ヤトロファ・カタルティカとは
ヤトロファ・カタルティカ(Jatropha cathartica)は、メキシコのタマウリパス州周辺からテキサス州南端にかけて自生するトウダイグサ科の塊根植物です。地下に発達する塊根型のヤトロファで、流通量が少なく比較的珍しい種として知られています。
地上部はコンパクトにまとまる一方で、地下では扁球形〜不整形の塊根が発達します。北アメリカ植物誌(Flora of North America)は、草地の粘土質で石の多い平地や、塩分を含む平地に生えるとしています。花は深い赤色で、可憐な花と無骨な塊根の対比が楽しめます。
カタルティカの樹液にどの程度の毒性や刺激があるかは確かめられていません。ヤトロファ属には有毒な種があるため、取り扱いには注意してください。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 学名 | Jatropha cathartica Terán & Berland. |
| 別表記 | 異名 Jatropha berlandieri(ベルランディエリ)の名でも流通する。英語圏では Berlandier’s nettlespurge(命名者ベルランディエに由来)と呼ばれる。 |
| 科 / 属 | トウダイグサ科(Euphorbiaceae)/ ヤトロファ属(Jatropha) |
| 原産地・自生環境 | メキシコ北東部(コアウイラ州・ヌエボレオン州・タマウリパス州)〜テキサス州南部。草地の粘土質で石の多い平地や、塩分を含む平地に自生する(北アメリカ植物誌)。 |
| 生育型 | 夏型 |
| 耐寒温度(乾燥状態での下限) | 10℃前後(0℃以下は枯死のリスクあり) |
| 成株のサイズ目安 | 地上部は高さ30cmまで。地下の木質の塊根は直径13.5cmまで(北アメリカ植物誌。標本の記録には直径約23cmのものもある)。 |
| 栽培難易度 | 中級 |
分類の詳細はPOWO(Plants of the World Online)およびGBIFの学名情報も参考にしてください(2026年9月確認)。なお、ヤトロファ属はワシントン条約(CITES)の附属書には掲載されていません。
- 自生地の分布域:カタルティカはテキサス州南部からメキシコ北東部(コアウイラ州・ヌエボレオン州・タマウリパス州)にかけての、草地の粘土質で石の多い平地や塩分を含む平地に自生する(POWOの分布記載では「S. Central U.S.A. to NE. Mexico」)。東アフリカのフィッシスピナ、ソマリア固有種のマルギナータ、東・南部アフリカに広く分布するスピカータとは大陸レベルで自生地が異なる。
- 塊根の発達様式:カタルティカ(流通名「ベルランディエリ」として扱われる個体を含む)は塊根の大部分が土中に埋まる地下塊根型だが、フィッシスピナは地上部の幹基部全体を疣状突起が覆う甲冑状のコーデックス、ポダグリカはボトル〜フラスコ型に肥大した地上幹基部、スピカータは半多肉質の幹基部がゆるやかに膨らむ塊茎状構造で、地上に発達するタイプが多い。
- 葉の切れ込みの深さ:カタルティカの葉は心形の輪郭から基部近くまで深く5〜7裂し、裂片自体もさらに裂けるため非常に細かく切れ込む。浅い掌状裂のポダグリカや、縁に鋸歯が入るマルギナータと比べて葉の切れ込みが際立って深い。
- 地上部の枯れ込み方:カタルティカの地上茎は木質化せず草質〜やや多肉質のまま、冬になると地際近くまで完全に枯れ込む。ボトル型の木質コーデックスを一年中維持し落葉のみで越冬するポダグリカとは、休眠時の見た目が大きく異なる。
- 学名の整理:流通では「ベルランディエリ」と「カタルティカ」が別種のように扱われることがあるが、POWO・GBIFの現行分類では Jatropha berlandieri Torr. は Jatropha cathartica Terán & Berland. の異名(シノニム)として扱われている。「ベルランディエリ」の名で売られている株も、カタルティカと同じ種である。
名称と表記について
ヤトロファ・カタルティカは流通量が少ないため、国内での呼び名や表記はあまり多くありません。購入・検索の際に参考にしてください。
| 区分 | 表記例 | 補足 |
|---|---|---|
| 学名 | Jatropha cathartica | 正式な国際植物命名規約に基づく名称 |
| 和名・カタカナ表記 | ヤトロファ・カタルティカ | 日本の流通で使われる表記。流通量が少ないため統一されていない場合もある。 |
| 英名(通称) | Berlandier’s nettlespurge | 命名者ベルランディエに由来する英語圏での標準的な通称。ほかにスペイン語名 jicamilla も使われる。 |
| 流通名(略称) | カタルティカ | 属名を省略した略称として使われる |
| 種小名の意味 | cathartica(下剤の・浄化する) | ラテン語由来。薬用・民間療法での使用に関連する命名とされる。 |
種小名「cathartica」はラテン語で「浄化する・下剤の」を意味します。植物の毒性成分が民間療法で利用されていた歴史的背景に由来する命名と考えられています。なお、薬用としての使用は危険を伴うため絶対に行わないでください。
規制と流通
ヤトロファ属はワシントン条約(CITES)の附属書に掲載されておらず、附属書I・IIの規制対象外です(2026年9月時点、Species+で確認)。そのため種としての国際取引規制はありませんが、植物防疫法や各国の検疫規制の対象となる場合があります。全草有毒植物として輸入規制を設けている国もあるため、海外からの入手を検討する場合は事前に確認が必要です。
国内での流通量はポダグリカと比べて少なく、塊根植物専門店や収集家同士の取引で見かける程度です。現地株・実生株ともに入手難易度はやや高めです。流通を見かけた際は、株の状態と信頼できる販売元かどうかを慎重に確認したうえで購入することをおすすめします。ポダグリカのように実生が大量生産される体制が確立していないため、国内での供給量自体が少なく入手経路が限られる傾向があります。詳しくは購入前に確認しておきたいポイント(生育型や株の状態の見分け方)もあわせてご覧ください。
詳細はワシントン条約(CITES)ガイドをご覧ください。
形態の特徴
幹・塊根
カタルティカは地下塊根型のヤトロファで、塊根の大部分が土中に埋まるように発達します。北アメリカ植物誌は、地下の塊根を木質で直径13.5cmまでとしています。コルク質の表皮をまとい、ごつごつとした質感が塊根としての存在感を際立てます。茎や葉を傷つけると、水っぽく白く濁った樹液が出ます(北アメリカ植物誌)。この樹液にどの程度の毒性や刺激があるかは確かめられていませんが、ヤトロファ属には有毒な種があるため、植え替えや管理作業の際は手袋を着用し、目や口に触れないよう注意してください。
葉
生育期には細い茎が伸び、葉を展開します。地上部全体はコンパクトにまとまる傾向があり、大きく広がるポダグリカとは異なる印象です。秋になると地上部が枯れ込んで休眠に入り、翌春に塊根から再萌芽します。
花
茎の先に深い赤色の小花がまとまって咲きます(北アメリカ植物誌)。可憐な色味が無骨な塊根と対比して魅力的に映ります。流通量が少ないため、開花の詳細な情報はまだ十分に蓄積されていませんが、基本的なヤトロファの開花パターンに準じます。
| 項目 | 内容 | 補足 |
|---|---|---|
| 花色 | 深い赤 | 北アメリカ植物誌の記載。標本の記録も赤〜緋色 |
| 花の印象 | 可憐・小ぶり | 塊根の存在感との対比が楽しめる |
| 開花しやすさ | 中程度(詳細情報は少ない) | 適切な管理下では開花する |
| 開花時期 | 葉との前後は資料が見つかっていない | 自生地(米国テキサス州〜メキシコ北東部)では春〜夏 |
| 香り | ほぼなし | 強い香りはない |
| 鑑賞ポイント | 地下塊根の造形・花と塊根のコントラスト | 塊根を露出させた鑑賞スタイルが人気 |
自生地と育て方の考え方
北アメリカ植物誌によると、ヤトロファ・カタルティカはテキサス州南部からメキシコ北東部にかけての、草地の粘土質で石の多い平地や、塩分を含む平地に生えます。標本の記録には石灰岩の尾根に生えたものもありますが、粘土質の土地の記録のほうがずっと多くあります。
栽培では、排水性の高い用土・水やりのメリハリ・冬の乾燥管理という3点が、カタルティカを健康に育てるうえでの基本的な考え方です。
流通量が少なく、栽培データの蓄積が他の普及種と比べて少ない種です。基本的なヤトロファの栽培方法を応用しながら、個体の様子を注意深く観察して管理することが重要です。
自生地であるテキサス州南端からメキシコ・タマウリパス州にかけての一帯は亜熱帯性の半乾燥気候に属し、降雨は春と秋に集中する傾向があります。夏は高温が続く一方、分布の北限にあたるテキサス州南端では冬季に稀に氷点下まで冷え込む寒波に見舞われることがあります。カタルティカが冬に地上部を完全に落として休眠する性質は、こうした寒暖差の大きい環境に適応した生育リズムだと考えられ、栽培でも急な冷え込みには特に注意が必要です。
育て方
ヤトロファはトウダイグサ科の夏型塊根植物で、有毒な種があるため作業時には手袋を着用し、誤飲に注意してください。熱帯・亜熱帯原産で強い直射日光を好み、光量が多いほど旺盛に成長します。
カタルティカの光・置き場所の管理は?
生育期(5〜9月)は屋外で直射日光に1日4〜8時間以上当てるのが目安です。春に屋外へ出すときは明るい日陰から1〜2週間かけて慣らします。十分な光量が塊茎の発達と開花を促します。室内管理では光量が不足しやすく、徒長や花芽の不形成につながるため注意が必要です。
詳しくは光と置き場所を参照してください。
カタルティカの温度管理と越冬方法は?
冬は最低10℃を目安に、霜の当たらない室内で管理します。最低気温が15℃を下回り始めたら準備し、10℃を下回る前に室内へ取り込みます。冬に落葉して休眠する種が多く、休眠中は水を極力控えます。カタルティカの地上茎は木質化せず草質〜やや多肉質のため、休眠期には葉だけでなく茎ごと地際近くまで枯れ込むのが正常な姿です。地上部が完全になくなっても、塊根に張りがあれば枯死ではなく休眠なので、慌てて処分しないよう注意してください。
詳しくは温度管理と越冬を参照してください。
冬越しの具体的な手順(取り込み・断水と加温・春の戻し方)は冬の管理で解説しています。
カタルティカの水やり頻度と量は?
生育期は鉢の中まで乾いたら鉢底から流れ出るまで与え、真夏は5〜7日に1回程度が目安です。最低気温が15℃を下回ったら10〜14日に1回、10℃前後で月1〜2回に減らし、10℃を下回ったら断水します。冬は断水が基本で、塊根が目立ってしぼむ株だけ月1回ごく少量を与えます。
詳しくは水やりの基本を参照してください。
カタルティカへの肥料の与え方は?
4〜9月の生育期に、規定より薄めた液体肥料を2〜3週に1回(月1〜2回)程度与えるのが目安で、休眠中は与えません。緩効性肥料を使う場合は、パッケージの持続期間に合わせて少量を置き直します。
施肥の基本は肥料の基本を参照してください。
カタルティカに合った用土と配合は?
軽石40%・硬質赤玉土40%・日向土20%の基本配合が目安で、室内管理など乾きにくい条件では軽石50%・日向土30%・硬質赤玉土20%の過湿対策ブレンドに寄せて乾きを早めます。保水力の高すぎる用土は避けます。
カタルティカの鉢の選び方と植え替え時期は?
根の生長が旺盛な種も多いため、根詰まりが見られたら春の成長開始前に植え替えます。植え替えの際は塊根や茎の傷口から乳液(ラテックス)が滲み出るため、必ず手袋を着用し、作業後は手をよく洗ってください。詳しくは植え替え方法を参照してください。
鉢の素材やサイズの選び方は塊根植物の鉢の選び方を参照してください。
実生株と現地株の違い
ヤトロファ・カタルティカは流通量が少なく、現地株・実生株ともに入手できる機会が限られています。どちらの株も購入の際は状態をしっかり確認することが大切です。
| 項目 | 現地株 | 実生株 |
|---|---|---|
| 形の個体差 | 自然環境で育った不規則な形が多く、個性がある | 比較的均一な形状になりやすい |
| 管理の難易度 | 輸送・環境変化への順応が必要。根付きに時間がかかる場合がある。 | 国内環境に慣れているため安定しやすい |
| 育てる目的 | レアな個体のコレクション・個性的な塊根を求める方向け | 長期栽培で成長を観察したい方向け |
| ホームセンターでの遭遇率 | 皆無に近い | 低い(同属のポダグリカは量販店でも見かけることがあるが、カタルティカ自体は専門店・愛好家間の流通が中心) |
「実生株」「現地株」という呼び方の意味や、どちらを選ぶかの一般的な目安は実生株と現地株の違いで、タネから育てる場合の用土・腰水・発芽温度などの手順は塊根植物の実生(タネまき)のやり方で解説しています。
よくあるトラブルと対処
| 症状 | 主な原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 塊根がぶよぶよと柔らかくなる | 根腐れ・過湿 | 抜き上げて腐った部分を除去し、新しい用土に植え直す(根腐れの対処) |
| 春になっても芽が出ない | 塊根の弱り・過乾燥・低温障害 | 塊根の張りを確認し、少量の水を与えて様子を見る。温度も確認する。 |
| 地上部が枯れ込む(生育期に) | 根腐れ・過湿・水切れ | 根の状態を確認する。生育期の枯れ込みは異常サイン。 |
| 茎が徒長する | 日光不足 | 屋外管理に切り替えるか、育成ライトで補光する |
| ハダニ・カイガラムシの発生 | 乾燥・風通し不足 | 殺虫剤の散布または物理的除去。茎の付け根や葉裏を確認する。 |
まとめ
- ヤトロファ・カタルティカは流通量が少なく希少性の高い地下塊根型ヤトロファで、コーデックスコレクターに注目される種
- 自生地は草地の粘土質の平地や塩分を含む平地。栽培では排水性の高い用土と乾燥気味の水やり管理が基本
- 夏型で冬は地上部が枯れ込むが、塊根が生きていれば翌春に再萌芽する
- ヤトロファ属には有毒な種があるため、作業時は手袋着用・子どもやペットの手の届かない場所で管理
- 栽培データの蓄積が少ない種のため、個体の状態をこまめに観察しながら丁寧に育てることが長期栽培の鍵
よくある質問(FAQ)
カタルティカは冬に地上部が完全に枯れました。塊根は生きていますか?
地上部が枯れ込むのはカタルティカの正常な休眠サインです。塊根を軽く押して張りがあれば生きています。ぶよぶよと柔らかくなっている場合は根腐れの可能性があるため、抜き上げて根の状態を確認してください。春に気温が上がると塊根から再び芽が出てきます。
カタルティカは流通が少ない種とのことですが、どこで入手できますか?
塊根植物の専門店や、コーデックスコレクター同士のネットワーク(オークションサイト・SNSでの個人出品など)での入手が中心となります。購入の際は株の健全性と信頼できる販売元かどうかを必ず確認してください。
「ベルランディエリ」と「カタルティカ」は違う植物ですか?
同じ種です。Jatropha berlandieri は、POWO(WCVP)でも北アメリカ植物誌でも Jatropha cathartica の異名(シノニム)として扱われています。「ベルランディエリ」の名で売られている株もカタルティカなので、見分ける必要はありません。
カタルティカのラテックスが手についてしまいました。どうすればよいですか?
すぐに流水と石けんで丁寧に洗い流してください。カタルティカの樹液の刺激の強さは確かめられていませんが、赤みやかぶれが続く場合は皮膚科に相談することをおすすめします。目に入った場合はすぐに大量の水で洗い、眼科を受診してください。

