キフォステンマ・マクロプス

キフォステンマ・マクロプス キフォステンマ

キフォステンマ・マクロプス(Cyphostemma macropus)とは

キフォステンマ・マクロプスは、アンゴラ南西部の半乾燥地帯に自生するブドウ科の塊根植物(コーデックス)です。幹基部が著しく球状〜饅頭状に肥大することが最大の特徴で、原記載では高さ30〜80cmほどの低い樹形とされ、属の中でも特に塊根的フォルムが際立つ種です。

日本ではヤフオク・メルカリ・専門ショップで現地球(ベアルート株)を中心に流通しており、C2C市場を通じて一定の入手機会があります。ただしベアルート株での入手が主流なため、発根管理が最初のハードルになります。球状に肥大した幹基部は、適切な光と管理によって時間をかけて育てることで存在感が増します。

基本情報

項目 内容
学名 Cyphostemma macropus
別表記 Cyphostemma uter var. macropus(hort.、正式な学名ではない)
科 / 属 ブドウ科 / キフォステンマ属
原産地・自生環境 アンゴラ南西部(モサメデス周辺)〜ナミビア北西部・中西部(ブラントバーグ山周辺のダマラランドを含む)の半乾燥岩質地帯
生育型 夏型
耐寒温度(乾燥状態での下限) 10℃前後(霜に当てない)
成株のサイズ目安 高さ30〜80cm程度の低い樹形(自生地、原記載)
栽培難易度 中級(ベアルート株の発根管理が必要)
夏型中級分枝型

学名の分類情報はPlants of the World Online(POWO)、分布・標本データはGBIFで確認できます(いずれもCyphostemma curroriiの異名として整理されています。2026年9月確認)。

  • 現行分類の正名はCyphostemma curroriiで、macropusはその異名として整理されているとされる。日本の流通では「マクロプス」が定着している。
  • 原記載の産地はアンゴラ南西部で、正名の C. currorii としてはナミビア北西部・中西部にも分布し、ユッタエと分布が重なる地域もある。マダガスカル産のラザとは自生地が異なる。
  • 名前が似たウター(Cyphostemma uter)は独立した別種で、アンゴラ南西部〜ナミビア北西部に分布し、ボトル形の幹を持つ。葉は毛のある小葉5枚の複葉とする資料があり、マクロプスの原記載の葉と特徴が重なるため、葉だけでは見分けにくい。流通名「C. uter var. macropus」は園芸上の呼び名で、分類上マクロプスはウターの変種ではなく、C. currorii の異名にあたる(POWO)。

名称と表記について

区分 表記例 補足
本ページの表記 マクロプス / Cyphostemma macropus 国内流通で最も多く使われる呼称
別表記 Cyphostemma uter var. macropus 海外種子業者間で流通する園芸上の通称(hort.)。IPNI/GBIFに正式登録された学名ではない
分類学上の注記 現在の正名は Cyphostemma currorii (Hook.f.) Desc. POWO/GBIF/World Flora OnlineでCyphostemma macropusはcurroriiの異名(シノニム)として整理されている。日本の種子・苗流通では「マクロプス」の名が定着しているため、本ページでは流通名を主表記として使用
検索のコツ キフォステンマ マクロプス / Cyphostemma macropus 学名検索が有効

「Cyphostemma macropus」が日本の流通での主表記ですが、「Cyphostemma uter var. macropus」として販売されているケースもあります(この表記は正式な学名ではなく海外種子業者間の通称です)。学術的には Cyphostemma currorii の異名(シノニム)として整理されており、現在の正名はcurroriiですが、本ページでは流通での使用実態に則り「Cyphostemma macropus」を主表記とします。

規制と流通

マクロプス(正名 Cyphostemma currorii)は、CITES(ワシントン条約)附属書に掲載されていません(2026年9月時点、Species+で確認)。キフォステンマ属で附属書IIに掲載されているのはマダガスカル産のラザ・エレファントプス(C. elephantopus)・モンタグナキー(C. montagnacii)の3種で、属全体の掲載ではありません。掲載状況は改定されることがあるため、購入・輸入時にはSpecies+で最新情報を確認してください。

日本ではヤフオク・メルカリ・専門ショップで現地球(ベアルート株)を中心に流通しており、C2C市場での入手機会があります。原産地はアンゴラ南西部の植物学的記録が主ですが、日本市場にはソマリア産とラベルされた現地球が流通しているケースも見られます。産地が異なる個体が含まれている可能性があるため、購入時は来歴の確認を推奨します。マクロプスはアンゴラ南西部からナミビア北西部・中西部(ブラントバーグ山周辺のダマラランドを含む)にかけて自生する種です。学術的には Cyphostemma currorii の異名(シノニム)として整理されており、流通名として「マクロプス」と「クロリイ(currorii)」の両方が使われていることがあるため、購入時に学名表記が異なっていても同一種を指している可能性がある点に留意が必要です。詳しくは購入前に確認しておきたいポイント(生育型や株の状態の見分け方)もあわせてご覧ください。

詳細はワシントン条約(CITES)ガイドをご覧ください。

形態の特徴

幹・塊根

マクロプス最大の魅力は、幹基部が著しく球状〜饅頭状に肥大する点です。原記載では高さ30〜80cmほどの低い樹形で、幹が卵形〜円錐形にふくらむと記されており、キフォステンマ属の中でも特に塊根的フォルムが際立ちます。幹は低く、地際付近から分枝して横に広がる傾向があります。幹の表面は緑色のなめらかな樹皮で、その上を白っぽい〜褐色がかった紙状の外皮が覆い、カバノキのように薄い層になってはがれます。

葉

マクロプスの葉は多肉質の複葉で、枝先にまとまってつきます。原記載では、枝の一番下の葉が小葉3枚、それより上の葉は小葉5枚とされ、小葉は卵状楕円形〜倒卵形で縁に不ぞろいの鋸歯があり、先端の小葉は長さ10〜13cmほどになります。若い葉は白いクモ毛に覆われて波打つようにたたまれ、育つにつれて毛は少なくなります。正名の C. currorii にまとめられた植物には、無毛で小葉3枚の葉と記載されたものもあり、1911年の文献ではこの仲間は若い株で単葉のこともあるとされるため、葉の形だけで種を決めることはできません。落葉性で、秋〜冬に落葉して休眠します。

花・果実

成長期に小花をつけ、その後果実を結びます。原記載では、果実はエンドウ豆ほどの大きさの赤紫色の液果と伝えられています。正名の C. currorii に含められているナミビア産の植物(旧学名 Cissus crameriana)については、1911年の文献に、動物を毒殺するのに使われ、強い刺激があるという現地での聞き取りが載っています。安全とは確かめられていないため果実や樹液は口にせず、子どもやペットの手が届かない場所で管理してください。剪定などで樹液に触れたときは、石けんと水で洗い流します。

項目 内容 補足
毒性 正名 C. currorii に含められる植物で、動物の毒に使われたという古い記録がある 果実・樹液は口にしない。子ども・ペットの手が届かない場所で管理
葉の形 小葉5枚の複葉(枝の一番下の葉は小葉3枚) 原記載による。若い葉は白いクモ毛に覆われる。正名 C. currorii の原記載は無毛で小葉3枚とされ、個体による幅がある

ユッタエ・バイネシーとの比較

項目 ユッタエ バイネシー マクロプス
幹の形状 直立・やや細め 太くずんぐり 基部が球状に肥大・低く横広がり
樹皮の色 白っぽい紙状の外皮(剥がれると黄緑色の幹) 淡い黄色の紙状の樹皮 白っぽい〜褐色がかった紙状の外皮(下の樹皮は緑色)
葉の形 三出複葉(若い株は単葉) 三出複葉(若い株は単葉) 小葉5枚の複葉(枝の一番下は小葉3枚、若い葉は白い毛)
全体的な印象 直立した小高木状 ずんぐりした小高木状 低くまとまった球塊根状フォルム

自生地と育て方の考え方

原記載の産地は、アンゴラ南西部ナミベ(旧モサメデス)近くのモンテス・ネグロス山地の岩の多い平原と、その東のジラウルの乾いた山地で、標高約120〜180m(400〜600フィート)です。正名の C. currorii としてはナミビア北西部・中西部の内陸の岩山にも分布し、標高1,400〜1,650mで採集された標本もあります。乾季に完全乾燥する季節性降水の地域で、水はけの極めて良い土壌と強光が基本条件です。乾燥地帯への適応として幹基部に水分・養分を蓄える球状の構造を発達させており、過湿への耐性は低い一方で乾燥への耐性は非常に高い種です。

日本での主な失敗パターンは、ベアルート株の発根管理中の腐れ、冬の過湿による根腐れ、光不足による球状フォルムの崩れの3つです。球状の塊根を維持するうえで光管理は特に重要で、ユッタエ以上に日照を確保することが長期管理の鍵になります。

育て方

キフォステンマはブドウ科の夏型塊根植物です。属の一部の種で樹液が有毒とされるため、果実や樹液は口にしないよう注意してください。日光を強く好み、光量が十分であるほど塊茎がよく発達します。

マクロプスの光・置き場所の管理は?

成長期は直射日光の当たる屋外栽培が基本で、光量不足は軟弱な茎と塊茎の未発達につながります。室内管理の場合は南向き窓辺の最も明るい場所を選んでください。

詳しくは光と置き場所を参照してください。

マクロプスの温度管理と越冬方法は?

最低温度の目安は10℃前後で、冬は落葉して休眠するため室内の霜の当たらない場所で管理します。休眠中は塊茎が生きていれば春に再び芽吹きます。

詳しくは温度管理と越冬を参照してください。

冬越しの具体的な手順(取り込み・断水と加温・春の戻し方)は冬の管理で解説しています。

マクロプスの水やり頻度と量は?

成長期は用土が乾いてから数日後にたっぷり与えるメリハリのある水管理を心がけます。休眠期は断水か月1回程度の極少量にとどめ、根腐れを防ぎます。

詳しくは水やりの基本を参照してください。

マクロプスへの肥料の与え方は?

成長期に月1回程度の緩効性肥料で十分で、休眠期には施肥しません。

施肥の基本は肥料の基本を参照してください。

マクロプスに合った用土と配合は?

排水性と通気性を重視した粗粒系の配合土を使用し、保水力が高すぎる用土は根腐れの原因になります。

マクロプスの鉢の選び方と植え替え時期は?

塊茎が成長するにつれて根も太くなるため、定期的に春の成長前に植え替えます。詳しくは植え替え方法を参照してください。

鉢の素材やサイズの選び方は塊根植物の鉢の選び方を参照してください。

現地球(ベアルート株)と実生株の違い

マクロプスは現地球(ベアルート株)での流通が主流です。実生株も入手できますが流通量は少なく、育てる目的と管理スキルに応じて選ぶとよいでしょう。

項目 現地球(ベアルート株) 実生株
塊根フォルム 野生で発達した球状の塊根がすでに形成されている 時間をかけて自分で育て上げる楽しみがある
管理の難易度 発根管理が必要。発根前は腐れリスクがある 発根済みで管理しやすく、日本の気候に順応しやすい
育てる目的 すでに形成された塊根フォルムを楽しみたい方向け 成長過程・栽培を楽しみたい方向け

「実生株」「現地株」という呼び方の意味や、どちらを選ぶかの一般的な目安は実生株と現地株の違いで、タネから育てる場合の用土・腰水・発芽温度などの手順は塊根植物の実生(タネまき)のやり方で解説しています。

よくあるトラブルと対処

症状 主な原因 対処
発根しない・腐れる(ベアルート株) 過湿・低温・通気不足 発根管理中は高温・通気・最小限の水分管理を徹底
冬に落葉する 正常な休眠 異常ではない。断水して管理
幹が徒長し球状フォルムが崩れる 光不足 直射日光の当たる場所へ移動
根腐れ 低温期の過湿 冬は断水を徹底
樹皮が剥がれる 正常な現象 人為的に剥がさない。そのまま管理

まとめ

  • アンゴラ南西部原産。球状〜饅頭状に肥大する幹基部がキフォステンマ属随一の特徴
  • 動物の毒に使われたという古い記録がある。果実・樹液は口にせず、樹液に触れたら洗い流す
  • 現地球(ベアルート株)での入手が主流。発根管理が最初のハードル
  • 管理の基本はユッタエに準じる。耐寒温度はユッタエより高め(10℃以上)を推奨
  • 光不足は球状フォルム維持の最大の敵。強光管理が特に重要

よくある質問(FAQ)

マクロプスのベアルート株を購入しました。発根管理はどうすればよいですか?

高温(25〜30℃)・通気・最小限の水分の3点が発根管理の基本です。底面や側面から少量の水分が届く程度の管理(水耕・半水耕・土耕いずれも可)で、低温と過湿を避けながら根の発生を待ちます。発根確認後に通常の植え込みへ移行してください。発根管理の詳細は発根管理のページを参照してください。

マクロプスは冬に葉が全部落ちてしまいました。枯れていますか?

落葉性の種ですので、秋〜冬に葉が落ちるのは正常な休眠のサインです。幹がしっかりしていて根腐れがなければ、春に気温が上がると再び芽吹きます。落葉後は断水管理に切り替えてください。

葉がユッタエと形が違います。本当にマクロプスですか?

マクロプスは原記載で小葉5枚(枝の一番下の葉は小葉3枚)の複葉とされ、三出複葉のユッタエとは小葉の数で違って見えることがあります。ただし正名の C. currorii にまとめられた植物には小葉3枚のものもあり、若い株では単葉のこともあるため、葉の形だけで本物かどうかを判断することはできません。幹基部のふくらみ方や、紙状に薄くはがれる白っぽい〜褐色がかった外皮、入手元の来歴と合わせて確認してください。

マクロプスとウターは同じ植物ですか?

別の植物として扱われています。海外の種子流通では「Cyphostemma uter var. macropus」と表記されることがありますが、これは園芸上の呼び名で、POWOではマクロプスは C. currorii の異名、ウター(C. uter)は独立種です。ウターはアンゴラ南西部〜ナミビア北西部に分布し、ボトル形の幹を持ちます。葉は毛のある小葉5枚の複葉とする資料があり、マクロプスの原記載の葉と似ているため、葉だけでは見分けにくい植物です。

マクロプスの幹の樹皮が白くボロボロと剥がれていますが、病気ですか?

病気ではありません。マクロプスの正常な生理現象です。幹を覆う白っぽい〜褐色がかった紙状の外皮が、カバノキのように薄い層になって自然にはがれるのはこの種の特徴であり、人為的に剥がす必要はありません。そのまま管理してください。