サーモスタットは、温度センサー(感温部)が測った温度に応じて、つないだヒーターの電源を自動で入れたり切ったりする器具です。ヒーターマットや温室用のパネルヒーターのうち温度調節機能のない製品は、それだけでは温度を決められません。タキイ種苗は園芸マットに、園芸ネットは温室用のパネルヒーターに、サーモスタットを必ず併用するよう求めています(園芸ネットは「ヒーター単体では危険」としています)。
このページでは、サーモスタットの種類と仕様の読み方、設定温度の決め方、センサーの置き場所を、メーカーの取扱説明書と製品仕様にもとづいてまとめます。
サーモスタットの仕組みと種類
園芸用のサーモスタットは、本体・温度センサー・ヒーターをつなぐコンセントでできています。本体の電源プラグを壁のコンセントに差し、ヒーターのプラグを本体側のコンセントに差して使います。センサーが測った温度が設定より下がるとヒーターの電源が入り、上がると切れます。
設定のしかたは、ダイヤルを回して合わせるものと、数値を表示・入力するデジタル式があります。ほかに、加温用か冷却用か(両方を切り替えられる製品もあります)、設定できる温度の範囲、つなげるヒーターの容量(W)が製品ごとに違います。
主な製品の仕様
園芸でよく使われる製品の仕様を、メーカーの取扱説明書・製品ページの値で比べると次のとおりです(2026年10月に確認)。
| 製品 | 設定のしかた | 設定できる温度 | 温度の幅・精度(メーカーの表記) | つなげるヒーター |
|---|---|---|---|---|
| 日本ノーデン 農電電子サーモ ND-610 | ダイヤル(1℃刻み) | 0〜50℃ | 動作温度幅 1.5℃以内。周囲の温度変化などによる設定値の変動 ±1℃以内 | 1000Wまで |
| 日本ノーデン 農電デジタルサーモ ND-910 | デジタル(0.5℃刻み) | 0〜50℃ | 動作温度幅 1.2℃以内(設定値の−0.6℃で入り、+0.6℃で切れる)。温度精度 約±0.3℃(20〜30℃) | 1000Wまで |
| 昭和精機工業 グリーンサーモ 12F | ダイヤル | 5〜40℃ | OFF点設定で±1.5℃ | 1200Wまで |
| 昭和精機工業 グリーンサーモ E-300E | ダイヤル | 15〜40℃ | 温度幅 ±1.5℃ | 300Wまで(屋内用) |
| Inkbird ITC-308 | デジタル(表示0.1℃) | −50〜120℃ | 精度 ±1℃。入ってから切れるまでの差を0.3〜15℃で設定(初期値2℃) | 1200Wまで(メーカーが示すのは120V版の値) |
動作温度幅は、ヒーターが入る温度と切れる温度の差です。サーモスタットは設定値ちょうどで温度を止めておけるわけではなく、この幅の分だけ温度が上下します。
ダイヤル式とデジタル式の差は、同じメーカーの ND-610 と ND-910 で比べると、刻みが1℃と0.5℃、動作温度幅が1.5℃以内と1.2℃以内です。ただし ND-610 の「±1℃」は設定値の変動、ND-910 の「±0.3℃」は温度精度で、項目が違うため同じものさしでは比べられません。グリーンサーモの「±1.5℃」も、入り切りの温度差なのか設定値に対する誤差なのかは、メーカーの資料に書かれていません。デジタル式の ITC-308 も、表示は0.1℃単位ですが精度は ±1℃ です。表示の細かさと精度は別の値なので、仕様表の「精度」の欄を確かめて選びます。
選ぶときに確かめること
- 設定できる温度の範囲:冬の保温に使うなら、守りたい温度まで下げて設定できるかを確かめます。たとえば E-300E は15℃より低くは設定できません。発根管理など高めの温度で使うなら、上限も確かめます
- つなげるヒーターの容量:つなぐヒーターの消費電力の合計が、サーモスタットの定格(W)を超えないものを選びます
- センサーを土に挿せるか:ND-610・12F・E-300E は空中と土の中のどちらの温度管理にも使えるとされています。鉢の土の温度を管理したいなら、土に挿して使える製品を選びます
- 水への強さ:ND-610 は「防湿構造」で防水ではなく、ITC-308 もセンサーは防水ですが本体とコンセントは防水ではありません。温室の中で使うなら水のかからない場所に本体を置けるかも考えます
設定温度の決め方
冬の保温では、育てている属の最低ラインを下回らないように設定します。属ごとの値は温度管理と越冬の「属別の耐寒性の目安」の表で確かめてください。たとえばパキポディウムは最低10℃(マダガスカルの低地種はできれば12℃)、アデニウムは最低10℃(できれば12℃)、冬型のディオスコレア(亀甲竜)・チレコドン・オトンナ・ペラルゴニウムは5℃前後が最低ラインです。
最低ラインちょうどに設定するのは避けます。主な製品の仕様の表のとおり、ヒーターは設定値より少し下がってから入る製品があります。ITC-308 は初期設定のままだと、設定値より2℃下がるまでヒーターが入りません。設定値は最低ラインに動作温度幅の分の余裕を足し、「できれば保ちたい温度」がある属はその温度を目安にします。
センサーが測っているのはセンサーを置いた場所の温度だけです。株のまわりの実際の温度は、最高・最低温度を記録できる温湿度計で確かめ、夜の最低温度が最低ラインを下回っていないかを見て設定を直します。
発根管理で使う
発根管理では、冬の保温より高い温度に設定します。時期と温度の考え方は発根管理の手順を参照してください(冬型の属は葉が出ている生育期に行い、加温は前提にしません)。保温と発根管理で設定を変えて使うなら、設定できる範囲が両方の温度に届く製品を選びます。ヒーターマットで上げられる温度には上限があるため、寒い部屋では設定どおりの温度に届かないことがあります。
冬型の属にサーモスタットは要るか
冬型の属は冬が生育期で、最低5℃前後を下回らないようにし、10〜20℃程度で管理します(生育型の考え方は生育型(夏型・冬型・春秋型)の基礎知識を参照)。部屋の温度がこの範囲に収まっていれば、加温もサーモスタットも要りません。寒い場所で加温するときは、夏型と同じくヒーターにサーモスタットをつなぎ、5℃前後を下回らない設定にします。夏型と冬型を同じ棚や温室で育てているときは、寒さに弱いほうの最低ラインに合わせます。
センサーの置き場所
センサーは、温度を管理したい場所に置きます。日本ノーデンは「実際に温度管理したい場所に設置」とし、ポットで育てる場合は苗が入っているポットの中、温室の中なら直射日光が当たらない場所を挙げています。
- ヒーターマットで鉢の土を温める:センサーを鉢の土に挿し、土の温度を管理します。土に挿したセンサーが測るのは土の温度で、鉢のまわりの空気は土より低いことがあります
- 温室用ヒーターで温室の空気を温める:センサーはヒーターから離します。昭和精機工業の取扱説明書では、温室の中でヒーターと対角の位置に置くとしています。ヒーターの真上に置くと熱気が直接当たり、温室全体が温まる前に切れてしまいます
どちらの場合も、センサーに直射日光・ほかの熱源・すきま風が当たらない場所を選びます。日本ノーデンは、センサーのリード線をほかの電気配線に近づけたり並べて配線したりすると、ノイズで誤作動することがあるとしています。
センサーやサーモスタット本体に直射日光が当たると、温室の中が設定温度より低くてもヒーターが切れることがあります(昭和精機工業の取扱説明書)。日の当たらない場所に置きます。
ヒーター・温室との組み合わせと安全
ヒーターマットはサーモスタットと組み合わせて鉢の土を温め、小型温室では温室用ヒーターとサーモスタットで中の空気を温めます。どちらの組み合わせが合うかは置き場所と部屋の気温で変わるため、ヒーターの選び方の「置き場所別の組み合わせ例」と簡易温室の選び方を参照してください。
- 容量を超えてつながない:1台のサーモスタットに複数のヒーターをつなぐときは、消費電力の合計がサーモスタットの定格以内になるようにします。電源タップを使う場合は、タップの定格もサーモスタットの定格以上のものにします(昭和精機工業)。日本ノーデンは、容量を超える場合はマグネットスイッチを併用するとしています
- 水をかけない:本体・コンセント・プラグに水がかからないように置きます
- 延長コード:日本ノーデンは、細い延長コードは電圧が下がって故障の原因になるとして、1.25mm²以上の太さを指定しています
日中の温度は下げられない
加温用のサーモスタットができるのは、ヒーターを入れることと切ることだけです。冬でも晴れた日中は、日差しで温室の中が設定温度より高くなることがあり、ヒーターが切れていても温度は下がりません。晴れた日の日中は温室の一部を開けるなど、換気で温度を下げます。換気扇を自動で動かしたいときは、ND-610 のように換気扇の制御に切り替えられる製品や、加温と冷却の両方を制御できる製品(グリーンサーモ 15F(3)、ITC-308 など)があります。
よくある疑問
ヒーターマットなしでサーモスタットだけ使えますか?
サーモスタットだけでは温まりません。ヒーターマット・パネルヒーターなど熱を出す器具の電源を、温度に合わせて入れたり切ったりする器具です。
設定温度はどうやって決めればよいですか?
育てている属の最低ラインを下回らないように、動作温度幅の分の余裕を足して設定します。最低ラインはパキポディウム・アデニウムが10℃(できれば12℃)、冬型の属は5℃前後などです。属ごとの値は温度管理と越冬の表で確かめ、温湿度計で株のまわりの最低温度を見ながら直してください。
センサーはどこに置けばよいですか?
温度を管理したい場所に置きます。ヒーターマットで鉢の土を温めるなら鉢の土に挿し、温室用ヒーターで空気を温めるならヒーターから離した対角の位置に置きます。どちらも直射日光やすきま風が当たらない場所にします。
1台のサーモスタットに複数のヒーターをつなげますか?
つなぐヒーターの消費電力の合計が、サーモスタットの定格以内なら使えます。電源タップを使う場合は、タップの定格もサーモスタット以上のものにします。合計が定格を超えると、火災や故障の原因になります。
まとめ
- サーモスタットは、センサーが測った温度に合わせてヒーターの電源を入れたり切ったりする器具。ヒーターマットや温室用ヒーターは、販売元がサーモスタットの併用を求めている
- 選ぶときは、設定できる温度の範囲・つなげるヒーターの容量・センサーを土に挿せるかを確かめる。表示の細かさと精度は別の値
- 設定温度は、属の最低ラインに動作温度幅の分の余裕を足す。冬型の属は5℃前後が最低ライン
- センサーは温度を管理したい場所に置く。マットなら鉢の土の中、温室用ヒーターならヒーターから離した対角の位置。直射日光は避ける
- 加温用のサーモスタットでは日中の温度は下げられないため、晴れた日は換気する

