖やされたもので、国内の園芸サイトは子株を外して挿し木で殖やすとしています。現地球と実生株の一般的な違いは次のとおりです。

比較項目 現地株(現地球) 実生株
形の個体差 自生環境で形成された独自の個性あり 比較的均一だが、実生ごとの差も楽しめる
管理の難易度 環境変化への適応に時間がかかる場合がある 栽培環境に馴染みやすい
育てる目的 唯一無二の形・自生地の記録を楽しむ 成長を見守り、形を育てる過程を楽しむ
ホームセンターでの遭遇率 交配品種のため「現地球」に相当する流通形態は存在しない 子吹き株の分割で増やしやすい定番品種だが、ホームセンターでの取り扱いは店舗差が大きく、専門の多肉植物店や即売会で見かけることの方が多い

「実生株」「現地株」という呼び方の意味や、どちらを選ぶかの一般的な目安は実生株と現地株の違いで、タネから育てる場合の用土・腰水・発芽温度などの手順は塊根植物の実生(タネまき)のやり方で解説しています。

よく比較される近縁種との違い

比較軸 峨眉山
Euphorbia ‘Gabisan’
ムランジーナ
E. mlanjeana
ギラウミニアナ
E. guillauminiana
パキポディオイデス
E. pachypodioides
球体・茎の形状 球形の枝が群れる。葉の跡が松かさ状に盛り上がる 太い幹(直径10cmまで)の上に稜のある枝を冠のように広げる 太い幹から円柱形の枝を横に広げ、半球形にこんもり茂る低木 ふつう枝分かれしない円柱状の茎(基部の直径5〜8cm)。パキポディウムに似た姿
成株サイズ 枝1つは高さ2〜5cm・直径約4cm 高さ約1mまで 高さ60cmほど(まれに1m) 高さ35〜50cm(まれに70cm)
リブ(稜)数 稜はなく、葉の跡のこぶがらせん状に並ぶ 3〜5(6)稜。稜は翼のように張り出す なし(円柱形の枝) なし(葉の跡が8〜12列のらせん状に並ぶ)
棘の有無・形状 刺はない(突起は葉の跡) 長さ4〜5mmの刺が大きく開いてつく 長さ1〜3cmの刺が節ごとに2〜4本、6〜8列に並ぶ 刺は約1.5cmが1本とも、4〜5mmが2本ともされ、やがて落ちる
花色・花期 緑色・咲くことはまれ 黄色・花期は不明 黄緑〜黄色(まれに赤)・花期は不明 暗い紫〜赤・自生地では乾季の終わり〜雨季の初め
耐寒温度(乾燥状態での下限) 最低5℃ 最低5℃ 最低10℃ 最低10℃
栽培難易度 中級 中級 中級 中級

峨眉山の形は臺北典藏植物園、ムランジーナは Flora Zambesiaca、ギラウミニアナは百科サイトの Llifle、パキポディオイデスは Llifle と Leandri(1946年)の記載によります。

よくあるトラブルと対処

症状 主な原因 対処
徒長(間延び) 光不足が考えられる 明るい場所へ1〜2週間かけて移す。伸びた部分が縮むとは考えにくい
根腐れ・幹の軟化 過水・低温期の湿り続け 傷んだ根を取り除き乾燥させてから植え直す
用土が乾かない 用土の排水性不足・鉢が大きすぎる 排水性の高い用土に植え替え、鉢サイズを見直す
ハダニ・カイガラムシ発生 高温乾燥・通気不足 水で洗い流すか薬剤処理。風通しを改善する

まとめ

  • 鉄甲丸(E. bupleurifolia)× 瑠璃晃(E. susannae)の交配種とされ、自生地を持たない
  • 葉の跡が松かさのように並ぶ球形の枝と群生姿が魅力
  • 地下に太い根と短い塊茎をもつとされる
  • Euphorbia abdelkuri(アブデルクリ)はソコトラ諸島の野生種で、峨眉山とは別の植物
  • 乳液の刺激性が強いため、取り扱い時は手袋・ゴーグルを着用する
  • 冬は水を控え、低温期の過湿を避ける

よくある質問(FAQ)

峨眉山と鉄甲丸はどう見分けますか?

峨眉山は、直径4cmほどの球形の枝がたくさん群れて育ちます(臺北典藏植物園)。鉄甲丸はふつう枝分かれしない1本の茎で、高さ4〜20cm・直径4〜7cmの球根のような形になります(SANBI)。どちらも落ちた葉の跡が松かさのような模様になり、茎の先に葉が束になってつきますが、小さな球が群れるか、1本の茎で育つかで見分けられます。

峨眉山の学名が「Euphorbia abdelkuri」と書いてあるサイトを見ました。正しいですか?

誤りです。E. abdelkuri はソコトラ諸島に自生する野生の種で(WCVP)、鉄甲丸と瑠璃晃の交配種とされる峨眉山とは別の植物です。

峨眉山は挿し木で増やせますか?

はい可能です。枝を清潔なナイフで切り取り、切り口から出る乳液を流水で洗い流してから、明るい日陰で1〜2週間乾燥させます。その後、排水性の高い清潔な用土に挿して管理します。挿し木は成長期(5〜9月)に行うと発根しやすくなります。乳液作業には手袋とゴーグルが必須です。

峨眉山のウロコ模様が薄くなってきました。なぜですか?

模様が薄くなる原因をこの植物で確かめた記録は見つかっていません。臺北典藏植物園は、若い枝は緑色でのちに褐色になるとしているので、新しく出た枝が緑色なのは成長に伴う変化とも考えられます。国内の園芸サイトには、日当たりが悪いと間延びして丸い形が崩れるとするものがあるので、枝が細長く伸びている場合は置き場所の明るさを見直してください。