ペラルゴニウム・カロリヘンリキとは
ペラルゴニウム・カロリヘンリキ(Pelargonium caroli-henrici)は、南アフリカの北ケープ州ガリースの西(バイエフレイ)から西ケープ州コーケナープにかけて、海沿いのナマクワランド・サンドフェルトとクナースフラクテ(Knersvlakte)の、石英の小石が広がる平地に自生する塊根性ペラルゴニウムです(Strelitzia 30)。
本種はペラルゴニウム属のセクション・ホアレア(Section Hoarea)に属し、地中に発達した塊根を持ちながら茎をほとんど形成せず、根生葉が地際から放射状に展開するタイプです。夏に落葉・休眠し、秋から春にかけて生育する冬型の生育サイクルを持ちます。
1987年にスウェーデンの植物学者 Bertil Nordenstam によって記載された種で、学名の種小名 caroli-henrici はオーストリアの植物学者 Karl Heinz Rechinger(カール・ハインツ・レヒンガー、1906–1998)への献名です。記載誌がレヒンガーの80歳の誕生日を記念した論文集号として編まれており、友誼を込めた命名となっています。日本国内での流通はC2Cが主体で、専門ナーサリーや国内愛好家による実生株が少量流通しています。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 学名 | Pelargonium caroli-henrici B.Nord. (1987) |
| 別表記 | ペラルゴニウム カロリヘンリキ / カロリ・ヘンリキ |
| 科・属 | フウロソウ科(Geraniaceae)/ ペラルゴニウム属(Section Hoarea) |
| 原産地・自生環境 | 南アフリカ北ケープ州ガリースの西〜西ケープ州コーケナープ(ナマクワランド・サンドフェルトとクナースフラクテ)の、石英の小石が広がる平地 |
| 生育型 | 冬型(秋〜春が成長期、夏が休眠期) |
| 耐寒温度(最低気温の下限) | 5℃前後(霜・寒風に弱い) |
| 成株のサイズ目安 | 株高 約5cm、花序高 最大約20cm、塊根径 最大約3〜3.5cm |
| 栽培難易度 | 上級 |
学名の分類情報はPOWO(Plants of the World Online)およびGBIFで確認できます(2026年9月確認)。
- Section Hoareaに属し、地下の蕪型〜人参型塊根に暗褐色の剥離性表皮を持つ点で、地上茎が木質化するカルノスムやエキナトゥムとは器官の作り方が根本的に異なる。
- 最大の識別点は、葉が枯れたあとに、葉のない状態で花茎が立ち上がって咲くこと。地上に茎をほとんど持たない点でも、茎が育つカルノスムやテトラゴナムと区別できる。
- 株高はわずか5cm程度と同属内でも極端に小型で、花序だけが最大20cmまで伸びる独特のプロポーションを持つ。
- 石英の小石が広がる平地に生え、北ケープ州ガリースの西から西ケープ州コーケナープにかけて分布する。
- 花はクリーム〜淡黄色で上2枚の花弁に暗赤色のクロウが入り、白〜黄緑系のカルノスムや黄褐色のトリステとは色調が異なる。
名称と表記について
日本語の正式な和名は定められていません。学名をそのままカタカナ読みした「ペラルゴニウム・カロリヘンリキ」または「ペラルゴニウム・カロリ・ヘンリキ」という呼び方が流通名として使われています。英語圏では「Pebble Storksbill(小石コウノトリのくちばし)」という通称も用いられます。
| 区分 | 表記例 | 補足 |
|---|---|---|
| 学名 | Pelargonium caroli-henrici B.Nord. | 命名者 Bertil Nordenstam、1987年記載 |
| カタカナ表記 | ペラルゴニウム・カロリヘンリキ | 日本での一般的な流通名 |
| 表記揺れ | ペラルゴニウム・カロリ・ヘンリキ | 同一種を指す |
| 英語通称 | Pebble Storksbill | 石英礫地の自生環境に由来 |
種小名の caroli-henrici はラテン語の人名属格形です。「caroli」はカール(Carolus のラテン語属格)、「henrici」はハインツ(Henricus のラテン語属格)を意味し、オーストリアの植物学者 Karl Heinz Rechinger への献名です。レヒンガーはギリシャ・イラン・中央アジア植物相の権威であり、命名者ノルデンスタムとの個人的友誼から命名されました。属名「Pelargonium」はコウノトリを意味するギリシャ語「pelargos」に由来し、果実の形がコウノトリのくちばしに似ることから名付けられています。
規制と流通
ペラルゴニウム属全体はワシントン条約(CITES)の附属書に掲載されておらず(トリステなど一部の種は、南アフリカが自国の保護のために登録した附属書IIIに掲載されています(2023年2月から))、本種は規制対象外です(2026年9月時点、Species+で確認)。ただし、南アフリカ国内では固有の自然保護法のもとで野生個体の採集が規制されており、現地株として流通する個体の来歴には注意が必要です。なお国内専門店から「本種の名で流通する個体の中に別種が含まれていた」という指摘もあるため、購入時は信頼できる販売元からの入手を推奨します。
日本国内では専門ナーサリーの流通量は限られており、ヤフオク・メルカリ・インスタグラムなどのC2C流通が中心です。国内愛好家による実生記録も蓄積されてきており、種子・実生苗ともに一定量が流通しています。本種は南アフリカの北ケープ州から西ケープ州にかけての、石英の小石が広がる平地という特殊な環境に自生します。詳しくは購入前に確認しておきたいポイント(生育型や株の状態の見分け方)もあわせてご覧ください。
詳細はワシントン条約(CITES)ガイドをご覧ください。
形態の特徴
塊根・茎
地中に蕪型〜人参型の塊根を形成し、表面は暗褐色の厚い剥脱性の表皮に覆われています。成熟株で最大直径3〜3.5cm程度と比較的コンパクトです。Section Hoarea の特徴として茎はほとんど発達せず、株高は約5cm程度に留まります。葉と花序はすべて塊根の頂部から直接展開します。
葉
根生葉が地際から放射状に展開します。葉は羽状に深く切れ込み、白い細毛に覆われることでシルバーグリーンの柔らかな質感を持ちます。夏の休眠期には落葉し、秋になると再び展開します。葉の形と質感は本種を他の塊根性ペラルゴニウムと見分ける際の重要な手がかりのひとつです。
花
花序は塊根から直接伸び、最大20cm程度になります。花はクリーム〜淡黄色で、上側の2枚の花弁に暗赤色のクロウ(爪状の模様)が入り、下側の3枚に赤い斑点が入ります。この非対称な花弁の模様はペラルゴニウム属に共通して見られる特徴です。
| 項目 | 内容 | 補足 |
|---|---|---|
| 花色 | クリーム〜淡黄色 | 上2枚に暗赤色のクロウ、下3枚に赤い斑点 |
| 花序の高さ | 最大 約20cm | 地際の塊根から直接伸びる |
| 開花時期 | 葉が枯れてから | 自生地では10月(南半球の春) |
| 花弁数 | 5枚(上2枚・下3枚で左右非相称) | 上2枚が大きく模様が入る |
自生地と育て方の考え方
自生地のひとつクナースフラクテは、西ケープ州北部に広がる低い平原で、白く角ばった石英の小石が地表を覆う「石英原」が特徴です。石英原の地表は、夏はまわりより涼しく、冬はまわりより暖かいことが多いとされます。石英原の土は、浅く強い酸性のものから、やや深く中性〜弱酸性のものまであります(Strelitzia 30)。
気候は冬雨型で、雨は主に秋〜冬に集中し、夏は乾燥します。年間降水量は非常に少なく、植物は短期間の雨を塊根に蓄えながら生き抜いています。栽培においても夏の断水と水はけ重視の用土が不可欠な管理方針の理由はここにあります。
日本では夏の高温多湿が本種にとって最大のストレス要因となります。自生地には存在しない蒸れが塊根の腐敗を引き起こすため、休眠期の管理が栽培成否の鍵を握ります。風通しの確保と夏の遮雨が、国内での安定した栽培に向けた現実的な対処法です。
クナースフラクテの年間降水量はおおむね150mm未満で、大西洋から内陸へ流れ込む霧で水分が補われることもあります。冬の最低気温は5〜10℃、夏の最高気温は30〜35℃とされます。また本種は葉が枯れたあと、葉のない状態で花茎が立ち上がり、自生地では10月(南半球の春)に咲くため、葉の時期と花の時期がずれます。
育て方
冬型塊根植物として、秋から春にかけての生育期に水と光を与え、夏の休眠期には断水に近い管理を行います。自生地の環境を再現する視点で用土・水やり・置き場所を設計することが栽培の基本です。
カロリヘンリキの光・置き場所の管理は?
生育期(10〜4月頃)は日当たりのよい屋外か室内の南向きの窓辺に置き、夏の休眠中(6〜8月)は直射日光を避けた風通しのよい明るい日陰に移すのが目安です。春は最低気温が5℃を安定して超えたら(3月後半ごろ)、1〜2週間かけて屋外の直射日光に慣らします。日光が不足すると葉が間延びし、塊根の充実が遅れます。生育期の遮光は基本的に不要で、風通しのよい屋外の直射日光下が理想的です。休眠期は直射日光よりも雨を避けることが優先となるため、軒下や雨のかからない明るい場所に移動させます。
詳しくは光と置き場所を参照してください。
カロリヘンリキの温度管理と越冬方法は?
冬は最低5℃前後を下回らないようにし、10〜20℃程度で管理するのが目安です。霜には当てず、屋外の株は最低気温が5℃を下回る前(霜の予報が出る前)に室内へ取り込みます。冬型でも極端な低温には耐えられないため、最低温度の管理は欠かせません。なお Section Hoarea の仲間は、秋に日が短くなり気温が下がってくる頃に芽を動かすとされますが、きっかけになる温度の数値は資料で確かめられていません。秋口は温度よりも新芽の動きを見て、水やりを再開するタイミングを判断します。
詳しくは温度管理と越冬を参照してください。
冬越しの具体的な手順(取り込み・断水と加温・春の戻し方)は冬の管理で解説しています。
カロリヘンリキの水やり頻度と量は?
生育期(10〜4月頃)は鉢の中まで乾いたら鉢底から流れ出るまで与え、11月と3〜4月は週1回程度、12〜2月は月2回程度が目安です。過湿は塊根腐敗の最大原因です。夏の休眠期はほぼ断水し、月に1〜2回程度の極少量にとどめます。秋に葉が展開しはじめたら徐々に水量を増やし、生育のサインを確認しながら管理します。
本種は葉が枯れたあと、葉のない状態で花茎が立ち上がるという順序で生育が進みます。花茎が伸びている間も枯死のサインではないため、慌てずに土の乾燥管理を継続し、過湿にしないよう注意してください。
詳しくは水やりの基本を参照してください。
カロリヘンリキへの肥料の与え方は?
10〜4月の生育期に、規定より薄めた液体肥料を月1〜2回程度与えるのが目安で、低温で成長が鈍る時期は間隔を空けます。5〜9月の休眠期・高温期は与えません。自生地は貧栄養な環境のため、肥料は控えめが原則で、月1回程度にとどめても十分です。窒素過多は軟弱な成長を促し、耐病性を下げる原因となるため、施肥量は最小限に抑えます。
施肥の基本は肥料の基本を参照してください。
カロリヘンリキに合った用土と配合は?
軽石40%・硬質赤玉土40%・日向土20%の基本配合が目安で、室内管理など乾きにくい条件では軽石50%・日向土30%・硬質赤玉土20%の過湿対策ブレンドに寄せ、夏の休眠中に用土が湿り続けないようにします。水はけを最優先に考えた配合にします。赤玉土(小粒)・日向土・パーライトを中心とした無機質主体の配合が適しています。自生地の石英の小石が広がる環境を参考に、有機物は最小限に抑えます。市販の多肉植物用培土をベースにパーライトや軽石を追加する方法も有効です。
カロリヘンリキの鉢の選び方と植え替え時期は?
通気性のよい素焼き鉢や深型のテラコッタ鉢が適しています。根が蕪型に発達するため、深さのある鉢を選ぶと根詰まりを防げます。植え替えは休眠明けの秋、葉が動き出す前後が最適なタイミングです。詳しくは植え替え方法を参照してください。
鉢の素材やサイズの選び方は塊根植物の鉢の選び方を参照してください。
実生株と現地株の違い
本種の流通個体は大きく「実生株」と「現地株」に分かれます。自生地での採集が規制されていることもあり、近年は国内愛好家による実生株の流通が増えています。購入前に来歴を確認し、適切な選択をすることが重要です。
| 項目 | 実生株 | 現地株 |
|---|---|---|
| 入手しやすさ | 国内実生品が一定量流通 | 流通量は少なく希少 |
| 順化状態 | 国内環境に適応済み | 移送・環境変化のストレスあり |
| 塊根の迫力 | 成熟まで時間が必要 | 野生の風格・年数を感じさせる |
| ホームセンターでの遭遇率 | ごくまれ。基本的に専門店・国内愛好家によるC2C流通が中心 | ほぼなし |
「実生株」「現地株」という呼び方の意味や、どちらを選ぶかの一般的な目安は実生株と現地株の違いで、タネから育てる場合の用土・腰水・発芽温度などの手順は塊根植物の実生(タネまき)のやり方で解説しています。
よくあるトラブルと対処
| 症状 | 主な原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 夏に塊根が軟化・腐敗する | 休眠期の過湿・蒸れ | 断水を徹底し、風通しのよい場所へ移動。腐敗部は切除し乾燥させる |
| 生育期に葉が出てこない | 水不足・温度不足・休眠の長引き | 秋口に少量の水を与えて様子を見る。温度が十分か確認する |
| 葉が黄化・落葉する(生育期) | 根腐れ・水切れ・病害 | 塊根の硬さを確認し、根腐れなら植え替え。水切れなら速やかに水を与える |
| 葉が間延びする・徒長する | 日照不足 | より日当たりのよい場所へ移動。秋〜春は遮光不要 |
| 花が咲かない | 株の未成熟・日照不足・栄養不足 | 実生から数年かかる場合あり。日照確保と薄い液肥を試みる |
まとめ
- ペラルゴニウム・カロリヘンリキは、南アフリカ北ケープ州〜西ケープ州の石英の小石が広がる平地に生える冬型塊根植物。
- Section Hoarea に属し、地下塊根から根生葉が展開するタイプ。株高は5cm程度とコンパクトで、花序は最大20cmまで伸びる。
- 花はクリーム〜淡黄色で、上2枚の花弁に暗赤色のクロウ、下3枚に赤い斑点が入る独特の模様を持つ。
- 栽培の最重要ポイントは夏の断水と排水性の高い用土。自生地の貧栄養・乾燥環境を栽培環境に反映することが成功の鍵。
- 本種はCITES附属書未掲載(同属のトリステなど一部は附属書III)だが国内流通は少量。購入時は信頼できる販売元からの入手と来歴確認を推奨する。
よくある質問(FAQ)
ペラルゴニウム・カロリヘンリキはどこで購入できますか?
国内では塊根植物専門ナーサリーのほか、ヤフオク・メルカリ・インスタグラムなどのC2C流通で入手できます。流通量は少ないため定期的に検索をかけるか、愛好家コミュニティで情報を集めると効率的です。なお「本種の名で流通する個体の中に別種が含まれていた」という専門店からの指摘があるため、信頼できる販売元からの購入を心がけてください。
カロリヘンリキは夏に完全断水すべきですか?
基本的には断水に近い管理を推奨します。ただし完全断水が数か月続く場合、塊根が過度に干上がる可能性があります。月1〜2回程度、鉢土が少し湿る程度の極少量水やりを行い、塊根の状態を確認しながら管理するのが安全です。
カロリヘンリキは他のペラルゴニウムと比べて栽培は難しいですか?
Section Hoarea の中では標準的な難易度です。夏の高温多湿対策と、秋の生育再開タイミングの見極めが最初の壁になります。トリステやカルノスムなど冬型ペラルゴニウムの栽培経験があれば、管理の勘所は共通しています。実生から育てた場合は数年かけて塊根が充実していくため、焦らず長期的に育てる姿勢が大切です。
カロリヘンリキは実生から育てると何年で開花しますか?
実生から咲くまでの年数を書いた資料は見つかっていません。自生地では葉が枯れたあとの10月(南半球の春)に花茎を伸ばして咲きます。

