塊根植物の徒長|原因・見分け方・徒長した株は戻るか

塊根植物の徒長 トラブル対処

徒長(とちょう)は、茎が細く間延びして育つことを指す園芸の言葉です。この記事では、徒長の仕組み、光の方へ傾く・もともと縦に伸びる種類との見分け方、原因、伸びた部分は戻るのか、重心の考え方をまとめます。読み終えると、自分の株の伸び方が徒長か、傾きや種の性質かを見分け、何から見直すかを決められます。

徒長の仕組みは主にシロイヌナズナ(研究によく使われる小さな草)や草花・作物・樹木の苗で調べられていて、塊根植物で条件を変えて育てた試験は、アデニウムの苗の遮光・施肥の試験など、ごくわずかです。そこでこの記事では、大学・植物園の解説や論文で確かめた範囲で書き、一般的な植物で知られていることと、塊根植物についての解説・栽培記録を分けて書きます。確かめられなかった点は、表では「不明」としています。

徒長とは:茎が細く間延びする状態

徒長した株で起きていることと、光が足りないと茎が伸びる仕組みをまとめます。

徒長のサイン

日本植物生理学会の一般向けの Q&A で、勝見允行(同学会のサイエンスアドバイザー)は、茎が伸びるのは葉のつく節と節の間(節間)が伸びることで、細胞が茎の軸の方向に長くなって起きると説明しています。一般的な植物では、日陰で育つと節間が長く、茎が細くなることが、中国のダイズの試験(要旨)で確かめられています。

塊根植物では、アリゾナ・ソノラ砂漠博物館の栽培シートが、パキポディウム・デカリーなどは半日陰でも育つが茎が細くなるとしています。同博物館にいたマーク・ダイミットは1998年の論文で、アデニウムは夏に曇りの多い気候や、日の当たる時間が1日の半分に満たない場所では細く伸びやすいと書いています。

背が伸びたことだけで徒長とは決められません。日本植物生理学会の Q&A(論文ではなく一般向けの回答)で、篠村知子(日立製作所中央研究所)は、光合成でよく育つことと光不足で茎が伸びることを見分ける目安に、株全体の重さが増えたか、節間が長くなったかを挙げています。

光が足りないと伸びる仕組み

一般的な植物の研究では、光が足りないときに茎が伸びる反応を2つに分けて扱っています。1つは黄化で、光がほとんどない所で芽生えが種子の養分で胚軸(子葉の下の茎)を長く伸ばし、子葉が閉じたまま緑にならない状態です。もう1つは避陰反応で、光のある所で周りの植物の存在を光の変化から感じ取り、茎や葉柄を伸ばす反応です。

周りに植物がなくても、光そのものが弱いことが信号になります。Casal(2012)の総説によると、光を感じる色素のうちフィトクロムBは、周りの葉を通った光で変わる赤と遠赤色光(赤より波長の長い光)の割合だけでなく赤い光の量も感じ、クリプトクロムは青い光の量を感じています。反応の強さは種で違い、林の下の日陰に適応した植物では避陰反応が弱いとされているので(Casal・Fankhauser 2023)、塊根植物にこれらの結果がそのまま当てはまるとは限りません。

片側に傾くのは別の反応(光屈性)

徒長と見た目が似た状態を表にまとめ、この節では「片側へ曲がる・傾く」を説明します。

症状 起きていること 見直すこと
株全体が細く間延びする(徒長) 光が足りない。一般的な植物では、高温や株の混み合いも茎の伸びを強める 置き場所と光の量(光と置き場所)。光以外の条件は徒長の原因
片側へ曲がる・傾く(光屈性) 光が片側から当たり、茎がその方へ曲がっている 光が来る向き。間延びも出ているなら、光の量から見直す
もともと縦長に育つ・細い枝が出る・垂れる(種や品種の性質) 種や品種の樹形、年をとって形が変わる性質 徒長か、もともとの樹形かの見分け方で、その種の伸び方を確かめる
実生の苗が細く伸びる 芽生えの胚軸(子葉の下の茎)が伸びている 苗の管理(塊根植物の実生(タネまき)のやり方)

光が片側から来ると茎がその方へ曲がる反応は、光屈性と呼ばれます。一般的な植物の研究では、青い光の向きを主にフォトトロピンという色素が感じ取り、成長を促す植物ホルモンのオーキシンが陰の側へ移って、陰の側がよく伸びることで曲がるとされています。茎の両側の伸び方の差で起きる反応で、茎全体が間延びする徒長とは仕組みが違います。

傾きと間延びは同時に起きることがあります。ノースダコタ州立大学の普及員は、多肉植物のカネノナルキを窓から離れたカウンターに移したら間延びして窓の方へ傾き、水やりのたびに鉢を回したものの、茎が長くなって倒れかけたので石で支えたまま置いておいたらS字形になったと書き、光の面で失敗したと結んでいます。

鉢を回して傾きをそろえる効果を確かめた試験は見つかりませんでした。ダイミットは、アデニウムは夏の間ずっと同じ向きに置くよう書き、鉢を回すとそれまで日陰だった側の茎が強い日差しでひどく焼けることがあるとしています(米国アリゾナ州の屋外の話です)。

徒長か、もともとの樹形かの見分け方

縦に高く伸びる、細い枝が出る、茎が垂れるといった姿は、種や品種の性質としても記録されています。主な属の例を表にまとめました。

属 もともとの伸び方(例の種)
パキポディウム ラメリーは高さ1.5〜8m、ゲアイは8mまでになり、約3m以上の高さから枝分かれする。ブレビカウレは塊が高さより幅のほうが広く、デンシフローラムは高さ約0.7mで短く直立する枝を多くつける(いずれもSANBI)
アデニウム ソマレンセの高木型は、米国ツーソンの栽培で、実生がほとんど枝分かれせずに18か月で約1.8mまで伸び、その後は幹が太った。アラビカムは、乾いた所では塊根状に、湿った所では高木状になるとされ、サウジアラビアの型には高さ4mの幹になるものがある(自生地の文献の引用)。スワジクムは、弱く横に広がったり垂れたりする茎が種の典型(いずれもダイミットら)
ユーフォルビア(多肉の種) オベサは若い株が球形で、年をとると縦に伸びて円柱状になる(SANBI)。バリダは老株で円柱状の長楕円形になる(1915年の原記載)。グロボーサは自生地では地面に広がるが、栽培では球が数珠のように上へ連なりやすい(SANBI。理由は書かれていない)

塊根植物で光不足のときの変化として書かれているのは、茎が細くなる、細く伸びるといったことまでで、色や節間の長さ、刺の間隔の変化は書かれていません(徒長の原因の表)。縦長になる・細い枝が出る・垂れるといった姿だけでは、徒長か種の性質かを決められません。

ユーフォルビアで縦に伸びたとき

多肉のユーフォルビアは、光が足りないとどう間延びするかを種ごとに書いた植物園や大学の解説がありません。峨眉山は鉄甲丸と瑠璃晃の交配種とされ(台湾の臺北典藏植物園のサイトなど)、自生地での姿がありません。だれがいつ作ったかは確かめられていません。ムランジーナも、光が足りないときの姿は書かれていません。

同じ種でも、育つ場所で姿が変わる記録があります。ムランジーナは自生地の一つのムランジェ山(マラウイ)で、標高が上がるほど幹が低く枝が短くなります(Thiede ほか 2016、要旨)。現地株と同じ形に育たないことだけでは徒長とは言えません(これらの記録からの推論です)。実生株と現地株の違いは実生株と現地株の違いにまとめています。

徒長の原因:光と、光以外の条件

一般的な植物の研究で茎の伸びに関わるとされる条件を、塊根植物での記録と分けて表にしました。光の量や温度、水やりの目安は「見直す先」の列のリンク先にあります。

条件 一般的な植物で知られること 塊根植物での記録 見直す先
光の量が足りない 光の量が少ない区で茎がひどく伸びた(ペチュニア)。周りの植物の陰の信号でも伸びる 半日陰で茎が細くなる(パキポディウム)。日照が1日の半分未満で細く伸びやすい(アデニウム)。アデニウムの苗では、50%遮光の株が最も背が高く幅も最大で花は少なく、全日照では小さかった(McBride ほか 2014、要旨) 光と置き場所
暖かいのに光が少ない やや高い温度でも芽生えの胚軸が伸び、日陰と重なるとさらに伸びた(いつもではないとされる)。弱い光と高温が重なると、光合成でつくる糖の収支も悪くなる 生育を急がせると、とくに高温で細く弱い茎になる(ダイミット、パキポディウム)。温度と茎の伸びの関係は不明 温度管理と越冬、冬の管理
株が混み合う 隣の葉が反射する遠赤色光を受けて、葉が重なる前から茎の伸びが速まる(草の芽生え) 不明 鉢の並べ方(光と置き場所)
水や肥料が多い 野菜苗の普及向けの解説(コネチカット大学など)は原因に挙げ、乾かし気味にすると伸びが抑えられるとする。シロイヌナズナでは窒素を多くすると日陰による伸びが弱まった 水や肥料の多さに、光の不足か風通しの悪さが重なると徒長する(ダイミット、アデニウム)。アデニウムの苗の試験では、肥料を増やすと株が高くなると同時に茎も太くなり(McBride ほか 2014、台湾大学の修士論文。後者では窒素がある濃さを超えると茎の太さは頭打ちで、高さだけ増えた)、水の量を変えても草丈と茎の太さに差はなかった(台湾大学の修士論文)。いずれも要旨。節間の長さを比べた試験は確かめられていない 水やりの基本、肥料の基本
昼と夜の温度差 昼が夜より暖かいほど茎が伸び、夜のほうが暖かいと締まる(温室の草花・野菜苗)。反応は種や温度の下げ方で違い、カランコエでは、夜を暖かくすると低くなった試験と、明け方前に温度を下げる方式で花茎がかえって高くなった試験がある 不明 温度管理と越冬
風・揺れ・接触が少ない 揺れや接触があると伸びが抑えられ、茎が太くなる(反応しない種もある) 不明。アデニウムの1品種で、風のある環境で枝が丈夫になるとする栽培の記録がある 風や揺れと茎の伸び

肥料(窒素)については、記述どうしが食い違います。日本植物生理学会の Q&A(一般向けの回答)で、間藤徹(京都大学)は、テッポウユリの節間の徒長は基本的に日照不足で、窒素が多いと節間が伸びやすいことは実験では確かめられているが、畑ではよほど多くなければ影響は小さいと思う、と答えています。

風や揺れと茎の伸び

草本や樹木の苗では、茎をこする・揺らす・曲げるといった刺激で伸びが抑えられ、茎が太くなる反応が知られていて、接触形態形成と呼ばれます。Jaffe(1973)が若い株の節間を毎日こすった試験では、9種のうち3種は反応せず、反応した種も刺激をやめると3〜4日で伸びる速さが元どおりかそれ以上に戻りました。アメリカニレの苗では、支柱で固定して揺れないようにした苗のほうが、曲げた苗より背が高く茎が細くなりました(Telewski・Pruyn 1998)。

風だけで伸びが抑えられた試験もありますが、効き方は当て方で違い、送風口から断続的に気流を当てたトマトの試験では、秒速2mまでの気流はほとんど効かず、それより強い気流で草丈が3割ほど抑えられました(Sparke 2022)。茎を曲げずに葉に風を当てただけのヒマワリでは、かえって背が高くなりました(Smith・Ennos 2003)。

多肉植物や塊根植物で、風や揺れと茎の伸びの関係を測った試験は見つかりませんでした。ダイミットはアデニウムの徒長の条件の一つに風通しの悪さを挙げ、品種’Red Ribbons’は風のある環境で枝が丈夫になると書いていますが、どちらも測定を伴わない栽培の記録で、家庭用のサーキュレーターの風で徒長を防げる裏付けにはなりません。置き方はサーキュレーターの選び方にまとめています。

徒長した株は戻るか・どうするか

伸びた部分は戻るか

光を当て直して、伸び切った節間が縮むことを確かめた試験は見つかりませんでした。一般的な植物では、細胞壁の伸びは元に戻らない変形とされ(Cosgrove 2018)、ダイズでは節間が伸びるのは茎の先に近い若い節間だけで、それより下の節間は伸びが止まりました(Zhang ほか 2020、要旨)。このため、伸び切った部分が縮むとは考えにくいといえます(推論です)。

一方、同じダイズの試験では、伸びが止まったあとも節間の直径は増え続けました。塊根植物で徒長した部分があとから太るかは確かめられていません(太りが続くかの記録は成長速度と太らせ方のよくある質問)。ダイミットは、アデニウムの徒長は栽培条件を改め、間延びした茎を切り落とせば容易に直ると書き、光を当てれば戻るとは書いていません。

そのまま育てるか、切って仕立て直すか

徒長の原因になった条件を見直したうえで、そのまま育てるか、伸びた部分を切って仕立て直すかを選びます。アリゾナ・ソノラ砂漠博物館は、パキポディウム・ゲアイは頭を切るとふつう2〜4本の枝が出て、高くなりすぎた株によいとしています(ほかの種については書かれていません)。切る位置や時期、切り口の処理は剪定・胴切り・挿し木にまとめています。

暗い場所で徒長した株を明るい場所へ移すときは、急に強い直射日光に当てないでください。SANBI はオベサについて、日陰で育った株を急に日なたへ出すとひどく焼けるので、少しずつ慣らすよう書いています。慣らし方は光と置き場所にまとめています。

重心が高くなる・低くなる

「重心」や「頭でっかち」という観点で塊根植物の姿を書いた解説や、徒長した株が倒れやすいとした記述は見つかりませんでした。倒れることについては、アリゾナ・ソノラ砂漠博物館が、背が高くなるパキポディウムはとても重い鉢でないと風で倒れることがあるとして、風の当たらない場所に置くか支柱に結ぶよう勧め、アリゾナ大学が、アデニウムの鉢と用土は風で倒れない程度に重く、季節ごとに動かせる程度に軽くするとしています。ダイミットは、アデニウムの品種 ‘Red Ribbons’ は細く弱い茎が大きな葉の重みで垂れると書いています。どれも徒長と結びつけた記述ではありません。

高く育つか低く広がるかは、種によって大きく違います(徒長か、もともとの樹形かの見分け方の表)。SANBI は、低く広がるパキポディウム・ロスラーツムについて、花が咲くと縦の伸びが止まり、そのたびに枝分かれすると書いています。上げ植えは成長速度と太らせ方の「埋める・上げ植えと太り方」にまとめています。

現地株のように低く太い形にならないのは、徒長しているからですか?

形が現地株と違うことだけでは、徒長とは決められません。ダイミットは、アデニウム・ソマレンセの高木型の実生が3年目に伸びが鈍って幹が太り始め、5年目には現地株の「ミニバオバブ」の形に近づいたと書き、樹形(高木か低木か)は遺伝で決まるとしています(栽培経験)。同じ種でも生育地で姿が変わる記録もあります(徒長か、もともとの樹形かの見分け方)。

育成ライトを当てているのに徒長するのはなぜですか?

塊根植物で、育成ライトの明るさや距離、点灯時間と徒長の関係は確かめられていません。一般的な植物では光が足りないと茎が伸び、暖かいと伸びが強まることがあるので、ライトの下でも同じことは起こりうると考えられます(推論です)。見直し方は育成ライト完全ガイドの「徒長している」にまとめています。

肥料を与えすぎると徒長しますか?

アデニウムの苗の試験(いずれも要旨)では、肥料を増やすと株は高くなりましたが茎も太くなり、細く間延びしたとは書かれていません。株全体が育っているかを見るという篠村の目安(徒長のサイン)に照らすと、徒長とは言いにくい育ち方です(推論です)。一方でダイミットは、水や肥料の多さに光の不足か風通しの悪さが重なると徒長すると書いています。詳しくは徒長の原因、与え方は肥料の基本にまとめています。

実生の苗がひょろひょろに伸びました。どうすればいいですか?

パキポディウム・ブレビカウレの実生を色の違うLEDで育てた試験では、青い光(波長450・470nm)の下で胚軸が短く太くなりました(Fukai 2022、要旨)。苗の管理は塊根植物の実生(タネまき)のやり方にまとめています。

徒長した株を切るなら、いつがいいですか?

アリゾナ大学はアデニウムについて、春が剪定によい時期とし、シーズンの遅い時期に切ると短い枝になって翌シーズンの伸びが弱くなりやすいとしています(後半はダイミットの私信として)。ほかの属を含めた目安は、剪定・胴切り・挿し木の「生育型ごとの適期」にまとめています。

まとめ

  • 背が伸びただけでは徒長と決められない。株全体が育っているか、節間が長くなっているかを見る
  • 片側に傾くのは光屈性で、徒長とは別の反応。縦長・細い枝・垂れる姿は種や品種の性質のこともある
  • 光以外の条件と徒長の関係は一般的な植物の研究が中心で、塊根植物の記録は少ない
  • 伸び切った部分が縮むとは考えにくい。条件を見直したうえで、そのまま育てるか切るかを選ぶ

他の症状から原因を調べたい場合は、症状別トラブル診断で確認できます。葉・幹・害虫・全体的な不調など症状ごとに対処記事をまとめています。

参考・外部リンク

参考にした資料の一覧(50件)