オトンナ・ユーフォルビオイデス(黒鬼城)

オトンナ・ユーフォルビオイデス オトンナ

オトンナ・ユーフォルビオイデス(黒鬼城)とは

オトンナ・ユーフォルビオイデス(Othonna euphorbioides、和名:黒鬼城/こくきじょう)は、南アフリカ北ケープ州のブッシュマンランド〜カミースベルクにかけての花崗岩ドーム地帯に自生する、キク科オトンナ属の塊根植物です。種小名「euphorbioides」が示すとおり、太く膨らんだ多肉質の茎はユーフォルビア(トウダイグサ科)を思わせる質感を持ち、オトンナ属の中でもひときわ個性的なシルエットで知られています。

キク科の多肉植物であるオトンナ属は、多肉質の塊根と、黄色いデイジー状の頭花(複数の小花が集合した構造)を咲かせる種が多い冬型植物のグループです。ユーフォルビオイデスは秋に葉を出し、自生地では冬(南半球の冬にあたる5月〜7月下旬ごろ)に、花びらのように見える舌状花のない黄緑色の頭花を咲かせます。夏は葉を半ば落として休眠します。

SANBI(南アフリカ生物多様性研究所)のレッドリストではNear Threatened(準絶滅危惧)に評価されており、2019〜2021年には191株を超える違法採取株が押収された記録も残っています。国内では実生株を中心に流通し、多肉質な茎の造形が塊根植物ファンから注目されています。

基本情報

項目 内容
学名 Othonna euphorbioides Hutch.
和名 黒鬼城(こくきじょう)
科 / 属 キク科(Asteraceae)/ オトンナ属(Othonna)
原産地・自生環境 南アフリカ北ケープ州(Steinkopf〜ブッシュマンランド〜カミースベルク)標高およそ1000〜1600mの花崗岩・片麻岩の岩の裂け目
生育型 冬型(秋〜春が生育期、夏が休眠期)
耐寒温度(最低気温の下限) 5℃前後を目安(オトンナ属の目安。本種の耐寒データは限定的で、霜には当てない)
成株のサイズ目安 高さ15cmほどまで、茎の太さは最大30cm程度
栽培難易度 中級。夏の断水管理がポイント
冬型中級丸型

学名の分類情報はPOWO(Plants of the World Online)およびGBIFで確認できます(2026年9月確認)。

  • 太く膨らんだ多肉質の茎がユーフォルビアを思わせる質感を持ち、6種の中でもっともユーフォルビア的な印象を与える。
  • 花頭が落ちたあとの花柄(花頭を支える柄)が硬く残り、トゲになる。
  • 亀甲状の樹皮を持つヘレイと同じ北ケープ州の岩場に自生するが、本種は黄灰色の剥落性樹皮を持ち質感が異なる。
  • 頭花に舌状花がなく黄緑色で、甘い香りを持つ点も特徴的。自生地では葉のある冬に咲く。

名称と表記について

ユーフォルビオイデスは和名「黒鬼城」と学名カタカナ表記の両方で流通しています。

区分 表記例 補足
学名 Othonna euphorbioides Hutch. POWO・GBIFの現行受理名
和名 黒鬼城(こくきじょう) 多肉質の黒みがかった茎の質感に由来するとされる園芸流通名
カタカナ表記 オトンナ・ユーフォルビオイデス 日本での一般的な呼称
検索のコツ 黒鬼城 / Othonna euphorbioides 和名と学名の両方で検索すると情報に辿り着きやすい

種小名「euphorbioides」はラテン語で「ユーフォルビア属に似た」を意味し、太く膨らんだ多肉質の茎の質感がユーフォルビア属(トウダイグサ科)を連想させることに由来します。ただし科レベルではまったく異なる系統に属し、花の構造(キク科の頭花とトウダイグサ科の杯状花序)を見ればすぐに区別がつきます。

規制と流通

オトンナ・ユーフォルビオイデス(黒鬼城)は、南アフリカが自国の保護のために登録したCITES(ワシントン条約)附属書IIIに掲載されています(2023年2月から。2026年9月時点、Species+で確認)。南アフリカから輸出する際には同国の輸出許可書が必要です。オトンナ属は属全体では掲載されておらず、附属書IIIに入っているのは本種のほかカカリオイデス・レトロルサ・アルミアナ(O. armiana)など一部の種と、クラビフォリアなどを含むCrassothonna属(属全体)です。掲載状況は変更されることがあるため、輸出入を検討する場合はCITES公式チェックリストで最新情報を確認してください。

ユーフォルビオイデスはSANBIレッドリストでNear Threatened(準絶滅危惧)に評価されています。2019〜2021年には191株を超える違法採取株が当局に押収された記録があり、多肉質な茎の観賞価値の高さが違法採取の圧力につながっていると指摘されています。

国内流通は塊根植物の専門店や即売会が中心で、実生株からじっくり育成された株が中心です。ホームセンターでの取り扱いはまだ限られます。現地球(現地株)を検討する場合は、正規の輸入ルートを経ているかを販売者に確認することが望ましいです。詳しくは購入前に確認しておきたいポイント(生育型や株の状態の見分け方)もあわせてご覧ください。

詳細はワシントン条約(CITES)ガイドをご覧ください。

形態の特徴

塊根・茎

ユーフォルビオイデス最大の特徴は、短く膨らんだ多肉質の茎です。株の高さは15cmほどまでですが、茎の太さは最大30cm程度になり、表皮は黄灰色で剥落性があります(SANBI)。花頭が落ちたあとの花柄は硬いまま残り、長さ1.5〜3cmほどの1本または二又のトゲになります(Strelitzia 30)。

花

花は黄緑色の小さな花頭が散状に集合して咲きます。自生地では秋に葉を出したあと、南半球の冬にあたる5月〜7月下旬ごろに咲くとされ(SANBI)、植物誌(Strelitzia 30)では7〜11月と記載されています。香りが甘いことでも知られています。標高およそ1000〜1600mの花崗岩の岩場の裂け目という自生環境も、この植物の個性を形づくる要素のひとつです。

項目 内容 補足
花色 黄緑色 小さな花頭が散状に集合
花の印象 密集した小型の頭花 甘い香りを持つ
開花時期 葉のある時期(秋に葉が出たあと) 自生地では5月〜7月下旬ごろ(南半球の冬)。植物誌では7〜11月
香り 甘い香り 6種の中でも香りの記録がある数少ない種

自生地と育て方の考え方

ユーフォルビオイデスが自生する南アフリカ北ケープ州の標高およそ1000〜1600mの地帯は、花崗岩ドームの裂け目という特殊な地形に位置し、冬に雨が降り夏は乾燥する冬雨型の気候域です。岩の割れ目にわずかに溜まった土壌に根を張り、厳しい乾燥に耐える構造として多肉質の茎が発達したと考えられます。日本でいう秋〜春が生育期、夏が休眠期にあたります。

日本の梅雨〜夏は自生地の乾季とは大きく異なる高温多湿の環境です。この時期は夏は極力乾燥させることが腐敗防止の最重要ポイントで、多肉質の茎に水分が滞留すると根腐れ・茎腐れにつながりやすくなります。風通しを確保し、断水気味の管理を徹底してください。

育て方

オトンナは南アフリカ原産の冬型塊根植物で、秋〜春に生育し夏は葉を落として休眠します。ユーフォルビオイデスは特に夏の乾燥管理が重要な種です。

ユーフォルビオイデスの光・置き場所の管理は?

生育期(10〜4月頃)は日当たりのよい屋外か室内の南向きの窓辺に置き、夏の休眠中(6〜8月)は直射日光を避けた風通しのよい明るい日陰に移すのが目安です。屋外に置くのは霜の心配がない10〜11月と3〜4月ごろが目安で、真冬は室内の窓辺で管理します。

詳しくは光と置き場所を参照してください。

ユーフォルビオイデスの温度管理と越冬方法は?

冬は最低5℃前後を下回らないようにし、10〜20℃程度で管理するのが目安です。霜には当てず、屋外の株は最低気温が5℃を下回る前(霜の予報が出る前)に室内へ取り込みます。標高およそ1000〜1600mの岩場に自生するため一定の耐寒性はあるとみられますが、詳細なデータは限定的なため、オトンナ属の目安に合わせています。

詳しくは温度管理と越冬を参照してください。

冬越しの具体的な手順(取り込み・断水と加温・春の戻し方)は冬の管理で解説しています。

ユーフォルビオイデスの水やり頻度と量は?

生育期(10〜4月頃)は鉢の中まで乾いたら鉢底から流れ出るまで与え、気温の低い12〜1月は月2回程度、生育が盛んな2〜3月は週1回程度が目安です。葉が黄ばみ始めたら減らし、落葉後の夏(6〜8月)は断水します。本種は夏の乾燥管理が特に重要で、休眠中は極力乾燥させて腐敗を防ぎます。

実生から育てる場合、SANBI は、秋にまいて発芽まで用土を湿らせておくと約2週間で発芽するとしています。発芽後の幼苗の水やりの目安は確かめられていません。

詳しくは水やりの基本を参照してください。

ユーフォルビオイデスへの肥料の与え方は?

10〜4月の生育期に、規定より薄めた液体肥料を月1〜2回程度与えるのが目安で、低温で成長が鈍る時期は間隔を空けます。5〜9月の休眠期・高温期は与えません。

施肥の基本は肥料の基本を参照してください。

ユーフォルビオイデスに合った用土と配合は?

軽石50%・日向土30%・硬質赤玉土20%の過湿対策ブレンド寄りの配合が目安で、夏の休眠中に用土が湿り続けないようにします。排水性・通気性に優れた用土が必須で、軽石や赤玉土を多く配合した水はけの良い配合を使用します。

ユーフォルビオイデスの鉢の選び方と植え替え時期は?

生育再開前の秋口に根の状態を見ながら行うのが適期です。詳しくは植え替え方法を参照してください。

鉢の素材やサイズの選び方は塊根植物の鉢の選び方を参照してください。

実生株と現地株の違い

ユーフォルビオイデスも現地株と国内実生株の両方が流通しています。

項目 現地株 実生株
形の個体差 野生の環境で育ったため茎の太り方や枝ぶりに個性が出やすい 比較的均一な形状になりやすい
管理の難易度 輸入時の根のダメージがあるため初期管理が難しい 国内環境に適応しており比較的管理しやすい
育てる目的 個性的なフォルムの鑑賞・コレクション 長期栽培・多肉質な茎の生長を楽しむ
ホームセンターでの遭遇率 ほぼ流通なし マニア向け種のため、ホームセンターでの取り扱いは期待しにくい

「実生株」「現地株」という呼び方の意味や、どちらを選ぶかの一般的な目安は実生株と現地株の違いで、タネから育てる場合の用土・腰水・発芽温度などの手順は塊根植物の実生(タネまき)のやり方で解説しています。

よくあるトラブルと対処

症状 主な原因 対処
夏に茎の基部が柔らかくなる 高温多湿による根腐れ・茎腐れ 断水し、風通しのよい場所に移動。腐敗部を除去して乾燥させる
生育期に葉が黄化・落葉する 過湿または根傷み 水やりを控え、根の状態を確認。必要に応じて植え替え
茎が細く間延びしている 日照不足 より日当たりのよい場所に移動し、徒長を防ぐ
秋になっても新葉が出ない 夏の管理不良または根の活力低下 水やりを再開し、置き場所・根の状態を見直す

まとめ

  • オトンナ・ユーフォルビオイデス(黒鬼城)は、太く膨らんだ多肉質の茎がユーフォルビアを思わせる個性的な冬型塊根植物
  • SANBIレッドリストでNear Threatened(準絶滅危惧)評価。過去に191株超の違法採取押収の記録がある
  • 夏は極力乾燥させることが腐敗防止の最重要ポイント
  • 秋にまき、用土を湿らせておくと約2週間で発芽する(SANBI)
  • 花後に花柄がトゲとして残る性質と、自生地では冬に咲く、甘い香りの黄緑色の花が個性的

よくある質問(FAQ)

オトンナ・ユーフォルビオイデスの夏の管理で気をつけることは何ですか?

夏は極力乾燥させることが最重要です。多肉質の茎に水分が滞留すると腐敗につながりやすいため、断水気味にして風通しの良い半日陰で管理してください。

オトンナ・ユーフォルビオイデスは種から育てられますか?

はい、秋に播種すると発芽まで約2週間ほどとされ、比較的早く発芽します。SANBI は、水はけのよい砂質の用土にまいて小石か軽石で覆い、発芽するまで用土を湿らせておくとしています。

オトンナ・ユーフォルビオイデスの花が終わったあと、花の柄が硬いトゲになりましたが、これは異常ですか?

異常ではありません。ユーフォルビオイデスは花頭が落ちたあとの花柄が硬く残り、トゲになる性質を持っており、これはこの種の自然な特徴のひとつです。株の健康状態に問題があるわけではないので、そのまま観察を続けて問題ありません。

オトンナ・ユーフォルビオイデスとユーフォルビア属の植物は近い仲間ですか?

いいえ、科レベルで異なります。種小名「euphorbioides」は茎の質感がユーフォルビア属(トウダイグサ科)に似ていることに由来しますが、ユーフォルビオイデス自身はキク科オトンナ属の植物です。開花時にはキク科特有の頭花を咲かせるため、花を見れば容易に区別できます。