殺虫剤はハダニ・カイガラムシ・コナカイガラムシなどの害虫対処に使うアイテムです。害虫の種類によって有効な殺虫剤が異なるため、症状に合わせた製品選びが重要です。害虫全般の症状と対処の考え方については 害虫対処の基本ガイド もあわせてご確認ください。
塊根植物で使う殺虫剤の種類
浸透移行性タイプ
浸透移行性の殺虫剤は、有効成分が植物の体内に浸透し、害虫が植物を吸汁することで効果を発揮するタイプです。葉の裏など手の届きにくい場所の害虫にも効果が期待できるのが特徴で、GFオルトラン粒剤などが代表的な製品です。GFオルトラン粒剤は株元に散布して使い、水やりで溶け出した成分が根から吸収されます(用土に混ぜる使い方は登録にありません)。
接触型タイプ
接触型の殺虫剤は、害虫に直接薬剤が触れることで効果を発揮します。花き類・観葉植物や樹木類のカイガラムシ類に登録のあるカイガラムシエアゾールが、このタイプの製品です。マシン油乳剤も接触型ですが、登録は果樹・樹木類などで、花き類・観葉植物にはありません(農林水産省 農薬登録情報提供システム、2026年9月確認)。害虫の発生箇所に直接散布する必要があるため、葉の裏などまんべんなく散布することが重要です。
殺ダニ剤(アカリサイド)
ハダニは一般的な殺虫剤では効果が低い場合が多く、ハダニ類に登録のある薬剤を使います。花き類・観葉植物のハダニ類に登録のある製品には、殺ダニ剤(アカリサイド)のバロックフロアブル(有効成分エトキサゾール)のほか、うどんこ病にも登録のあるアーリーセーフ、ベニカマイルドスプレー、殺虫殺菌剤のベニカXファインスプレーなどがあります。なお、コロマイトは花き類・観葉植物という作物群の登録がなく、観賞用の作物では個別の作物への登録です(乳剤はきく・宿根かすみそうなど、水和剤はきく・ばら・りんどうなど。農林水産省 農薬登録情報提供システム、2026年10月確認)。殺ダニ剤は種類によって卵・幼虫・成虫のうちどの段階に有効かが異なるため、製品の特性を確認して使うとより効果的です。
ハダニに一般的な殺虫剤を使っても効果が薄いのは、ハダニが昆虫ではなくダニの仲間だからです。まず専用の殺ダニ剤を選ぶことが対処の近道になります。
主な製品の比較
| 製品名 | 対象害虫 | 使い方 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 浸透移行性タイプ | |||
| GFオルトラン粒剤 | アブラムシ・アザミウマなど(カイガラムシ類の登録なし) | 株元に散布して水やり(用土混和の登録なし) | 強い臭いがあるため屋外使用推奨 |
| 接触型タイプ | |||
| カイガラムシエアゾール | カイガラムシ類(花き類・観葉植物、樹木類) | ラベルに記載の方法で、カイガラムシに直接噴射 | 塊根植物は花き類・観葉植物の作物群として使うため、初めての種には一部に少量試してから全体に使う |
| マシン油乳剤 | カイガラムシ・ハダニ(果樹・樹木類など。花き類・観葉植物の登録はない) | 水に希釈して散布・害虫を油で窒息させる | 高温時の散布は薬害リスクあり |
| 殺ダニ剤(アカリサイド) | |||
| バロックフロアブル | ハダニ(卵・幼虫) | 2000倍に希釈して葉の表裏にまんべんなく散布 | 使用は1回まで。成虫は殺さず、散布を受けた成虫が産んだ卵がふ化しなくなる効き方。成虫が多いときは成分の違う製品と組み合わせる |
| アーリーセーフ | ハダニ類(花き類・観葉植物)。うどんこ病にも登録あり | ラベルに記載の倍数に希釈し、葉の表裏に散布 | 虫に薬液が直接かかるよう散布する。使用回数はラベルで確認 |
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使い方の基本
規定の希釈率を守る
農薬として登録された殺虫剤は、使える作物・害虫・希釈倍数・使用回数がラベルの適用表に記載されています。適用表に従うことは、食用作物では罰則付きの義務、観賞植物では努力義務とされています。この記事では、観賞植物でもラベルの適用表に従って使うことを基本にしています。希釈率が濃すぎると薬害のリスクが高まり、薄すぎると十分な効果が得られません。
抵抗性対策のローテーション
同じ殺虫剤を繰り返し使用すると、害虫が薬剤に対する抵抗性(耐性)を獲得してしまうことがあります。これを防ぐために、有効成分の系統が異なる殺虫剤をローテーションして使うことが推奨されています。例えばハダニ対策であれば、使用回数が1回までのバロックフロアブルを使ったあとは、ベニカXファインスプレー・アーリーセーフ・ベニカマイルドスプレーなど成分の違う製品に切り替えるといった方法があります。製品名が違っても有効成分が同じものがある点に注意してください。カイガラムシエアゾール・ベニカXファインスプレー・オルトランDX粒剤はどれもクロチアニジンを含み、花き類・観葉植物ではクロチアニジンを含む農薬を合わせて4回までと決められています(農林水産省 農薬登録情報提供システム、2026年10月確認)。
注意点
人体・ペットへの安全管理
殺虫剤の散布中は吸入や皮膚への接触を避けるため、マスク・ゴム手袋・長袖の着用を推奨します。散布は屋外など風通しのよい場所で行い、ラベルの安全使用上の注意にも目を通してください。ペットや子供が近くにいる場所での使用は避け、散布後は十分に換気・乾燥させてから近づくようにしてください。
使用時期の注意
気温の高い時間帯や強い直射日光下での散布は薬害が出やすくなることがあります(温度の条件はラベルの注意事項で確かめてください)。気温が落ち着いた朝方や夕方に散布するとよいでしょう。また、開花中の株への散布は花や花粉に影響を与えることがあるため注意が必要です。
塊根植物の属ごとに薬害の出やすさを確かめた資料は見つかっていません。初めて使う薬剤は、必ず一部に少量テスト散布してから全体に使用してください。
農薬としての保管
殺虫剤は農薬です。ラベルの保管上の注意に従い、子供やペットの手の届かない場所に、食品などと区別して保管してください。使用後は容器を適切に処理し、使い残した希釈液は排水口への廃棄を避け、自治体のルールに従って処分してください。
よくある質問
ハダニに普通の殺虫剤を使っても効かないのはなぜですか?
ハダニはダニの一種であり、昆虫ではありません。一般的な殺虫成分はハダニには効果が低く、専用の殺ダニ剤(アカリサイド)が必要です。花き類・観葉植物のハダニ類に登録のある、バロックフロアブルやアーリーセーフなどを使ってください。
同じ殺虫剤を使い続けると耐性がつきますか?
はい、同じ殺虫剤を繰り返し使うと害虫が耐性を獲得することがあります。異なる系統の殺虫剤とローテーションすることで耐性の発達を遅らせることができます。ハダニなら、バロックフロアブル(使用は1回まで)とベニカXファインスプレーやアーリーセーフのように、成分の違う製品を組み合わせます。
複数の殺虫剤を同時に混合して使ってもよいですか?
原則として、農薬ラベルに記載されていない混合は避けてください。薬害や効果の低下につながる可能性があります。複数の薬剤が必要な場合は、散布日を分けるか、製品の「混用適否」を確認してから使用してください。
まとめ
- 害虫の種類(ハダニ・カイガラムシ・コナカイガラムシ等)によって有効な殺虫剤が異なる
- ハダニには、花き類・観葉植物のハダニ類に登録のある製品(バロックフロアブル・アーリーセーフ等)を使う
- 同じ殺虫剤を繰り返し使うと抵抗性が生まれるため、系統の異なる製品をローテーションする
- ラベルの適用表(作物・害虫・倍数・回数)に従い、使用時はマスク・ゴム手袋を着用する
- 高温時や直射日光下での散布は薬害リスクがあるため朝方・夕方が望ましい





