塊根植物の発根管理|方法・環境づくり・確認のポイント

塊根植物の発根管理 作業・メンテナンス

現地株(未発根株)を購入した場合は、自分で発根管理を行う必要があります。発根管理の成否が株の生死を左右することもある重要な作業であり、適切な環境づくりと観察を続けることが大切です。

このページは、大学・植物園の解説で確かめた範囲で書いています。輸入の未発根株そのものを扱った資料は見つからなかったため、根を切ったサボテンを植え直す手順(アリゾナ大学)と、塊根植物の挿し木(南アフリカ国立生物多様性研究所〔SANBI〕)の記述を手がかりにしています。

現地株と実生株の違いや、それぞれの特徴については実生株と現地株の違い・選び方も合わせて参考にしてください。

発根管理は株の生死に直結する上級者向けの作業です。塊根植物を初めて育てる場合は、発根済みの実生株や国内育成株からスタートすることをおすすめします。

発根管理とは

未発根株と発根済み株の違い

塊根植物の「現地株」とは、マダガスカルや南アフリカなど原産地から採取・輸入された株のことを指します。日本の植物防疫法では土や土の付いた植物の輸入が禁止されているため、輸入株は土を落とした状態で届きます。根を切った状態で売られている株を「未発根株」と呼びます。

一方、国内で種から育てた実生株や、すでに根が張った状態で販売されている現地株は「発根済み株」です。発根済み株はそのまま通常の管理に移行できますが、未発根株は根が生えるまでの管理(発根管理)が必要です。

なぜ発根管理が必要か

根がなければ株は水分や養分を吸収できません(バージニア工科大学は、切り口の細胞は水を十分に吸えず、水を吸うのは根だとしています)。未発根の状態が長引くと、株が蓄えていた養分を消費し続け、最終的に枯死してしまいます。発根管理とは、根が生えやすい環境を整え、できる限り早く・安全に根を発生させることを目的とした管理です。

未発根株は根の切り口が剥き出しの状態で、発根済み株は根が張っています。購入時に根の状態を確認することが第一歩です。

発根管理の前の確認事項

購入直後の株は、すぐに土に植えず、まず切り口と幹の状態を確認してください。切り口が乾いていない場合は、風通しの良い日陰で乾かしてから植えます。アリゾナ大学は、掘り上げたサボテンの切った根を日陰で1〜2週間乾かし、切り口をカルス(切り口をふさぐ組織)でふさいでから植えるとしています。SANBI の塊根植物の挿し木では、乾かす日数は数日(パキポディウム・ビスピノーサム)、約1週間(アデニウム)、2週間(ペラルゴニウム・クリスミフォリウム)と種によって違います。

発根管理を始める前に、株の現在の状態を確認することが重要です。状態が悪い株を無策で発根管理しても、回復しない場合があります。

切り口・根元の状態確認

根の切り口と根元を見て、黒ずみやカビがないか、腐った臭いがしないかを確かめます。カビや臭いがある場合は、その部分の組織が柔らかく黒く腐っていないかを見ます。

柔らかく黒く腐った組織があれば、取り除きます。アリゾナ大学は、サグアロ(大型のサボテン)の細菌性軟腐病の手当てとして、柔らかく黒く腐った組織を取り除き、刃物はよく切れる清潔なものを使うとしています。塊根植物の腐りに同じ手当てが合うかは確かめられていません。

幹の硬さの確認

幹(塊根部)を指で軽くつまんで、柔らかい箇所がないかを確かめます。柔らかい箇所があれば、根の切り口と同じように、その部分の組織が黒く腐っていないかを見ます。幹の硬さで発根するかどうかを見分けられるかは確かめられていません。

発根管理の流れ(ステップ)

発根管理は手順を踏んで進めることで、失敗リスクを下げられます。以下の流れを参考に順を追って実施してください。

ステップ1:切り口・幹の状態確認
根の切り口と根元の黒ずみ・カビ・腐った臭い、幹の柔らかい箇所を確かめます。問題がなければそのまま次のステップへ進みます。

ステップ2:腐った組織の除去(必要な場合)
柔らかく黒く腐った組織がある場合は、よく切れる清潔な刃物で取り除きます(発根管理の前の確認事項)。取り除いたあとは、断面が乾くまで次の工程に進みません。

ステップ3:切り口を乾かす(カルス形成)
風通しの良い日陰に置き、切り口を乾かします。日数の目安は発根管理の前の確認事項を参照してください。

ステップ4:発根促進剤(使う場合)
ルートン・オキシベロンの農薬登録は挿し穂の基部に使う方法で、輸入株の根の切り口に使う方法は登録にありません。登録の使い方は発根促進剤の使い方の節にまとめています。

ステップ5:用土に固定
排水性の高い用土に植え付けます。深く埋めず、株が安定して動かない程度に固定するのがポイントです。

ステップ6:植えてすぐには水を与えない
アリゾナ大学は、根を切ったサボテンを植え直したあと1週間は水を与えず、傷んだ根を乾かすとしています。先端に新しい成長が出るまで水を与えないとする資料(アリゾナ大学)や、発根を確かめてから水やりを始めるとする資料(SANBI のアデニウムの挿し木)もあります。

ステップ7:温度・光・通気を維持しながら観察
暖かさ・明るい日陰・通気を保ちながら、株の変化を観察し続けます。焦らず根気よく管理することが大切です。

発根管理の環境づくり

発根には「温度・光・水分・通気」の4つの要素のバランスが重要です。それぞれの目安と考え方を以下に解説します。

温度:生育期の暖かい時期に行う

発根管理は、株の生育期の暖かい時期に行います。塊根植物の発根に適した温度を数値で示した資料は、大学や植物園の解説では確かめられていません。アリゾナ大学はアデニウムの挿し木を生育期の早い時期に行い、湿り気を保って「とても暖かく」置くとしています。南アフリカ国立生物多様性研究所(SANBI)も、アデニウムやパキポディウムの挿し木を春から夏の生育期に行い、暖かい場所に置くとしています。数値の参考としては、サボテン・アガベの挿し木について、アリゾナ大学が夜の気温が16℃以上の時期に挿せばおおむね発根するとしています(塊根植物の値ではありません)。

冬型の属は時期が逆で、葉が出ている生育期に行います。SANBI は、ペラルゴニウム・エキナツムとクリスミフォリウムの挿し木を葉が出始める初秋に、ペラルゴニウム・トリステの挿し木を秋か春に行うとしています。加温は前提ではなく、チレコドン・パニクラツスは冬がとても寒い場合に底面加温を使い、ペラルゴニウム・トリステは加温しない育苗枠で発根させるとされています。冬型の株は、夏型の株と同じように高い温度で管理しないようにします。

夏型の株を気温が足りない時期に発根管理する場合は、ヒーターマット(育苗マット)を鉢の下に敷いて根元を温めます。塊根植物向けの設定温度を示したメーカーの資料は見つかっていません。一般の草花の挿し木について、ミシガン州立大学は用土の温度を23〜25℃、気温を20〜23℃としています。底面加温が強すぎると、根元の温度が根の伸びる温度を超えて根が止まることがあるともしているため、温度計で鉢の用土の温度を確かめながら設定します(気温とは別に測ります)。

光:明るい間接光〜弱めの直射光

発根管理中は、直射日光を少しさえぎった明るい場所に置きます。アリゾナ大学は植え直したサボテンを、日光の30%以下をさえぎる遮光ネットで数週間覆うとしています。SANBI は、パキポディウム・ビスピノーサムの挿し木を半日陰に、ペラルゴニウムの挿し木を自然光の約50%が当たる場所に置くとしています。暗すぎる場所では挿し穂が細くなるとされる(アリゾナ大学、サボテンの挿し木)ため、暗い室内の奥などは避けます。

用土:排水性を最優先した乾き設計

発根管理中の用土は排水性を最優先に考えます。鹿沼土・パーライト・日向土などを中心に構成した、水はけの良い配合が一般的です。用土が常に湿った状態だと根の切り口が腐りやすくなります。

水やりを始めたあとも、用土が乾いてから次の水を与えます(アリゾナ大学)。用土の選び方の詳細は用土ガイドを参考にしてください。

通気:根元の蒸れを防ぐ

発根管理中の株の根元は通気性の良い環境に置くことが大切です。密閉した空間や蒸れやすい場所では根の切り口にカビが生えやすくなります。屋外管理であれば風通しが自然に確保されます。室内管理の場合はサーキュレーターなどで空気を動かすとよいでしょう。

ヒーターマットは鉢の下に敷き、サーモスタットで温度を管理します。センサーの置き場所と設定のしかたはサーモスタットの選び方で解説しています。

発根促進剤の使い方

発根促進剤(ルートン・オキシベロン)は、農薬登録で使い方が決まっています。ルートンは挿し穂の基部を水で湿らせて粉を薄くまぶすか、水で練ったペーストを切り口に塗って日陰で乾かしてから挿す方法、オキシベロンは薄めた液に挿し穂の基部を浸す方法で、どちらも挿し木(挿し穂)が対象です。輸入株の根の切り口に使う方法は登録にありません。

発根促進剤の種類・使い分け・具体的な使い方については発根促進剤の選び方・使い方ガイドで詳しく解説しています。あわせて活性剤(メネデール等)を水やりに併用する方法もあり、詳しくは活性剤・メネデールの使い方をご覧ください。

発根の確認方法

発根したかどうかを確認する方法はいくつかあります。ただし、無理に確認しようとすると発生した細根を傷つける可能性があるため、慎重に行いましょう。

発根までの期間は種によって大きく違います。SANBI の挿し木の記述では、ペラルゴニウム・エキナツムは2〜3週間、ペラルゴニウム・クリスミフォリウムは2〜3か月、チレコドン・パニクラツスはしっかり根が張るまで約1年で、パキポディウム・ナマクアナムは成長が見えるまでとても長くかかるとされています。サボテンの挿し木は夏なら多くが4〜6週間で発根し、冬は地温が低いため根の伸びが遅れるとされています(アリゾナ大学)。輸入の未発根株の期間を示した資料は見つからなかったため、日数だけで判断せず、幹の硬さと株の手ごたえを確かめながら待ちます。

株を軽く引っ張る

株を軽く上方向に引っ張ってみます。抵抗があり、株が固定された感じがすれば、根が出始めています(ワシントン州立大学・バーモント大学、一般の挿し木)。強く引くと出たばかりの根を傷めるため、軽く引くだけにします。

目視での確認

鉢底穴や用土の表面近くに根が見えれば、発根しています。掘り起こして確かめると出たばかりの根を傷めるため、引っ張ったときの手ごたえや、外から見える根で判断します。

新しい芽や葉が出てきたら

アリゾナ大学は、サボテンの挿し木や植え直した株で、先端に新しい成長が出て株がふっくらすることを、根ができて水を吸い始めたしるしとしています。塊根植物の未発根株で、新芽が出たことと発根の関係を確かめた資料は見つからなかったため、新芽が出たら株を軽く引っ張って、手ごたえがあるかもあわせて確かめます。

発根後の管理

徐々に通常管理へ移行する

発根が確認できても、すぐに通常の管理に切り替えると株がストレスを受けることがあります。水やりや日光の量は、少しずつ通常の管理に近づけます。アリゾナ大学は植え直したサボテンの遮光を数週間続けるとし、ワシントン州立大学は一般の挿し木を約1週間かけて外気に慣らし、数週間は直射日光を避けるとしています。

急な環境変化を避ける

暗い日陰から急に強い日なたへ移すと、株が日焼けすることがあります(アリゾナ大学、アデニウム)。光は段階的に強めます。株の様子(葉の状態・幹の張り)を観察しながら、焦らずに管理を続けることが大切です。

発根後の植え替え方法については植え替えの方法と手順も参考にしてください。

よくある失敗パターン

失敗パターン 原因 防ぎ方
管理開始直後から根が腐った 水やりが多すぎた・切り口が乾く前に植えてしまった 切り口を乾かしてから植え付け、植えてすぐには水を与えない
発根せずに株が萎れてきた 温度が低すぎた・光量が足りなかった 生育期の暖かい時期に行い、気温が足りなければヒーターマットで根元を温めて、明るい場所で管理する
発根確認しようと掘ったら根が切れた 早まって用土を掘り返した 引っ張ったときの手ごたえや外から見える根で判断し、掘り起こしは避ける
発根後すぐに強光に当てたら葉焼けした 発根後に急いで環境を変えてしまった 発根後も遮光を数週間続け、光を少しずつ強める
幹がぶよぶよになって腐り始めた 腐りが進行した株を確認せずに管理し続けた 定期的に幹の硬さを確かめ、柔らかい箇所があれば、その部分の組織が黒く腐っていないかを見る。腐っていれば取り除く
気温が低い時期に始めて、なかなか発根しない 季節や温度管理が不十分だった 生育期の暖かい時期(冬型は葉が出ている生育期)に行うか、夏型の株はヒーターマットで温度を補う

発根管理はどのくらいの期間かかりますか?

種によって大きく違います。SANBI の挿し木の記述では、ペラルゴニウム・エキナツムは2〜3週間、チレコドン・パニクラツスはしっかり根が張るまで約1年です。輸入の未発根株の期間を示した資料は見つからなかったため、日数ではなく、幹の硬さと引っ張ったときの手ごたえで判断します。夏型の株は寒い時期に始めると遅れます。

ヒーターマット(育苗マット)は必ず必要ですか?

春〜夏に管理する場合は必須ではありません。夏型の株を秋以降など気温が足りない時期に発根管理するなら、根元を温めるのに使えます。設定温度は温度計で鉢の用土の温度を確かめながら決め、温めすぎないようにします。冬型の株は葉が出ている生育期に行い、加温は前提にしません。

発根しているかどうかはどうやって確認しますか?

株を軽く上方向に引っ張り、抵抗があれば根が出始めています。鉢底穴や用土の表面に根が見えれば発根しています。新芽が出たら、引っ張ったときの手ごたえもあわせて確かめます。

水耕と土耕、どちらが発根しやすいですか?

塊根植物で比べた資料は見つかりませんでした。一般の挿し木について、バーモント大学は水挿しなら根の伸びを観察でき、土に挿せば水から土へ移す手間がないとしています。バージニア工科大学は、水を週1回替えないと酸素が足りなくなって発根を妨げ、水の中でできた根は土に移したときに傷みやすく枯れることも多いとして、多くの植物には望ましい方法ではないとしています。

発根管理中に葉が落ちたのは大丈夫ですか?

葉が落ちただけで失敗とは限りません。根のない挿し穂は葉から水を失うため、SANBI はコミフォラの挿し木で、蒸散を減らすために葉の多くを取るとしています。発根管理中の落葉について述べた資料は見つからなかったため、幹の張り(弾力)を確かめ、張りがあれば管理を続け、ぶよぶよになってきたら腐りを疑ってください。

まとめ

  • 未発根株(現地株)は発根管理が必要であり、成否が株の生死に直結することもある
  • 購入直後はすぐに植えず、切り口を日陰で乾かしてから植え付ける(日数は資料により数日〜2週間)
  • 管理前に幹の硬さ・根の切り口・腐りの有無を必ず確認する
  • 発根管理は生育期の暖かい時期に行う(冬型は葉が出ている生育期)。夏型の株を気温が足りない時期に管理するならヒーターマットで根元を温める
  • 光は直射日光を少しさえぎった明るい場所。暗すぎる場所も避ける
  • 用土は排水性を最優先に設計し、水やりは控えめにする
  • 発根までの期間は種によって数週間〜1年ほどと大きく違う。日数ではなく幹の硬さと手ごたえで判断する
  • 発根は株を軽く引っ張ったときの手ごたえや、鉢底穴から見える根で確かめる
  • 発根後も遮光を数週間続け、光と水やりを少しずつ通常の管理に近づける
  • 発根促進剤の詳しい使い方は発根促進剤ガイドを参照

参考・外部リンク

参考にした資料の一覧(18件)