カイガラムシは発見が遅れやすく、気づいたときには株全体に広がっていることも少なくない害虫です。
硬い殻や蝋状の分泌物に覆われているため、見た目が虫らしくなく見過ごされやすい点が特徴です。
早期発見と適切な対処が被害を最小限に抑えるポイントになります。
塊根植物に付く害虫の全体像については、病害虫の対策ページもあわせてご覧ください。
カイガラムシとは
カイガラムシは半翅目カイガラムシ上科に属する昆虫の総称で、植物の茎・葉・根などに寄生して汁液を吸います。
成虫になると動きが鈍くなり、その場に固着して生活するものが多く、見た目はシミや付着物のように見えることがあります。
塊根植物に多く見られる主なカイガラムシの種類は以下の通りです。
主な種類と特徴
| 種類 | 見た目の特徴 | 主な寄生場所 |
|---|---|---|
| マルカイガラムシ類 | 小さく平たい板状の殻。殻をはがすと虫の体が植物に残る。甘露を出さない | 茎・幹・葉 |
| カタカイガラムシ類(ロウムシ類を含む) | マルカイガラムシより大きく、丸く盛り上がる。表面は虫の体そのもので、なめらか・綿状・ロウ状のものがある。甘露を出す | 茎・幹・葉 |
表は、カリフォルニア大学の病害虫管理の解説(UC IPM)がよく見られる2つの型として挙げる分け方です。コナカイガラムシ(白い綿状・粉状の物質に覆われる)も同じカイガラムシ上科の仲間ですが、見た目と付きやすい場所(根に付く種類もある)が違うため、コナカイガラムシの対処方法ページで分けて解説しています。
発見しやすい場所と症状
カイガラムシは株の特定の箇所に集まりやすい習性があります。
以下の部位を重点的に確認することで、早期発見につながります。
| 部位 | 症状・見た目 | 見分け方のポイント |
|---|---|---|
| 茎・枝の分岐部 | 白っぽい付着物・茶色い斑点状のもの | 爪楊枝などでこするとはがれる(定着した成虫は動かない) |
| 葉の付け根・葉の裏 | 白い粉状・すす状の汚れ | 拭いても再発する・葉が黄化してくる |
| 塊根部(ボディ)の表面 | 小さな突起・白い点・蝋状のかたまり | 色が均一でなくなる・表面の質感が変わる |
| 根(株を鉢から抜いて確かめる) | 白い粉状の付着物(アリゾナ大学はアデニウムの例で、根や用土、鉢の内側に灰白色の粉状のものが付くとしている) | 根に付くコナカイガラムシ類(ネコナカイガラムシなど)の可能性。コナカイガラムシの対処方法を確認する |
カタカイガラムシ類などが分泌する甘露(排泄物)にはすす病菌が繁殖しやすく(マルカイガラムシ類は甘露を出しません)、葉や茎が黒っぽく汚れてくる「すす病」を引き起こすこともあります。
すす病の発生は、カイガラムシの寄生が進んでいるサインのひとつと考えられます。
対処方法
カイガラムシを発見したら、まず他の株から隔離してください。カイガラムシは接触や水しぶき、空気中の移動で広がることがあります。隔離後に種類と被害範囲を確認してから対処方法を選んでください。
カイガラムシへの対処は、発生の程度に応じて物理的除去と薬剤散布を使い分けるのが一般的です。
物理的除去(軽度の発生に有効)
発生が少ない場合は、物理的に取り除く方法が有効です。
- 古い歯ブラシで茎や塊根部をこすり、カイガラムシを落とす
- 竹串・爪楊枝で固着した虫体をひとつひとつ取り除く
- 水で流せる場所は流水で洗い流す
歯ブラシや爪でこすって除去する際は、力を入れすぎると植物の表皮(緑色の外皮)を傷つけることがあります。傷んだ部分は菌の侵入口になりやすいため、優しく丁寧に除去してください。除去後は傷口が乾くまで水やりを控え、風通しのよい場所で様子を見てください。
物理的除去は根絶しにくく、見落とした個体から再発することがあります。
除去後も数日おきに経過を観察し、再発がないか確認することが大切です。
薬剤散布(中度以上の発生・再発時)
発生が広範囲に及んでいる場合や、物理的除去後に再発を繰り返す場合は薬剤の使用を検討します。
薬剤は、カイガラムシ類に登録のある製品を選びます。花き類・観葉植物のカイガラムシ類に登録があるものにはカイガラムシエアゾールがあり、虫に直接噴射して使います。オルトラン類などの粒剤は、花き類・観葉植物ではカイガラムシ類の登録がありません(農林水産省 農薬登録情報提供システム、2026年9月確認)。
カイガラムシには孵化直後の幼虫期(クローラー期)があります。この時期は殻がまだ発達しておらず、薬剤が最も効きやすいタイミングです。成虫になって固い殻に覆われると薬剤が届きにくくなるため、クローラーが動いている時期に合わせると効きやすくなります。カリフォルニア大学の病害虫管理の解説(UC IPM)は、クローラーが出る時期を晩冬〜初夏としつつ、年に何世代も繰り返す種類は冬の暖かい地域では一年中どの段階もいるとしています。室内で冬越しする株では、時期を決めずに虫の様子を見て判断します。カイガラムシエアゾールは、適用表の使用方法どおり虫に直接噴射して使います。
薬剤を使用する際は、製品の使用方法・適用植物・散布間隔を必ず確認してください。
塊根植物は多肉・多肥大型の植物が多く、薬害が出るリスクがある場合は、まず1株で試してから広げる方が安全です。
予防策と定期チェックのポイント
カイガラムシは一度発生すると根絶が難しいため、予防と早期発見の習慣が重要です。
予防のポイント
- 風通しの良い場所に置く(蒸れた環境はカイガラムシが増えやすい)
- 新しく入手した株は他の株と離して数週間様子を見る(持ち込み防止)
- 過度な窒素肥料は株を軟弱にし、害虫が付きやすくなる原因になる
新たに株を購入したり譲り受けたりした際は、しばらくの間(2〜4週間を目安に)他の株と隔離して観察してください。カイガラムシは購入株に潜んで持ち込まれるケースが多く、初期段階では見つけにくいことがあります。
定期チェックのポイント
水やりのたびに株全体をざっと観察する習慣をつけることが、早期発見の基本です。
特に以下のタイミングで重点的に確認することをおすすめします。
- 植え替え時:根・塊根部の全体を目視確認できる
- 春の成長期前後:越冬中に発生していないか確認
- 梅雨〜夏:高温多湿の時期は害虫が増えやすい
まとめ
- カイガラムシは見た目が虫らしくなく、茎や葉の付け根に潜むため発見が遅れやすい
- 種類によって見た目が異なるため、白い付着物・茶色い突起・すす状の汚れに注意する
- 軽度であれば歯ブラシ・竹串などで物理的に取り除くのが基本
- 広範囲に及ぶ場合や再発時は、カイガラムシ類に登録のある薬剤をラベルに従って使う
- 除去後も数日おきに経過を観察し、再発がないか確認する
- 風通しの確保・新株の隔離観察が予防の基本
- 水やりのたびに株を観察する習慣が早期発見につながる
- カイガラムシ被害が進むと落葉につながることがある。葉落ちが続く場合は葉落ちの原因と対策も確認する
- 管理全般の見直しはよくある失敗と対策も参考にする
カイガラムシとコナカイガラムシは同じですか?
コナカイガラムシもカイガラムシ上科の仲間です。この記事で扱うマルカイガラムシ類・カタカイガラムシ類は殻やロウで覆われて茎や幹に固着し、成虫は動きません。コナカイガラムシは白い綿状・粉状の物質に覆われ、成虫になっても脚があってゆっくり動きます。見た目と付く場所が違うため、白い綿状の塊が見られる場合はコナカイガラムシのページを確認してください。
カイガラムシは農薬で駆除できますか?
成虫は固い殻に守られているため、農薬だけでの駆除は難しいです。歯ブラシなどで物理的に除去してから薬剤を使用するのが基本です。孵化直後のクローラー期(幼虫期)は殻がなく薬剤が効きやすいため、クローラーが見つかった時期に、カイガラムシ類に登録のある薬剤を虫に直接かけます。カイガラムシが出る時期は種類と置き場所で違い、室内では一年中見られることがあります。
カイガラムシがいると葉が黒くなるのはなぜですか?
カイガラムシの排泄物(甘露)にすす病菌が繁殖することで、葉や茎が黒く汚れます(すす病)。カイガラムシ自体を除去するとすす病の原因がなくなりますが、黒い汚れは濡れたやわらかい布などで優しく拭き取ることで除去できます。
一度駆除しても再発します。なぜですか?
卵が残っていて孵化した、購入した新しい株から再び持ち込まれた、または除去が不十分だった場合に再発します。定期的な観察を続け、早期発見・早期対処を習慣にすることが重要です。新規購入株は2〜4週間隔離して観察し、感染がないことを確認してから他の株と同じ場所に置くようにしてください。
他の症状から原因を調べたい場合は、症状別トラブル診断で確認できます。葉・幹・害虫・全体的な不調など症状ごとに対処記事をまとめています。

