CITESとは
CITES(サイテス)は「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」の略称で、日本では「ワシントン条約」とも呼ばれています。1975年に発効し、180を超える国と地域が加盟しています。野生生物の過度な国際取引が個体数の減少につながることを防ぐため、取引を規制・管理する国際的な枠組みです。
附属書の種類と意味
CITESでは規制の強さに応じて、対象種を3つの附属書(Appendix I・II・III)に分類しています。塊根植物に関係するのは主に附属書IとIIです。
| 附属書 | 概要 | 国際取引の扱い |
|---|---|---|
| 附属書I | 絶滅のおそれが特に高い種 | 商業目的の国際取引は原則禁止。輸出国・輸入国双方の許可が必要 |
| 附属書II | 現時点では絶滅のおそれは低いが、管理なしでは将来的に危機に陥るおそれのある種 | 輸出国が発行する輸出許可書があれば商業取引が可能 |
| 附属書III | 特定の国が自国保護を目的として登録した種 | 登録国からの輸出には輸出許可書が必要(それ以外の国からの輸出は原産地証明書など) |
塊根植物と附属書の関係
パキポディウム属やユーフォルビア属(多肉性の種)など、塊根植物として人気の高い属の一部がCITESに掲載されています。一方で、アデニウム属のように掲載されていない属もあり、同じ属の中でも種によって扱いが異なることがあります。自生地(マダガスカルやアフリカ南部など)での乱獲や生息域の縮小が問題となってきた歴史があり、国際取引の管理が必要と判断されました。
当サイトで扱う17属の附属書区分は以下の通りです(2026年9月時点、Species+で確認)。
| 属名 | 附属書区分 | 備考 |
|---|---|---|
| パキポディウム属(Pachypodium) | 附属書I / 附属書II(種による) | P. ambongense・P. baronii・P. decaryi・P. windsorii の4種は附属書I。それ以外の種(P. lamerei・P. rosulatum・P. brevicaule 等)は附属書II |
| ユーフォルビア属(Euphorbia) | 附属書I / 附属書II(種による) | 多肉性の種は属全体で附属書II。マダガスカル固有の希少種(E. ambovombensis 等)と、2026年3月に附属書IIから移された E. bupleurifolia(鉄甲丸)は附属書I |
| オペルクリカリア属(Operculicarya) | 一部の種が附属書II | O. pachypus・O. decaryi・O. hyphaenoides の3種。属全体の掲載ではない |
| アデニア属(Adenia) | 一部の種が附属書II / 附属書III | マダガスカル産の A. firingalavensis・A. olaboensis・A. subsessilifolia が附属書II。A. spinosa は附属書III(南アフリカが登録) |
| キフォステンマ属(Cyphostemma) | 一部の種が附属書II | マダガスカル産の C. laza・C. elephantopus・C. montagnacii。C. juttae などアフリカ大陸産の種は非掲載 |
| センナ属(Senna) | 一部の種が附属書II | 塊根性の S. meridionalis(マダガスカル産) |
| チレコドン属・ペラルゴニウム属・オトンナ属(Tylecodon・Pelargonium・Othonna) | 一部の種が附属書III | 南アフリカが2023年2月に登録。T. reticulatus、P. triste、O. cacalioides・O. euphorbioides・O. retrorsa など(O. clavifolia を含む Crassothonna 属は属全体) |
| ディオスコレア属(Dioscorea) | 一部の種が附属書II | 掲載はヒマラヤ産の薬用種 D. deltoidea のみ。亀甲竜(D. elephantipes)は非掲載 |
| コミフォラ属(Commiphora) | 一部の種が附属書II | 掲載は C. wightii のみ。当サイトで扱う種はいずれも非掲載 |
| アデニウム属・ドルステニア属・ブルセラ属・ヤトロファ属・フォッケア属・シンニンギア属 | 非掲載 | Species+ に掲載なし |
附属書への掲載区分は締約国会議(COP)の決議によって変更されることがあります。最新の掲載情報はSpecies+(speciesplus.net)で学名を入力して確認してください。
輸入に必要な書類
日本へ輸入する際に必要な書類は、附属書の区分によって異なります。
| 附属書区分 | 必要な書類 |
|---|---|
| 附属書I | 輸出国政府発行の輸出許可書(Export Permit)+ 日本の経済産業省への輸入許可申請・取得。商業目的の輸入は原則不可のため、一般消費者向けの合法的な流通ルートはほぼ存在しない |
| 附属書II | 輸出国政府発行の輸出許可書(Export Permit)または再輸出証明書(Re-export Certificate)。日本側での輸入許可申請は原則不要だが、書類のない輸入は密輸として扱われる |
合法的な株を見分けるには
購入者がすべての書類を直接確認できるケースは多くありませんが、販売者が書類を適切に管理・開示していることが信頼の目安になります。
- 附属書II掲載種の輸入株:販売者にCITES輸出許可書のコピー提示を求めることができます
- 植物検疫証明書(Phytosanitary Certificate):日本の植物防疫所が輸入時に確認します。合法輸入には必ず伴います
- 附属書I掲載種(P. ambongense・鉄甲丸など)は現地株の商業輸入がほぼできません。販売されている株が人工的に繁殖させたものかどうか、来歴を確認してください
- Species+(speciesplus.net)で学名を検索すると、附属書区分を自分で確認できます
国内で購入する際の注意点
国内で流通している塊根植物には「輸入株」と「国内繁殖株(実生・挿し木など)」の2種類があります。CITESは国際取引を規制するものであるため、日本国内で採種・播種・育成した実生株の国内売買には適用されません。ただし親株が合法的に輸入されたものである必要があります。
ただし、附属書I掲載種は、国内では種の保存法の「国際希少野生動植物種」にも指定されていて、国内での売買・譲渡が原則として禁止されています。パキポディウム(キョウチクトウ科)やユーフォルビア(トウダイグサ科)などは、人工的に繁殖させた株(実生株など)であれば例外として譲渡できますが、野生由来の株は環境大臣の登録を受けたものでなければ売買・譲渡できません。附属書I掲載種を扱う場合は、環境省の案内と種の保存法施行規則(第5条)を確認してください。
信頼できる販売者を選ぶ際の参考となる特徴を以下にまとめます。
- 輸入株の場合、輸入元・輸入時期を明示している
- 国内実生株の場合、播種年・親株の来歴を記載している
- 書類や来歴について質問したときに根拠を持って回答できる
- フリマアプリやSNSでの個人間取引では来歴が不明な株が流通することがある。「安さ」だけを基準にせず来歴の透明性を重視することが、合法的な流通を支える消費者行動につながります
- 実店舗であれば個体の状態や来歴を直接確認しやすくなります。公開情報で確認できる実店舗一覧も参考にしてください。