塊根植物の花と受粉|開花時期・咲かない原因・種の採り方

塊根植物の花と受粉 作業・メンテナンス

塊根植物の花は、属によって咲く季節も、葉が出る時期との前後も、1株で種ができるかどうかも違います。この記事では、属ごとの花の特徴と咲き方、咲かないときに見直す点、花芽や花がらの扱い、受粉させて種を採るまでの流れをまとめました。植物誌や論文、大学・植物園などの解説で確かめられたことを書き、確かめられなかったことはそう書いています。読み終えると、自分の株がどの型の咲き方をするかを知り、咲いた花から種を採るかどうかを決めて、受粉から種の採り入れまで進められるようになります。

見つかった開花時期の記録の多くは、マダガスカルや南部アフリカ、メキシコなど自生地でのものです。南半球では季節が日本と逆になり(7月が真冬、1月が真夏)、日本の栽培で何月に咲くかの記録は、ほとんど見つかりませんでした。そのため、この記事では咲く時期を月ではなく、生育型と葉との順番で説明します。採った種のまき方は実生(タネまき)にまとめています。

塊根植物の花の特徴(属ごとの一覧)

花の形や咲き方は、属ごとに大きく違います。開花時期は自生地での記録で、日本で咲く月ではありません。確かめられなかった項目は「不明」と書いています。

属 花の色・形 自生地での開花時期 葉との順番
パキポディウム 白・黄・赤・ピンクの種がある。黄色い花の種はマダガスカルにだけある 種で大きく違う。ほぼ一年中咲いた記録のある種も、2〜3か月だけの種もある(南半球) 種で違う。葉より先に咲く種も、葉と同時に咲く種もある
アデニウム 5つに分かれた目立つ花 種で違う。乾季の前半に咲く種、冬〜春(5〜9月、南半球)に咲く種がある 葉の細い種はふつう葉と同時。葉の広い種は葉と同時か、しばしば葉より先
ユーフォルビア(多肉の種) 杯状花序(サイアチウム)。黄緑や黄色の小さなものがある 種で違う。南部アフリカの種には、夏に咲く種も、真冬(7月)から真夏(1月)まで咲く種もある 葉がごく小さく、すぐ落ちる種がある。葉の束の中心から咲く種もある
オペルクリカリア 小さな花。色は種で違う 花の記録が少なく、不明 栽培株で、若葉と一緒に雌花が出た記録がある
ディオスコレア 小さな黄緑〜黄色の花が、穂のように並んで咲く 亀甲竜は、植物誌などの多くが11〜2月(南半球の夏)とし、5〜6月とする記録もある。雨が開花のきっかけになる 茎と葉のある時期に咲く
ドルステニア 平たい花托(托花盤)の上に、小さな雄花と雌花が並ぶ 不明。雨季の始まりに花序が出る種がある(二次情報) 花が先で、葉がすぐあとに出る種がある(二次情報)
キフォステンマ 目立たない花。夏の終わりにブドウのような実の房がつく種がある 南半球の春〜初夏とされる種がある 不明
ブルセラ 小さな花 雨季の始まりに葉と花が出る(メキシコ、北半球)。月は地域で違う 新しい葉の直前か、葉と同時
コミフォラ 小さな花 記録が少ない。乾季(4〜10月、南半球)に咲く種がある 葉の前か同時、ときに後。花や実の時期でも、一年の大半は葉がない
アデニア 黄色や緑がかった花の種がある 南部アフリカの種は、南半球の冬の終わり〜夏(7〜1月)に咲く記録がある ほとんど不明
ヤトロファ 小さな花の花房。ポダグリカは赤く、雄花と雌花が混じる ポダグリカはほぼ一年中(中国の植物誌、米国の栽培ガイド) 葉が落ちた冬にも咲くことがある
チレコドン 赤橙の筒形の花の種がある 南半球の春〜夏(9〜2月) 葉が枯れてから咲く
ペラルゴニウム 1つの花に雄しべと雌しべがそろう花。夜に香る種がある 種で違う。南半球の秋〜夏のうち、種ごとに数か月 種で違う。葉が枯れてから咲く種も、葉のある冬に満開になる種もある
フォッケア 黄緑の花の種がある。甘く香る種がある 南半球の8〜5月の間で、種ごとに違う 本来の生育期より前に、まだ小さい葉の間に咲く種がある
シンニンギア 赤い筒形の花の種がある(ハチドリが花粉を運ぶ群) レウコトリカは8〜4月(ブラジル南部、南半球) 葉と同時。雨季に塊茎から葉と花のつく茎が出る
センナ 鮮やかな黄色。1輪か、短い柄に6輪まで 1〜4月とされる(マダガスカル、南半球)。標本にはほかの月の花の記録もある 不明
オトンナ キク科の頭花。花びらに見える舌状花のある種と、ない種がある 南半球の秋〜春(4〜11月)に咲く記録が多い 葉のある冬に咲く種がある

ユーフォルビアの「花」は杯状花序(サイアチウム)と呼ばれ、杯の形をした総苞の中に、雄しべ1本だけになった雄花の群れと、子房1つだけの雌花が入っています。ドルステニアは平たい花托の上に小さな雄花と雌花が並び、オトンナはキク科なので、小さな花が集まった頭花です。どれも、花びらのある1輪の花とはつくりが違います。

花が咲く時期と条件

生育型と開花時期の関係

咲き方は、葉との順番で大きく3つに分けられます。

  • 葉と同時に咲く:葉が茂っている間に咲きます。ディオスコレア(茎と葉のある時期)、シンニンギア(雨季に塊茎から葉と花のつく茎が出る)、パキポディウムの一部の種、葉の細い種のアデニウムがこの型です
  • 葉より先に咲く:葉が出る前か、出始めに咲きます。アデニウム・オベスム(ふつう葉より先)、ブルセラ(新しい葉の直前か同時)、パキポディウムの一部の種、フォッケアの一部の種(まだ小さい葉の間)がこの型です
  • 葉が枯れてから、または休眠中に咲く:チレコドン(調べた7種とも、咲くときには葉が枯れている)、ペラルゴニウムの一部の種、冬の休眠中に葉のない状態で咲くアデニウムの種がこの型です

日本で何月ごろ咲くかの目安は、自分の株の生育型(夏型・冬型)と、その属が咲き方の3つの型のどれに当たるかを合わせて考えます。たとえば夏型で「葉より先に咲く」属なら、休眠明けに新芽が動き始めるころが、咲く時期の候補になります。これはここまでの記述を日本の栽培に当てはめた推論で、日本での開花を確かめたものではありません。日本の記録として見つかったのは、京都府立植物園の加温した温室で、アデニウム・オベスムが見頃として案内されていたこと(2022年7月8日の案内で「7月中旬まで」、2023年6月30日の案内で「7月上旬まで」)だけです。生育型の見分け方は生育型の解説、属ごとの月の動きは栽培カレンダーで確かめられます。

同じ種でも、雨の降り方で咲く時期がずれることがあります。南部アフリカのペラルゴニウムには、雨の降り方で開花の始まりと終わりが変わる仲間があり、チレコドンには、夏に雨が降る地域では開花が数か月遅れることがある種があります。自生地では、雨季の始まりに花が出る属もあります(ディオスコレア、ブルセラ)。

花が咲いても、生育期に入った合図とは限りません。アデニウムには冬の休眠中に葉のない状態で咲く種があり、アリゾナ大学の栽培ガイドは、冬に咲いていても休眠中の株は水を与えず乾かしておくとしています。チレコドンも葉が枯れてから咲きます。水やりを始めるかは、花ではなく新芽や葉が動き出したかで決めると、これらの記述と食い違いません。

咲くまでの年数と株の大きさ

実生から咲くまでの年数は、記録のある属でも種によって大きく違います。

  • アデニウム:早い種は、実生から1年以内(8〜12か月)に咲くことがあります。一方で、4〜5歳になるまでめったに咲かない種もあります(ダイミット〈Dimmitt〉らの栽培記録、PROTA、SANBI)
  • ユーフォルビア:オベサは5〜8年で咲かせられるとされています(SANBI)
  • シンニンギア:実生から数年は咲かない種があり、大型の種は塊茎が大きくなるほど花が増えます。温度と光を管理した韓国の試験では、実生から最短205日で咲いた種もあります(研究の要旨による)

オトンナには、若い株ほどよく咲いてタネをつけ、古い株は花もタネも少ない種があります(SANBI)。アデニウム・ユーフォルビア・シンニンギア以外の属では、実生から咲くまでの年数や株の大きさは確かめられていません。実生株と現地で育った株の違いは実生株と現地株の違いにまとめています。

花を咲かせるための光・温度・肥料

開花の条件を調べた研究や解説が多いのはアデニウムです。光が弱いと咲かず、夏の開花を保つには1日6時間以上の強い光が要るとされています(フロリダ大学)。冬に咲く種も、暗いと正常に咲きません。パキポディウムは半日陰に耐えますが、花つきが悪くなることがあります(SANBI)。置き場所の考え方は光と置き場所にまとめています。

温度については、アデニウムは約38℃を超えると生育が鈍り、開花が止まります。人工気象器で育てたブラジルの試験では、20℃では花の発達が遅れて、つぼみや花が落ちやすくなり、30℃では開花が早まりました。シンニンギアの1種では、開花までの日数が23〜27℃で短くなり、光の量では変わらなかったと報告されています(研究の要旨による)。冬越しの温度は温度管理を参考にしてください。

肥料は、アデニウムでも出どころによって勧める配合が違います。窒素の少ない肥料にした年は花つきが悪かったという1人の栽培経験がある一方、アリゾナ大学の栽培ガイドは、窒素少なめ・リン中程度・カリ多めを勧めています。肥料で生育が進み開花が早まるという研究もあります。ほかの属で肥料と開花の関係を調べた記録は見つかっていません。「リン酸を与えると花芽がつく」ことも、塊根植物では確かめられていません。肥料の種類と与え方は肥料の基本にまとめています。

水については、アデニウムで用土の水分を少なめ(保水量の60〜70%)に保った区のほうが早く咲いたという報告があります(研究の要約による)。

花が咲かない・蕾が落ちるときの原因

咲かない原因を正面から扱った研究や解説は、アデニウム以外に見つかりませんでした。確かめられた原因を、症状ごとにまとめます。

症状 考えられる原因 見直すこと
何年たっても咲かない 株がまだ若い。咲くまでの年数は種で大きく違う 咲くまでの年数と株の大きさで、その属の記録があるか確かめる
咲かない・花が少ない 光が足りない(アデニウム・パキポディウムで確かめられている) 日当たりと置き場所。冬に咲く種は冬の光も確かめる
夏の暑い時期に花が止まった 高温。アデニウムは約38℃を超えると開花が止まる 置き場所の温度
蕾や花が咲かずに落ちる 低温。アデニウムの試験では、20℃でつぼみや花が落ちやすかった 咲く時期に温度が保てているか
葉のある時期に咲かない 葉が枯れてから咲く属・種(チレコドンなど) 異常ではない。葉が落ちる時期に咲くかを見る
咲くのに実がならない 雌雄異株で片方の性の株しかない。自家受粉しにくい。花粉を運ぶ虫や鳥がいない 受粉させて種を採るにはで、属の性と人工授粉を確かめる
実はなったのに種が空 ブルセラは受粉しなくても種のない実が育ち、見た目では区別できない 水に浮くタネは空なので、水に入れて選り分ける

植え替えや剪定の直後、置き場所の急な変化、水切れ、根の傷みが開花にどう響くかは確かめられていません。株の調子そのものが悪い場合は、植え替えや剪定の記事で、作業後の管理を確かめてください。

花芽は切ったほうがいいか

花芽を切ったほうが株のためになるかは、どの属でも確かめられていません。植物誌・論文・植物園・大学の解説を調べた範囲で、見つかったのは園芸掲示板の体験談だけです。

判断の材料になる事実としては、次のものがあります。

  • アデニウム・オベスムでは、開花期に花が養分の主な行き先になり、葉・枝・塊茎の窒素・リン・カリが減ると報告されています(ブラジルの栽培研究)。ただし、花を切れば株が太ることを確かめた試験ではありません
  • パキポディウム・ロスラーツムは、咲くと茎の伸びが止まり、咲くたびに枝分かれします(SANBI)。グラキリスは分類上ロスラーツムの亜種とされていますが、同じことが当てはまるかは確かめられていません

そのため、切るかどうかに裏付けのある答えはありません。種を採りたいなら花を残します。採らない場合、咲かせて楽しむか早めに切るかは好みで選んでかまいません。どちらが株によいかは不明です。発根管理中の株に花芽が上がった場合の扱いも、書かれたものは見つかっていません。根が出ているかの確かめ方は発根管理を参考にしてください。

花が終わったあとの手入れ

咲き終わったあとは、種を採るかどうかで手入れが分かれます。種を採るなら、花を残して受粉させ、実が熟すまで待ちます(次の章)。種を採らない場合、花がらを取ると株の育ちが変わるかは、塊根植物では確かめられていません。花がら摘みの効果を書いた大学の解説は、宿根草についてのものだけです。

花のあとに残る部分が、株の姿の一部になる種もあります。

  • トゲのあるユーフォルビアには、花のあとに花柄が硬くなり、トゲとして残る種があります。逆に、種が散ると花柄が自然に落ちる種もあります
  • チレコドンには、花茎がふつう残り、古い花茎がトゲの網のようになる種があります

チレコドンの1種(ワリチー)は、株の中で花茎に毒(コチレドシド)が最も多く含まれることが分かっています。家畜が食べた場合の研究で、人が触れた場合の害は確かめられていません。念のため、花茎を切るときは手袋をして扱うとよいでしょう。

咲いている間は、花に水をかけないようにします。アデニウムの花は、花びらに水がかからなければ約7日開いているとされます(ブラジルの栽培研究)。開花中の水やりの考え方は、生育型と開花時期の関係のポイントを参考にしてください。

受粉させて種を採るには

種を採るには、花粉を雌しべの先(柱頭)に運ぶ受粉が必要です。自生地では虫や鳥が運びますが、栽培している場所には、自生地で花粉を運ぶ虫や鳥がいないことがあります。パキポディウムには、自生地の外では人工授粉しないと、発芽するタネができないとされる種があります(SANBI)。まず、自分の属の花の性と、1株で種ができるかを表で確かめます。

属 花の性 1株で種ができるか
パキポディウム 1つの花に雄しべと雌しべの頭がそろうつくり(「両性花」とは明記されていない) 属としては不明。自家受粉でも実はなるが結実率・発芽率が下がった種と、1株がよく咲いても実がならなかった種がある
アデニウム 両性花 出典によって違う(雌雄異株と自家受粉)。種のできやすさは株(クローン)によっても違う
ユーフォルビア(多肉の種) 雌雄異株の種(オベサなど)と、1つの杯状花序に雄花と雌花がそろう種がある。鉄甲丸は杯状花序の性が年ごとに変わることがある 雌雄異株の種は、雄株と雌株の両方が要る。鉄甲丸も両性にならない年は雄株と雌株が要る
オペルクリカリア 雌雄異株 受粉には雄株と雌株の両方が要る(1株で種ができるかを試した記録はない)
ディオスコレア 雌雄異株 雄株と雌株がそろわないとできない。他家受粉が必要とされる種がある
ドルステニア 花托の上に雄花と雌花が並ぶ(属の大半は雌雄同株) 属内で違う(温室で結実した種と、しなかった種がある)。当サイトで紹介している種では、1種を自家稔性らしいとする二次情報があるだけ
キフォステンマ 両性花 不明
ブルセラ 多くは雌雄異株。まれに両性花。雌花は両性花のように見えることが多い 受粉しなくても種のない実が育つことがあり、見た目では区別できない
コミフォラ 多くは雌雄異株。両性花の種も少数ある 雌雄異株の種は、ほかの株との受粉が前提
アデニア 多くは雌雄異株。ときに雌雄同株 雌雄異株の種は、ほかの株との受精になる
ヤトロファ ポダグリカは同じ花房に雄花と雌花がつく(雌雄同株)。属には雌雄異株の種もある 塊根の種は不明
チレコドン 両性花 不明
ペラルゴニウム 両性花。咲いた日に雄しべの葯が落ち、雌しべの先は翌日に開く 当サイトで紹介している種は不明
フォッケア 1つの花に花粉の塊と雌しべの頭がそろうつくり(属の分類研究)。雌雄異株とするのは出典の示されていない二次情報だけ 不明
シンニンギア 両性花。雄しべが雌しべより先に熟す 同じ株の花粉で種ができたという研究がある(6種、要旨のみ)
センナ 同じ花に雄しべと子房が記載されている(「両性花」とは明記されていない) 不明
オトンナ 頭花の中心の花は雄の働きをし、まわりの花が雌として種をつける 不明(「2株以上で人工授粉が必要」とするのは出典の示されていない二次情報)

雌雄異株と自家受粉

表の言葉は、次の意味で使っています。

  • 両性花:1つの花に雄しべと雌しべがそろう花
  • 雌雄同株:雄花と雌花が別々に咲き、同じ株につくこと
  • 雌雄異株:雄花だけの株(雄株)と、雌花だけの株(雌株)に分かれること
  • 自家受粉:同じ株の花粉で受粉すること。同じ花の中での受粉と、同じ株の別の花どうしの受粉があります

雌雄異株の種では、雄株と雌株の両方がそろわないと種はできません。ユーフォルビアのオベサ、ディオスコレアの1種(シルバチカ)などで、そう記載されています。ディオスコレアでは、雌雄をそろえるには何株か育てる必要があることが多い、とされています(ハンティントン植物園)。栽培されているユーフォルビア・ポリゴナの変種ニベアは、1つの雄株から増やしたものとみられ、この変種だけでは種ができません。

両性花の属でも、1株で種ができるかを書いた記録は少なく、アデニウムでは出典によって書き方が分かれています。

  • 「ふつう自家受粉せず、種を採るにはふつう別のクローン2株が要る」(アリゾナ大学の栽培ガイド)
  • 「自家受粉でも他家受粉でも種はできる」(ブラジルの栽培研究)
  • 「花のつくりが自家受粉を妨げ、自家不和合(自分の花粉では種ができにくい性質)の可能性もあり、手で他家受粉させる必要があるが、いつも成功するとは限らない」(ブラジルの受粉研究)

アデニウムには、ほとんど種のできない株と、花粉も種もよくできる株があることも報告されています。パキポディウムでは、自家受粉でも実はなるものの、他家受粉より結実率・タネの重さ・発芽率が低かった種がある一方、1株がよく咲いても実がならなかった種もあります。シンニンギアでは、開花1〜2日後に自家受粉させると実が大きく種が多かったという研究があります(要旨による)。

1株で種ができるか分からない属では、別の株の花粉を使うと、ここに挙げたどの記述とも食い違いません。挿し木などで同じ株から増やした株は、遺伝的には同じ株(同じクローン)なので「別の株」に数えません。

人工授粉のやり方

人工授粉の手順が見つかったのは、ユーフォルビアとアデニウムだけでした。

  • ユーフォルビア(雌雄異株の種):小さな絵筆に雄株の花粉をこすりつけ、雌株の柱頭に移します(SANBI)。筆は使ったあとよく洗います。洗わずに次の株に使うと、思わぬ交雑が起きるためです(国際ユーフォルビア協会)
  • アデニウム:花粉を受ける花の花びらを1〜2枚外して葯を出し、ピンセットで葯を外して花粉を集め、受ける花の柱頭に移します(ブラジルの栽培研究)。柱頭が花粉を受け入れるのは、開花の前日から開花3日後までです。花のつくりが複雑で、人工授粉は難しいことがあるとされています

パキポディウムについては、人工授粉の手順を書いたものが見つかっていません。パキポディウムには、葯が一点に集まって花粉のかごをつくり、柱頭はその中にあると記載された種があります。アデニウムも、柱頭は葯がつくる円錐の内側に隠れています。こうしたつくりの花で、外から筆でなでて柱頭に花粉が届くかは確かめられていません。ディオスコレア・アデニア・フォッケアなどほかの属でも、人工授粉の記録は見つかりませんでした。

花粉が出る時期と、柱頭が受け入れる時期がずれる属もあります。ペラルゴニウムは咲いた日に葯が落ち、柱頭は翌日に開きます。シンニンギアも、葯が柱頭より数日早く熟します。この記述から考えると、ペラルゴニウムでは、前の日に開いて柱頭が開いた花に、その日に開いた別の花の花粉をつける順番になります。手順として書かれたものではなく、この記述からの推論です。

種の採り方と採ったあとの扱い

熟した実の見分け方と採るタイミング

受粉がうまくいくと、花のあとに実が育ち始めます。熟すまでの期間は、記録のあるものだけでも幅があります。

  • アデニウム:受粉後2〜3か月で熟し、90日ほどで実が裂け始めます。熟すまで1年以上かかることが多い種もあります
  • パキポディウム:受精後2〜3か月で熟す種があります
  • チレコドン:約4か月で熟す種があります
  • シンニンギア:授粉から4〜5週で熟す種があり、涼しいと長くかかります(米国の栽培家の記録)

ほかの属は、熟すまでの期間が不明です。熟した種は、実の形によって散り方が違うため、飛ぶ前に受ける工夫が要ります。

実と種の形 属 採り方
角のような実(袋果)で、種に綿毛がある パキポディウム・アデニウム・フォッケア パキポディウム・アデニウムは、実が淡い茶色になったらマスキングテープか綿糸で巻き、割れて種が飛ぶのを防ぐ。割れる前に網袋をゆるくかぶせる方法もある。フォッケアの採り方は不明
綿毛のついた小さな実 オトンナ 綿毛で風に乗って散る。採り方は不明
熟すと弾けて種を飛ばす実 ユーフォルビア・ヤトロファ・ドルステニア 弾ける前に網袋・ストッキング・脱脂綿・布などで覆って受ける。ユーフォルビアは実が薄茶色になってから採る種がある。ドルステニアには2mほどタネを飛ばす種がある(二次情報)
乾いて裂け、翼のある種を出す実 ディオスコレア 実が乾いてから採る
ごく細かい種の入った乾いた実 チレコドン・シンニンギア チレコドンは、実のついた花序ごと切り、閉じた紙袋の中で実を開かせて種を集める例がある。シンニンギアの採り方は不明
裂けても種が実に付いたまま残る実 アデニア 熟すと緑から橙や黄に色づく種がある。種は白っぽい膜(仮種皮)に包まれる
核果や液果(中の種を色のついた覆いが包むものもある) コミフォラ・ブルセラ・オペルクリカリア・キフォステンマ コミフォラの熟した実は鳥がすぐ食べ、株に残りにくい。ブルセラは殻が外れて赤〜橙の覆いが見えたら熟した目印で、果皮が取れてから採るほうがよいとされる。ほかは採り方が不明
平たい豆の実(豆果) センナ 熟すと裂ける。熟すまでの期間・採り方は不明
5つに分かれる実 ペラルゴニウム 分かれた実に羽毛のような長い尾がつく。採り方は不明

実や種を扱うときは、株の乳液・樹液と種の毒に注意します。ユーフォルビアの乳液は皮膚や目に強い刺激があり、目に入ると一時的に見えなくなることもあります。アデニウム・パキポディウムなどキョウチクトウ科の株も有毒で、乳液は洗い流し、とくに目に入れないようにします。ヤトロファは種にとくに毒が多いため、集めた種は子どもやペットの手の届かない所に置いてください。受粉や採種の作業そのものの危険を調べた記録は見つかっていませんが、作業では液を通さない手袋と保護メガネを着け、目に入ったらすぐ大量の水で洗って医療機関に相談してください。手袋は手袋の選び方を参考にしてください。

採った種のまき時と保存

新しい種を早めにまくよう勧める記述が多くあります。パキポディウムの種はすぐに発芽力を失うとされ、SANBI は新しい種をすぐまくよう勧めています。コミフォラも、新しい種を生育期の初めにまくとされています。

一方で、保存がきくという記録もあります。アデニウム・オベスムの種は、25℃で12か月保存しても発芽率が変わりませんでした。パキポディウムにも、乾かして冷凍したあとも発芽力を保ったタネのデータがあり、「すぐ発芽力を失う」という記述とは書き方が違います。保存の条件で結果が違う可能性がありますが、確かめられてはいません。

  • ユーフォルビア:数週間で発芽率が50%に落ちることがあり、乾かして5℃で、空気と水を通さない容器に入れて保存するとされます(国際ユーフォルビア協会のサイト。数値の出典は示されていない)
  • ブルセラ:水に浮くタネは中身が空です。別の3種では、室温(約20℃)の乾いた場所で6か月以上保存できました
  • ディオスコレア:タネの紙のような翼をこすって取ってからまくと、10日以内に発芽するとされる種があります(SANBI)

ほかの属では、種の保存や発芽力の持ちを調べた記録は見つかっていません。まく時期や用土、腰水などの手順は実生(タネまき)にまとめています。

海外からタネを取り寄せる場合、ワシントン条約(CITES)の許可が要る種があります。附属書IIのパキポディウムと多肉のユーフォルビアは、注釈でタネが規制の対象から外されています。一方、附属書Iのパキポディウム4種や鉄甲丸、注釈なしで附属書IIに載る植物(オペルクリカリア3種、センナ・メリディオナリス、アデニア3種、キフォステンマ2種)は、タネも対象になると読めます(Species+、2026年10月確認)。郵便でタネを輸入する場合は、植物防疫法の輸入検査も必要です。附属書Iのパキポディウム4種と鉄甲丸は、国内では種の保存法の国際希少野生動植物種でもあり、株の譲渡しは規制されています。タネ(種子)がこの規制に含まれるかは法令の読み方によるため、タネを人に譲る前に環境省に確認してください。附属書の見方はワシントン条約(CITES)ガイドにまとめています。

実生から何年くらいで花が咲きますか?

属や種で大きく違います。アデニウムには実生から1年以内に咲く種がある一方、4〜5歳になるまでめったに咲かない種もあります。ユーフォルビア・オベサは5〜8年とされています。パキポディウムをはじめ多くの属は、咲くまでの年数が確かめられていません。

1株だけでも種は採れますか?

雌雄異株の種(ユーフォルビア・オベサ、ディオスコレアなど)は、雄株と雌株がそろわないと採れません。1つの花に雄しべと雌しべがそろう属でも、1株で種ができるかを書いた記録は少なく、アデニウムでは、アリゾナ大学の栽培ガイドは「ふつう別の株が2つ要る」、ブラジルの栽培研究は「自家受粉でも種はできる」としています。別の株の花粉を使う方法なら、どちらとも食い違いません。

葉が出る前や休眠中に花が咲いたら、水やりを始めてもいいですか?

花だけで決めないでください。アデニウムには冬の休眠中に咲く種があり、アリゾナ大学の栽培ガイドは、冬に咲いていても休眠中の株は乾かしておくとしています。水やりを始めるかは、新芽や葉が動き出したかで判断します。季節ごとの水やりの再開は春の管理にまとめています。

受粉がうまくいったかは、どこで分かりますか?

受粉がうまくいくと、花のあとに実が育ち始めます。パキポディウムやアデニウムでは、角のような対の実ができます。熟すまでの期間は属で違い、アデニウムでは受粉後2〜3か月です。なお、ブルセラは受粉しなくても種のない実が育つことがあるため、実がなっても種が入っているとは限りません。

蕾が咲かずに落ちるのはなぜですか?

調べられているのはアデニウムだけです。20℃の環境で育てた試験では、花の発達が遅れ、つぼみや花が落ちやすくなりました。30℃では開花が早まっています。水切れや置き場所の変化と蕾が落ちることの関係を調べた記録は見つかっていません。

まとめ

  • 咲く時期は月ではなく、生育型と「葉と同時・葉より先・葉が枯れてから」の型で見当をつける
  • 花が咲いても生育期に入ったとは限らない。水やりは新芽や葉の動きで判断する
  • 咲かない原因で確かめられているのは、株の若さ・光・温度。肥料の配合は出典によって割れている
  • 花芽を切るべきかは確かめられていない。種を採るかどうかで決める
  • 雌雄異株の種は雄株と雌株がそろわないと種ができない。1株で種ができるか分からない属は、別の株の花粉を使う
  • 熟した実は飛ぶ前に袋や網で受ける。まき方は実生(タネまき)へ

参考・外部リンク

参考にした資料の一覧(58件)