塊根植物の成長速度と太らせ方|属ごとの違いと太らない原因

塊根植物の成長速度と太らせ方 管理の基本

塊根植物の太り方の早さは、属や種によって大きく違います。この記事では、属ごとにどこが太るのかと成長の早さ、太らせるために見直すこと、太らない・細く伸びるときの原因、「埋めると太る」「肥料で太る」といった言い伝えに裏付けがあるかをまとめました。大学・植物園の解説、論文、栽培者の記録などで確かめられたことを書き、確かめられなかったことはそう書いています。読み終えると、自分の株がもともとどのくらいの早さで太る種類なのか見当をつけ、生育期の管理のどこから見直すかを決められるようになります。

栽培の条件を変えて太り方を比べた試験は、調べた範囲ではほとんどがアデニウムの苗についてのもので、ブラジルやインドなどで数か月から1年弱育てた結果です。ほかの属の情報は、植物園や大学の解説、栽培者の記録が中心になります。日本の公的機関(大学・試験場など)による塊根植物の栽培試験は、J-STAGE と CiNii で探した範囲では見つかりませんでした。そのため、この記事の数値には「どこで・どう育てた株の話か」を添えています。種ごとの最終的な大きさは、各種のページにまとめています。

塊根植物の成長速度(属ごとの違い)

属ごとに、太る部位と成長の早さを表にまとめました。「早い」「遅い」は植物園・大学・協会などの解説や栽培記録での言い方をそのまま載せ、どこの言い方かを添えています。数値には、自生地の記録か栽培の記録かが分かる場合は、それを添えました。確かめられなかった項目は「不明」としています。

属 太る部位 成長の早さ(出典での言い方) 実生から形がはっきりするまで 例の種
パキポディウム 茎。ふつう根元が大きく膨らむ。ビスピノーサムとサキュレンタムは、半ば地中に埋まった塊状の茎になる 種で違う。ラメリーとゲアイは比較的速く、ブレビカウレはずっと遅い(BCSS)。サキュレンタムは遅い(SANBI)。ナマクアナムは非常に遅く、年に約0.5〜1.5cm(SANBI。自生地か栽培か、どこの長さかは書かれていない) 不明 ラメリー、ブレビカウレ、ナマクアナム
アデニウム 茎の根元と根。ニンジン状の太い根が目立つ種もある。実生のうちから胚軸が太る 出典で割れる。アリゾナ大学は「ほかの多肉植物に比べて速い」、SANBI は「遅いが長命」。種の間では、ムルチフロルム(A. multiflorum)はオベスムより遅い(ダイミットらの栽培記録。SANBI と PROTA も同じことを書いているが、どちらもこの記録をもとにしている)。ボエフミアヌムとソコトラナムは遅い スワジクムは、若い株が地下の塊をつくるまで少なくとも2年(SANBI の自生地の解説)。ソマレンセの変種クリスプム(var. crispum)は、栽培でまだ小さいながら特徴的な塊根ができるまで約5年。アラビカム系は栽培で数年のうちに大きな塊根になるとする記述がある(ダイミットらのサイト)。ソコトラナムは、実生が栽培で見ごたえのある大きさになるまで何十年もかかる(同じサイト) アラビカム、ソコトラナム、スワジクム
ユーフォルビア(多肉の種) 茎。オベサは枝分かれしない球に近い茎で、年とともに円柱状に伸びる。鉄甲丸は枝分かれしない球根のような茎(SANBI) 種で違う。SANBI では、オベサ・鉄甲丸・グロボーサは「遅い」、ステリスピナは「容易に速く育つ」。オベサの実生は「遅い〜中くらい」 不明 オベサ、鉄甲丸、ステリスピナ
オペルクリカリア 幹。根元がピラミッド状に膨らむか、太さのそろった幹になる デカリーは「成長が遅く、栽培では自生地よりずっと小さいまま」(アリゾナ・ソノラ砂漠博物館) 不明 デカリー
ディオスコレア 塊茎。亀甲竜では芽生えの胚軸からでき、表面の亀の甲のようなコルクの板が周りへ育って大きくなる 亀甲竜は「容易に速く育つ」、シルバチカは「成長が遅い」(どちらも SANBI) 亀甲竜は1年目の終わりに約10mm、5年で直径120mmが目安(南アフリカの植物園での栽培の解説) 亀甲竜、シルバチカ
ドルステニア 種による。根元に肉質の塊をもつ種と、肉質の根茎から多肉の茎が出る種がある 不明 不明 —
キフォステンマ 種による。肉質の円錐形の幹をもつ種と、根元が塊状に太る種がある ユッタエは「成長の遅い多肉植物」(SANBI) 不明 ユッタエ
ブルセラ 幹。鉢植えでも年とともに幹が太るとする栽培の解説がある ミクロフィラは鉢の大きさで変わる。根の場所が十分なら非常に速く、1シーズンに約60〜90cm伸びる。根詰まりすると伸びはほぼ止まる(アリゾナ・ソノラ砂漠博物館) 不明 ミクロフィラ、ファガロイデス
コミフォラ 幹。乾燥地の種は幹がほぼ多肉のように膨らむことが多く、多くの種が茎の下部に水をためる(SANBI) 属としては「ふつうかなり遅い」「実生の育ちは遅いが、年とともに速くなる」(SANBI)。同じ SANBI で「速い」とされる種もある(このサイトで扱っていないウッディー、C. woodii) 不明 —(このサイトで扱う種についての記述は見つからない)
アデニア 根。芽生えの幼根と胚軸からできる貯蔵根。太い主茎をもつ種もよく見られ、グラウカは茎の根元が円錐形に太る(de Wilde 1971) グラウカは「非常に遅い」(SANBI) グラウカは、実生株が望む大きさになるまで何年もかかることがある(SANBI。年数は書かれていない) グラウカ
ヤトロファ ポダグリカは地上の茎の根元がフラスコ形に太る。実生のうちから胚軸が太る ポダグリカは「遅い」(ノースカロライナ州立大学の植物データベース。理由の記述はない) 不明 ポダグリカ
チレコドン 茎。しばしばよく枝分かれした塊をもつが、塊のない種もある パニクラトゥスは、実生からある程度の大きさになるまで何年もかかる(SANBI) パニクラトゥスは実生から約2年で高さ2〜3cm(SANBI。塊の大きさではない) パニクラトゥス
ペラルゴニウム 種による。地中に大きな塊をもつ種(トリステなど)と、茎が多肉になる種(カルノスム・エキナトゥムなど)がある 不明 不明 —
フォッケア 芽生えの胚軸の根元が地中で太った塊。植物誌は「茎の塊茎」と呼ぶが、茎の根元と大根状の主根を分けて書く研究もある。マルティフロラは若い株の根元は太るが、ふつう成株では塊がなくなる 不明 不明 —
シンニンギア 多年生の塊状の茎。毎年そこから草の茎を出す 不明 レウコトリカは、ブラジルの試験で組織培養の苗を6か月育てると(0.9Lの鉢、遮光した苗床)、塊の直径が約1.3cmから、用土7種の平均で2.2〜3.0cmになった(用土による差ははっきりしない。実生ではなく組織培養の苗) レウコトリカ
センナ 不明 不明 不明 —
オトンナ 種による。太い茎をもつ多肉の低木、地中に塊をもつ種、茎の根元が膨らむ種がある トリプリネルビアは「それほど速くは育たない」(SANBI) 不明 トリプリネルビア

表の「胚軸」は、芽生えの子葉と根のあいだの軸の部分です。アラビカム・ソコトラナム・ソマレンセ(変種クリスプムを含む)は、WCVP(世界の植物の学名を整理したデータベース)ではオベスムに含められています。

太るのは根か、幹か(属で違う)

英語の caudex(コーデックス)は、指す範囲が用語集によって違う言葉です。カリフォルニア大学の植物誌 Jepson eFlora の用語集は「多年生植物の、地際かその下にある短い茎」とし、1928年に英国で出た植物用語集(Jackson 1928)は「茎と根からなる植物の軸」としています。多肉植物の水の使い方を整理した総説は、caudex を根から茎までの軸のどこを指してもよい言葉として扱い、光合成をする部分とは別の場所、主に光合成をしない茎、または茎と根の組み合わせに水とデンプンをためる植物を caudiciform と呼んで、系統上のまとまりではないとしています(Ogburn & Edwards 2010)。属ごとの成長速度の表の「太る部位」のとおり、太るのが茎の属(パキポディウム・オペルクリカリアなど)、茎の根元と根の属(アデニウム・フォッケアなど)、芽生えの胚軸からできた塊茎の属(ディオスコレア)があり、「塊根」という名前でも根が太っているとは限りません。言葉の使い分けは塊根植物とはで説明しています。

太り方のしくみも属で違います。パキポディウム・ナマクアナムは、茎の太さの大部分が髄(茎の中心の柔らかい組織)によるもので、髄の細胞が分かれて増えることで太ると、1912年の観察に書かれています(1種の観察です)。アデニウム・オベスムは、茎の根元で形成層(茎を輪のように取り巻き、内側に木部、外側に師部をつくる細胞の層)が働いて太ります。フォッケア・エデュリスは、茎の根元は皮層と髄が増えて膨らみ、根は木部の柔らかい組織が増えて大根のような太い根になります(Aviekin ほか 2023、芽生えから1年の株の観察)。フォッケアについては、芽生えの胚軸のうち土の中の部分だけが膨らんで塊になり、地上に出た部分は太らないと植物誌に書かれています(Bruyns & Klak 2006)。どこが太るかが属で違うので、植える深さで太り方が変わるかどうかも、属ごとに分けて考える必要があります(これらの観察からの推論です)。

成長が早い属・遅い属

各出典の言い方を集めると「遅い」とするものが多いものの、同じ属の中でも割れていて、属単位で早い・遅いは決められません。SANBI(南アフリカ国立生物多様性研究所)の解説では、ユーフォルビアのオベサ・鉄甲丸・グロボーサが遅く、ステリスピナは速いとされています。ディオスコレアでは亀甲竜が速く、シルバチカが遅いとされます。コミフォラは属としては遅いとされる一方、速いとされる種もあります。パキポディウムでは、英国サボテン多肉植物協会(BCSS)の解説が、ラメリーとゲアイを比較的速く、ブレビカウレをずっと遅いとしています。グラキリスの早さは、植物園・大学の解説や論文では確かめられませんでした。百科サイトには記述がありますが、同じページに「ほかのパキポディウムに比べて実生の育ちが遅い」と「中くらいの成長」が並んでいます。

アデニウムは、出典によって言い方が逆になります。SANBI は「成長は遅いが長命」とし、アリゾナ大学の普及向けの解説は「ほかの多肉植物に比べて速く、植え替えをより頻繁に要する」としています。アリゾナ・ソノラ砂漠博物館のダイミット(Dimmitt)は、自身の栽培経験から、遅いという評判は当たっておらず、遅いと思われてきた主な理由は水と肥料の不足だと書いています。アリゾナ大学の解説は、ダイミットの記録も参考文献に挙げています。比べる相手(植物全般か、多肉植物の中か)や、植物園の解説か、水と肥料を多めにした鉢植えの記録か、という違いによるものと考えられます(推測です)。早さの記述は、誰がどの条件で言っているかと合わせて読む必要があります。

実生から太るまでの年数

実生から塊根の形がはっきりするまでの年数が書かれているのは、属ごとの成長速度の表のとおり一部の種だけです。数値があるのは、亀甲竜(1年目の終わりに約10mm、5年で直径120mmが目安)、アデニウム・スワジクム(自生地の解説で、若い株が地下の塊をつくるまで少なくとも2年)、ソマレンセの変種クリスプム(栽培で、まだ小さいながら特徴的な塊根ができるまで約5年)くらいです。アデニウム・ソコトラナムについては、実生が栽培で見ごたえのある大きさになるまで何十年もかかると書かれています(The Adenium Pages)。アデニウム・アラビカム系では、米国の栽培者ダイミットらのサイトの写真の説明に、3歳で12インチ(約30cm)の鉢の株、地植えの8歳の株で塊根の幅30cm超、同じ実生のなかで最も育ちが速かった株が11歳(42インチの鉢)で塊根の幅ほぼ90cm、という記録があります(The Adenium Pages)。パキポディウムをはじめ多くの属では、何年でどの太さになるかは確かめられていません。購入する株の年数の見方は実生株と現地株の違いを参考にしてください。

若い株と成株で育ち方が変わるという記録もあります。ダイミットは、アデニウムで速く育つ力があるのは若い株だけで、成熟すると伸びは大きく落ち、葉の茂った成株では光合成でつくった養分が主に茎を太らせることに回ると書いています(Dimmitt 1998)。ケニア北西部の高木型の集団から育てたソマレンセの実生は、18か月続いた1回の伸びで、ほとんど枝分かれしないまま高さ1.8mほどまで伸び、2〜3シーズン目は高さがほとんど増えずに幹が大きく太ったと記録されています(Dimmitt & Hanson 1995)。どれも米国アリゾナでのダイミットらの栽培記録で、ほかの属に同じことが当てはまるかは確かめられていません。

自生地での大きさが、鉢で育てたときにもそのまま当てはまるとは限りません。オペルクリカリア・デカリーは、自生地では幹の直径1m・高さ9mになりますが、栽培ではずっと小さいままとされています(アリゾナ・ソノラ砂漠博物館)。ディオスコレア・シルバチカは、深い土では塊茎が地中にあって皮が薄く滑らかになり、浅く石の多い土では一部が地表に出て上面に亀甲模様ができると記載されています(Archibald 1967)。シルバチカのように、塊の姿が育つ場所の土で変わる例もあります。

塊根を太らせるために見直すこと

太らせるために見直す点を、光・温度・水やり・根と鉢の順にまとめます。どれも生育期の管理で、ここでは太りとの関係について記述があるものだけを挙げています。具体的な温度や水やりの間隔は、それぞれのリンク先の記事にまとめています。

光:徒長させずに生育期を過ごす

光が足りないと細く伸びる(徒長)という記述はアデニウム・パキポディウム・ブルセラにあり、仕組みと見分け方は塊根植物の徒長にまとめています。太りに関わる記述としては、アリゾナ大学が、アデニウムを生育期に遮光しすぎると生育も開花も悪くなるとしています。

一方で、光の強さと塊根の直径を比べた試験は、アデニウムの苗の1件しか見つかりませんでした。ブラジル北東部で苗を約5か月育てたこの試験では、3種類の遮光ネットの下と露天とで、塊根の直径の平均に差はありませんでした(用土との組み合わせでは差が出た区があり、遮光率は書かれていません)。光の量を3段階に変えた米国の試験(要旨、16〜20週)では、50%遮光の株が最も高く伸び、根の乾燥重量は露天と30%遮光で最も大きくなりました(塊根の直径は要旨にありません。McBride ほか 2014)。米国のデザート・ボタニカル・ガーデンは小さい株には木漏れ日程度の光がよいとしており、オペルクリカリア・デカリーは少なくとも若いうちは午後の日陰がよいとする解説もあります。季節ごとの置き場所と日差しへの慣らし方は光と置き場所にまとめています。

温度:生育期の長さと加温の考え方

温度と塊根の太る速さを測った試験は見つかりませんでした。台湾のアデニウムの苗の試験(要旨)では、平均気温を20.6〜33.5℃に変えると、葉の面積と乾燥重量は28.9℃の区で最も大きくなりましたが、塊根の直径は測られていません。ほかに書かれているのは、アデニウムやパキポディウムが暖かい時期に育つということです。アリゾナ大学は、アデニウムは暑さの中でよく育つ熱帯の植物で、春に夜の気温が一定より高い日が続くと生育を始め、最も暑い時期には生育が鈍ることがあるとしています。アリゾナ大学が生育を始める目安とする夜の気温を、気象庁の平年値(1991〜2020年)の月ごとの最低気温に当てはめると、目安を上回るのは東京で6〜9月の4か月、大阪で5〜10月の6か月、札幌で7〜8月の2か月です(月の平均値からの計算で、実際の夜の気温は日によって上下します)。アリゾナ大学がアリゾナの砂漠地域の生育期とする4〜10月より、月の数は少なくなります。

冬に加温して育て続ける場合は、光と組み合わせて考える必要があります。米国のデザート・ボタニカル・ガーデンは、冬に室内の夜の気温が高いとアデニウムが季節外れに育ち、弱い生育になることがあるとしています。アリゾナ大学も、室内では生育期に入るのに必要な高温も強い日光も得にくいとしています。パキポディウムについては、一年中日なたで暖かく保てば休眠しないとする愛好会の解説があります(Henry Shaw Cactus and Succulent Society)。冬型の亀甲竜は、自生地では暑く乾いた夏に休みます。冬越しの温度と加温の方法は温度管理と越冬、自分の株の生育型は生育型の解説、属ごとの月の動きは栽培カレンダーで確かめられます。

水やり:生育期に止めない・休眠期は与えない

アデニウムの苗の試験では、水の量の影響は用土と組み合わさって現れました。ブラジルの温度を制御した温室で、播種から270日の苗を3Lの鉢に植えて210日育てた試験では、同じ肥料でも、用土と水やりの組み合わせによって、塊根の直径の増え方が約17mmから約38mmまで、2倍あまり違いました(Colombo ほか 2018)。水を多めにしたほうが太った用土も、少なめのほうが太った用土もあり、「水が多いほど太る」という一方向の結果ではありません。ブラジル北東部の別の苗の試験(約5か月)でも、水やりの量は塊根の直径に効かず、用土による差が大きく出ています(塊根より上の茎は、水を多くするほど細くなりました)。

生育期の水やりについて、アリゾナ大学は、アデニウムは夏の盛んな生育期には頻繁な水やりを好むとしています。デザート・ボタニカル・ガーデンは、水と肥料をたっぷり与えて2年ごとくらいに大きな鉢へ植え替えると、比較的短い期間で大きな株になりうるとし、逆に減らすと締まった姿になるとしています。ほかの属で水やりの量と太りを比べた試験・記録は見つかっていません。季節ごとの頻度は水やりの基本にまとめています。

太らせたいからといって、休眠中に水や肥料を増やして生育を急がせないでください。アリゾナ大学は、休眠中のアデニウムは乾かしておき、水をやると根腐れが起きることがあるとし、アリゾナ・ソノラ砂漠博物館は、パキポディウム・デカリーには休眠中は水も肥料もほとんど、または全く与えないとしています。アリゾナ大学とデザート・ボタニカル・ガーデンは、しぼみが目立つ若い株などにはごく少量の水を認めています。休眠中の水の目安は水やりの基本、根腐れの見分け方と対処は根腐れの対処にまとめています。

根と鉢:根詰まり・植え替え直後・未発根の株

根の場所が足りないと育ちが落ちるという記述があります。ダイミットは、アデニウムを速く育てるには根の場所が要り、根詰まりした株は水と肥料を十分与えても成長が大きく落ちると書いています。ブルセラ・ミクロフィラでは、成長の速さと最終的な大きさは主に鉢の大きさで決まるとされています(アリゾナ・ソノラ砂漠博物館)。一方でアリゾナ大学は、大きすぎる鉢は土が長く湿るので避け、一回り大きい鉢へ植え替えるとしています。鉢の大きさの目安は鉢の選び方、植え替えの手順は植え替え方法にまとめています。

植え替えで根を切ったあとや、発根させている途中の株がどのくらい太りにくくなるかは、塊根植物では不明です。根が出ているかの確かめ方は発根管理を参考にしてください。

ダイミットは、アデニウムの大株をつくるには最初の2〜3年に実生や小さな挿し木を手厚く育てる必要があり、成熟すると伸びが大きく落ち、古い株を再び旺盛に育てることはまずできないと書いています。太らせたい株がまだ若いなら、その数年の生育期を止めずに育てることを優先すると、ダイミットの記録と食い違いません。ほかの属で同じことが言えるかは確かめられていません。

太らない・徒長するときの原因

太らない・細く伸びるときの原因を、症状ごとにまとめます。多くはアデニウムについての記述で、ほかの属に当てはまるかは確かめられていません。徒長そのものは塊根植物の徒長にまとめています。

症状 考えられる原因 見直すこと
生育期なのに大きくならない もともと成長の遅い種類である。アデニウムでは、成熟すると伸びが大きく落ちるとされる 属ごとの成長速度の表で、その属・種の早さを確かめる
水も肥料も与えているのに育ちが鈍い 根詰まり(アデニウム・ブルセラで記述あり) 根の状態を見て、一回り大きい鉢へ植え替える(植え替え方法)
上に細く伸びる(徒長) 光が足りない、など(アデニウム・パキポディウム・ブルセラで記述あり) 日当たりと置き場所(光と置き場所)。光以外の原因と見分け方は塊根植物の徒長
パキポディウムが細く弱い茎になる 生育を急がせた。とくに高温のとき(ダイミットの栽培経験) 肥料・水・温度で急がせていないか(肥料の基本)
冬越し中の室内で芽が動き、弱い育ち方になる 冬越し中の室内の夜の気温が高く、季節外れに育った(デザート・ボタニカル・ガーデン、アデニウム) 加温と光の組み合わせ(温度管理と越冬)
夏の暑い盛りに動きが止まる 最も暑い時期には生育が鈍ることがある(アリゾナ大学、アデニウム) 異常とは限らない。置き場所の温度を確かめる
冬型の株が夏に育たない 冬型の亀甲竜は、自生地では暑く乾いた夏に休む(SANBI) 異常ではない。株の生育型を確かめる(生育型の解説)
挿し木で増やした株の塊根が育たない アデニウムでは言い方が割れる。挿し木株は実生株より塊根の発達が劣るとする総説(生産者の観察に基づく)と、親株の塊根がよく発達していれば挿し木株も数年で塊根ができる、挿し木株も茎の根元が太って実生株と見分けがつかなくなる、とする解説がある。実生株と比べた試験は見つからない 挿し木の扱いは剪定・胴切り・挿し木のよくある質問を参照

塊根がしぼむ・柔らかくなるときの見分け方は、症状チェックと根腐れの対処にまとめています。

「埋めると太る」「肥料で太る」は本当か

栽培者のあいだでいわれている太らせ方を、確かめられるかどうかで分けて表にしました。塊根植物で試した記録がないものは、ほかの植物の試験で代わりに判断せず、「塊根植物では確かめられていない」としています。参考として植物一般や樹木の話に触れる場合は、そのことを書いています。

いわれていること 裏付け この記事での扱い
埋める(深植えする)と早く太る フォッケア・エデュリスは塊を土で覆うと速く育つと園芸誌に書かれている(根拠は示されていない)。ディオスコレア・シルバチカは数年は地中に置いたほうが速く育つとされる(SANBI)。ほかの属で比べた記録は見つからない フォッケアとシルバチカ以外は、勧めも止めもしない(埋める・上げ植えと太り方)
上げ植えすると太りにくい 確かめられていない。上げ植えの目的は、塊根を見せることと腐りにくくすることと書かれている(アデニウム) 太りの面からは判断できない。上げるなら植え替えごとに少しずつ
大きい鉢で早く太る/小さい鉢で締まる 塊根植物で塊根の太さを比べた試験は見つからない。アデニウムの挿し木苗では、大きい鉢のほうが地上部と根の重さが大きかった(学会の要旨)。大きすぎる鉢は湿りすぎて根腐れの危険があるとされる。「締まる」を測った記録はない アリゾナ大学は一回り大きい鉢への植え替えを勧めている(よくある質問の「大きい鉢に植え替えれば太りますか?」)
肥料を与えると太る アデニウムの苗では、ブラジルの温室で150〜180日育てた試験で支持される(肥料・水の量と太り方)。成株やほかの属で比べた試験は見つからない 生育期に与える。アデニウムの苗以外は確かめられていない
リン酸の多い肥料で太る 塊根植物で比べた試験は見つからない。アデニウムの苗の試験(台湾、要旨)では、リンの濃さを0.25〜4mMの範囲で変えても茎の太さに差がなかった(リンを与えない区は葉が小さく、育ちが遅れた)。ダイミットは、成株のアデニウムに1年間、窒素が少なくリン酸とカリの多い肥料(2-10-10)を与えて茎を太らせようとしたが、あまり太らず花も少なかったと書いている(1人の栽培経験で、比較試験ではない)。一方、アリゾナ大学とデザート・ボタニカル・ガーデンは窒素の少ない肥料を勧めている 太らせる目的でリン酸を増やすことを確かめた試験は見つからない
窒素が多いと間延びする 塊根植物で比べた試験は見つからない。アデニウムの苗の試験では、窒素を足した区で草丈も塊根の直径も大きかった。ダイミットは、アデニウムの旺盛な生育と多くの花には窒素が多く要るようだと書いている(栽培経験) 間延びするかは確かめられていないため、勧めも止めもしない
水を多く与えると早く太る/乾湿のメリハリで締まる アデニウムの苗では用土しだいで、一方向の結果ではない。乾湿を繰り返した区を含めて用土の水分を4通りに変えた試験(台湾、要旨)では、茎の太さに差がなかった。休眠中の水は根腐れの原因になるとされる 生育期は止めず、休眠中は太らせる目的では与えない。メリハリで締まるかは確かめられていない
根を切ると太る 塊根植物では確かめられていない。参考として、鉢で育てたカエデとナラの試験では、強く根を切って大きい鉢に植え替えると幹の太りが落ちた。畑に植えたカエデでは、4年後には差がなくなった(樹木の話) 太らせる目的で根を切る根拠は見つからない
剪定・胴切りで幹が太る 太るかは確かめられていない。アデニウムの剪定の試験(6週、要旨)では枝数は増えたが、剪定で塊根が太ったとは示されていない。果樹では、剪定は木全体の生育を減らす作業とされる(果樹の話) 太らせる目的で切る根拠は見つからない。形を整える作業は剪定へ
接ぎ木で早く大きくなる パキポディウムは、サキュレンタムを除くほとんどの種で、接ぎ木によって生育が大きく速まるとされる(SANBI)。アデニウムでは、接いだ小枝は挿し木より速く育つとされ、塊根のできにくい品種を、塊根をつくる台木に接ぐ方法も紹介されている(アリゾナ大学)。ダイミットは、細く伸びやすいスワジクムの株が太い台木に接ぐと目に見えてがっしりすると書いている。どれだけ速まるかの数字はない パキポディウム・アデニウムには記述がある。速まる程度は不明
風に当てると締まる 確かめられていない。ダイミットは、アデニウムの徒長は水や肥料の多さに、光の不足か風通しの悪さが重なると起きると書いている。一般の植物での風や揺れと茎の伸びの研究は塊根植物の徒長にまとめている 効果は確かめられていないため、勧めも止めもしない
地植えすると太る 塊根植物で比べた試験・記録は見つからない。ブルセラ・ファガロイデスは霜の当たらない場所に地植えすると約4.5m以上になり、鉢では小さいまま幹が太るとされる。アリゾナ大学は、アリゾナではアデニウムを地植えせず、季節に合わせて動かせる鉢で育てるとしている 外に置ける期間は温度管理と越冬で確かめる
暑いほど・昼夜の温度差が大きいほど太る、休眠のメリハリで太る、咲かせると塊根が太らない、LEDの光の色で太る いずれも塊根植物では確かめられていない。アデニウムは最も暑い時期に生育が鈍ることがある。開花中は花が養分の主な行き先になるとする総説はあるが、塊根の生育が止まるとは書かれていない。パキポディウム・ブレビカウレの芽生えは青い光で胚軸が短く太くなったが(要旨)、その後の太りは書かれていない いずれも効果は確かめられていないため、勧めも止めもしない

埋める・上げ植えと太り方

埋めると速く育つという記述が見つかったのは、フォッケアとディオスコレアの一部だけです。フォッケア・エデュリスについて、米国の園芸誌の解説は、塊を土で覆うと生育が速いとしています(Pacific Horticulture。根拠は示されていません)。なお、フォッケアの属の研究(Bruyns・Klak 2006)によると、芽生えは胚軸の根元が膨らんで地面より下に塊ができ、地上に出た部分は太りません(埋めると速く育つかには触れていません)。ディオスコレア・シルバチカは、塊茎が地中にでき、数年は地中に置いたほうが速く育つとされています(SANBI)。どれも埋めた株と出した株を比べた試験ではありません。パキポディウム・アデニウム・オペルクリカリアなどで、植える深さと太り方を比べた試験・記録は見つかっていません。

上げ植え(植え替えのたびに株を前より高く植えて、塊根を見せること)について、アリゾナ大学は、塊根や太った根の上部を見せるための作業で、腐りから守る助けにもなりうるとし、やりすぎず植え替えごとに少しずつ行うとしています(AZ1953)。英国サボテン多肉植物協会は、アデニウムの面白い根の形をつくるために、若い株は数年間根を用土の中に入れて育て、植え替えのときに少しずつ持ち上げると書いています。新しく土から出した部分は日焼けしやすく、ダイミットは遮光を少しずつ減らして1生育期かけて慣らすとし、デザート・ボタニカル・ガーデンは必要なら遮光ネットで守るとしています。上げ植えで太りにくくなるかは確かめられていません。

肥料・水の量と太り方

肥料で塊根が太ることを示した試験は、アデニウムの苗についてのものです。ブラジルの温室(遮光50%)で、播種から60日の実生苗を150〜180日育てた試験では、肥料を与えた区は与えなかった区より、塊根の根元の直径がおおむね大きくなりました(一方の試験では、窒素を加えた区で差が大きく出ました)。ある試験では、同じ用土の中で与えなかった区の1.41cmに対して最大4.21cm(Alves 2016)、別の試験では17.95mmに対して最大31.66mmでした(Stegani 2017)。後者の試験では、肥料の濃さを上げると太りましたが、ある濃さから先は差がなくなっています。前者の試験の論文で著者らは、養分の乏しい乾燥地が原産なので肥料への反応は小さいと予想していたが、実際はよく反応したと書いています。成株や、ほかの属で同じことを確かめた試験は見つかりませんでした。

肥料の成分については、アデニウムの苗で、リンの濃さを0.25〜4mMの範囲で変えても茎の太さに差がなかった(リンを与えない区は葉が小さく、育ちが遅れた)という台湾の試験の要旨があります(ここでいう茎の太さが塊根と同じ部位かは、要旨からは分かりません)。アリゾナ大学は窒素が少なく、リンが中程度で、カリが最も多い肥料を、デザート・ボタニカル・ガーデンは窒素が少なくリンとカリが多い肥料を勧めていて、後者が理由として挙げているのは、均整のとれた生育と開花です。アリゾナ大学は、施肥は生育と開花を促すが、株をほどほどの大きさに保ちたいなら生育を促すのが望ましいとは限らない、とも書いています。これに対してダイミットは、アデニウムの旺盛な生育と多くの花には窒素が多く要るようだとし、成株の多くに1年間、窒素が少なくリン酸とカリの多い肥料(2-10-10)を与えて、伸びを抑えながら茎を太らせようとしたところ、あまり太らず、その年は花も少なかったと書いています(十分に肥料を与えた株は普通に咲いたとしています)。1人の栽培経験で、比較試験ではありません。窒素の少ない肥料を勧める解説と、この記録のどちらが当てはまるかを確かめた試験は見つかっていません。肥料の種類と与え方は肥料の基本にまとめています。

水の量は、「塊根を太らせるために見直すこと」の水やりのとおり、用土との組み合わせで結果が変わります。乾湿を繰り返すと締まるという言い方については、台湾の苗の試験の要旨で、用土の水分を4通り(乾湿の繰り返しを含む)に変えて124日育てても茎の太さに差はありませんでした。要旨の結びにある「乾湿を繰り返す水やりがよい」は光合成の測定からの推論で、太さの差に基づくものではありません。

実生から何年くらいで塊根が太りますか?

属や種で大きく違い、年数が書かれているのは一部の種だけです。亀甲竜は1年目の終わりに約10mm、5年で直径120mmが目安とされ(南アフリカの植物園の栽培解説)、アデニウム・スワジクムは、自生地の解説で、若い株が地下の塊をつくるまで少なくとも2年かかるとされています。パキポディウムを含む多くの属では、何年でどの太さになるかは不明です。

成長が早い塊根植物はどれですか?

「速い」とされているのは、亀甲竜とユーフォルビア・ステリスピナ(どちらも SANBI)、パキポディウムのラメリーとゲアイ(比較的速い、BCSS)などです。アデニウムはアリゾナ大学が「ほかの多肉植物に比べて速い」とする一方、SANBI は「遅い」としています。ブルセラ・ミクロフィラは、根の場所が十分なら非常に速いとされます。同じ属でも種によって早さが違うので、属名だけでは決められません。

冬も加温して育てれば早く太りますか?

加温で太りが早まるかは確かめられていません。アデニウムでは、冬に室内の夜の気温が高いと季節外れに育って弱い生育になることがあるとされ、室内では生育期に入るのに必要な高温も強い日光も得にくいとされています。パキポディウムには、一年中日なたで暖かく保てば休眠しないとする愛好会の解説があります。どれも温度と光をそろえて書いているので、温度だけを上げないほうがこれらの解説と食い違いません。方法は温度管理と越冬にまとめています。

大きい鉢に植え替えれば太りますか?

塊根植物で、鉢の大きさと塊根の太さを比べた試験は見つかりませんでした。アデニウムの挿し木苗の試験(学会の要旨)では、大きい鉢のほうが地上部と根の重さが大きくなりました。植物一般の65件の研究をまとめた解析では、鉢の容量を2倍にすると植物体の重さが平均43%増えています(塊根植物は含まれていません)。一方で、大きすぎる鉢は土が長く湿って根腐れの危険があるとされ、アリゾナ大学は一回り大きい鉢への植え替えを勧めています。号数の目安は鉢の選び方にまとめています。

一度細長く伸びた株は、あとから太くなりますか?

幹の太りは、伸びが落ちたあとも続くとする記録があります。アデニウムでは、成熟すると伸びが落ち、養分が主に茎を太らせることに回るとされています。ブルセラ・ミクロフィラでは、根詰まりして伸びがほぼ止まっても、幹は年とともに太り続けるとされています。パキポディウムなどほかの属については確かめられていません。細く伸びた部分が戻るか、伸びた株をどうするかは塊根植物の徒長にまとめています。

まとめ

  • 太る部位と成長の早さは属や種で違い、「早い・遅い」は出典と栽培条件によって言い方が割れる
  • 実生から太るまでの年数が書かれているのは一部の種だけで、パキポディウムをはじめ多くの属では確かめられていない
  • 見直すのは生育期の光・温度・水やり・根と鉢。光が足りないと細く伸びるという記述は複数の属にある
  • 肥料で塊根が太ることを示した試験はアデニウムの苗だけ。リン酸・根切り・剪定で太ることは確かめられておらず、埋めると速く育つという記述もフォッケアとシルバチカだけ
  • 休眠中に水や肥料を増やして急がせない

参考・外部リンク

参考にした資料の一覧(79件)