オトンナ・レトロルサ

オトンナ・レトロルサ オトンナ

オトンナ・レトロルサとは

オトンナ・レトロルサ(Othonna retrorsa)は、南アフリカ北ケープ州ナマクワランドのスプリングボック・カミースクルーン・ホンデクリップバーイに囲まれた狭い範囲にだけ自生する、キク科オトンナ属の塊根植物です。和名は確認できていませんが、直立性・多頭化した株姿と、網状脈が目立つ灰白緑色の葉が特徴で、国内では学名のカタカナ表記で流通しています。

キク科の多肉植物であるオトンナ属は、多肉質の塊根と、黄色いデイジー状の頭花(複数の小花が集合した構造)を咲かせる種が多い冬型植物のグループです。レトロルサは地上部で叢生するタイプの塊根を形成し、他5種の多くが単幹の塊根を持つのとは対照的な株姿を見せます。

国内では「成長が早く丈夫で初心者向け」と評価されることが多い一方、SANBI(南アフリカ生物多様性研究所)のレッドリストではEndangered(絶滅危惧)に評価されており、過去60年で野生個体群が30%以上減少したとされています。栽培自体は比較的取り組みやすい種ですが、野生個体が置かれている状況は深刻であるという背景も知っておきたいポイントです。

基本情報

項目 内容
学名 Othonna retrorsa DC.
和名 確認できず(学名のカタカナ表記が中心)
科 / 属 キク科(Asteraceae)/ オトンナ属(Othonna)
原産地・自生環境 南アフリカ北ケープ州ナマクワランド(スプリングボック〜カミースクルーン〜ホンデクリップバーイ周辺)。花崗岩の岩の斜面や、岩の間の砂利地に生える
生育型 冬型(栽培下では10月ごろに新葉が出て、4月ごろに葉が黄ばんで落ち、夏は休眠するとされる)
耐寒温度(最低気温の下限) 5℃前後を目安(オトンナ属の目安。本種の耐寒性を示す資料は見つかっておらず、霜には当てない)
成株のサイズ目安 中型(直立性・多頭化して叢生するため株全体の横幅が出やすい。詳細な数値データは限定的)
栽培難易度 中級
冬型中級分枝型

学名の分類情報はPOWO(Plants of the World Online)およびGBIFで確認できます(2026年9月確認)。

  • 単幹の塊根を持つ他5種と異なり、直立性・多頭化した叢生タイプの塊根を形成する。
  • 網状脈の目立つ線形〜倒披針形の葉を持ち、葉脈のパターンが識別ポイントになる。
  • 自生地はナマクワランドの狭い範囲に限られ、花崗岩の岩場に生える。
  • 国内では「成長が早く丈夫」と評価される一方、野生個体群はSANBIでEndangered(絶滅危惧)評価という対照的な立場にある。

名称と表記について

レトロルサは和名が確認できておらず、学名のカタカナ表記が国内流通の中心です。

区分 表記例 補足
学名 Othonna retrorsa DC. POWO・GBIFの現行受理名
カタカナ表記 オトンナ・レトロルサ 日本での一般的な呼称
検索のコツ Othonna retrorsa 和名が確認できないため学名での検索が確実

種小名「retrorsa」はラテン語で「反り返った・後方に曲がった」を意味するとされ、葉や枝の形状に由来すると考えられますが、命名の経緯についての詳細な文献は確認できていません。

規制と流通

オトンナ・レトロルサは、南アフリカが自国の保護のために登録したCITES(ワシントン条約)附属書IIIに掲載されています(2023年2月から。2026年9月時点、Species+で確認)。南アフリカから輸出する際には同国の輸出許可書が必要です。オトンナ属は属全体では掲載されておらず、附属書IIIに入っているのは本種のほかカカリオイデス・ユーフォルビオイデス・アルミアナ(O. armiana)など一部の種と、クラビフォリアなどを含むCrassothonna属(属全体)です。掲載状況は変更されることがあるため、輸出入を検討する場合はCITES公式チェックリストで最新情報を確認してください。

レトロルサはSANBIレッドリストでEndangered(絶滅危惧)に評価されており、過去60年で野生個体群が30%以上減少したとされ、違法な現地採取が主な要因とされています。栽培下での実生株が丈夫で育てやすいことと、現地の野生個体群が深刻な圧迫を受けていることは別の問題として理解しておく必要があります。

国内流通は実生株が中心で、塊根植物の専門店のほか、成長の早さや育てやすさから比較的見かける機会がある種です。現地球(現地株)を検討する場合は、正規の輸入ルートを経ているかを販売者に確認することが望ましいです。詳しくは購入前に確認しておきたいポイント(生育型や株の状態の見分け方)もあわせてご覧ください。

詳細はワシントン条約(CITES)ガイドをご覧ください。

形態の特徴

塊根・茎

レトロルサ最大の特徴は、地上部で叢生する塊根です。直立性の茎が多頭化しながら株立ちになり、単幹の塊根を持つ他種とは異なる群生的なフォルムを見せます。

葉

葉は線形〜倒披針形で、灰白緑色をしています。表面に網状脈が目立つのが特徴で、この葉脈のパターンは他のオトンナ属種と見分ける手がかりのひとつになります。

花

キク科らしい黄色いデイジー状の頭花を、長い花茎に1〜5個ほどつけます。自生地での開花は8〜9月(南半球の冬の終わり〜春の初め)です(Strelitzia 30)。多頭化した株全体に花が咲く姿が観賞のポイントです。

項目 内容 補足
花色 黄色 キク科特有のデイジー状の頭花
花の印象 多頭化した株に複数咲く 叢生する株姿と合わせて楽しめる
開花時期 葉との前後は資料が見つかっていない 自生地では8〜9月(南半球の冬の終わり〜春の初め)

自生地と育て方の考え方

レトロルサが自生する南アフリカ北ケープ州ナマクワランドの花崗岩の丘陵や山地(カミースベルフ周辺)は、冬に雨が降り夏は乾燥する冬雨型の気候域です。栽培下では10月ごろに生長点で新葉が出始めて生育が始まり、4月ごろに葉が黄変して落葉し、夏は休眠するとされます。

海外の栽培資料にある「10月に新葉が出て、4月に落葉する」という記述は、夏に休眠させ10月から水を与えるという北半球での栽培のリズムで、日本の暦にそのまま当てはまります。南半球の季節に合わせて半年ずらして読むと、夏の休眠中に水を与えることになるため注意してください。

自生地では花崗岩の岩の斜面や、岩の間の砂利地に生えます。日本で育てる場合も、日照をしっかり確保し、水はけのよい用土で夏の高温多湿を避けることが管理の基本方針になります。

育て方

オトンナは南アフリカ原産の冬型塊根植物で、秋〜春に生育し夏は葉を落として休眠します。レトロルサは成長が早く丈夫とされる種で、オトンナ属の中では比較的育てやすい部類に入ります。

レトロルサの光・置き場所の管理は?

生育期(10〜4月頃)は日当たりのよい屋外か室内の南向きの窓辺に置き、夏の休眠中(6〜8月)は直射日光を避けた風通しのよい明るい日陰に移すのが目安です。屋外に置くのは霜の心配がない10〜11月と3〜4月ごろが目安で、真冬は室内の窓辺で管理します。

詳しくは光と置き場所を参照してください。

レトロルサの温度管理と越冬方法は?

冬は最低5℃前後を下回らないようにし、10〜20℃程度で管理するのが目安です。霜には当てず、屋外の株は最低気温が5℃を下回る前(霜の予報が出る前)に室内へ取り込みます。本種の耐寒性を示す資料は見つかっていないため、オトンナ属の目安に合わせています。

詳しくは温度管理と越冬を参照してください。

冬越しの具体的な手順(取り込み・断水と加温・春の戻し方)は冬の管理で解説しています。

レトロルサの水やり頻度と量は?

生育期(10〜4月頃)は鉢の中まで乾いたら鉢底から流れ出るまで与え、気温の低い12〜1月は月2回程度、生育が盛んな2〜3月は週1回程度が目安です。葉が黄ばみ始めたら減らし、落葉後の夏(6〜8月)は断水します。

レトロルサは成長が早く丈夫とされ、オトンナ属の中でも扱いやすい種です。10月ごろ生長点に新葉が見え始めたら水やりを再開し、葉が黄ばみ始めるのは4月ごろが目安です。

詳しくは水やりの基本を参照してください。

レトロルサへの肥料の与え方は?

10〜4月の生育期に、規定より薄めた液体肥料を月1〜2回程度与えるのが目安で、低温で成長が鈍る時期は間隔を空けます。5〜9月の休眠期・高温期は与えません。

施肥の基本は肥料の基本を参照してください。

レトロルサに合った用土と配合は?

軽石50%・日向土30%・硬質赤玉土20%の過湿対策ブレンド寄りの配合が目安で、夏の休眠中に用土が湿り続けないようにします。排水性・通気性に優れた用土が必須で、軽石や赤玉土を多く配合した水はけの良い配合を使用します。

レトロルサの鉢の選び方と植え替え時期は?

多頭化して株立ちになるため、鉢は横幅に余裕のあるものを選ぶと管理しやすくなります。植え替えは生育再開前の秋口に行うのが適期です。詳しくは植え替え方法を参照してください。

鉢の素材やサイズの選び方は塊根植物の鉢の選び方を参照してください。

実生株と現地株の違い

レトロルサも現地株と国内実生株の両方が流通していますが、成長が早く育てやすいことから実生株の流通量が比較的多い種です。

項目 現地株 実生株
形の個体差 野生の環境で育ったため株立ちの形や葉の付き方に個性が出やすい 比較的均一な形状になりやすい
管理の難易度 輸入時の根のダメージがあるため初期管理が難しい 成長が早く丈夫で、国内環境に適応しやすい
育てる目的 野生由来の株立ちフォルムの鑑賞 成長の早さを活かした育成の楽しさ
ホームセンターでの遭遇率 ほぼ流通なし 専門店・即売会が中心で、大型ホームセンターでの取り扱いは限定的

「実生株」「現地株」という呼び方の意味や、どちらを選ぶかの一般的な目安は実生株と現地株の違いで、タネから育てる場合の用土・腰水・発芽温度などの手順は塊根植物の実生(タネまき)のやり方で解説しています。

よくあるトラブルと対処

症状 主な原因 対処
日本の梅雨〜夏に株元が柔らかくなる 高温多湿による根腐れ 断水し、風通しのよい場所に移動。腐敗部を除去して乾燥させる
季節を勘違いして水やりのタイミングを誤った 資料の月表記を南半球の季節とみて、半年ずらして読んでしまった 日本では10月ごろの新葉を見て水やりを始め、4月ごろの黄葉から減らし、夏は断水する
生育期に葉が黄化・落葉する 過湿または根傷み 水やりを控え、根の状態を確認。必要に応じて植え替え
株が間延びしている 日照不足 より日当たりのよい場所に移動し、徒長を防ぐ
秋になっても新葉が出ない 夏の管理不良または根の活力低下 水やりを再開し、置き場所・根の状態を見直す

まとめ

  • オトンナ・レトロルサは、直立性・多頭化した叢生タイプの塊根と網状脈の葉が特徴のキク科の冬型塊根植物
  • 成長が早く丈夫で、オトンナ属の中では比較的育てやすい種とされる
  • ただしSANBIレッドリストではEndangered(絶滅危惧)評価で、野生個体群は深刻な圧迫を受けている
  • 栽培下では10月ごろに新葉が出て4月ごろに落葉するとされ、日本でも秋に生育を始め、春に休眠に入る
  • 花崗岩の岩場に生える種のため、夏の高温多湿対策と日照確保が管理の基本

よくある質問(FAQ)

オトンナ・レトロルサは初心者でも育てられますか?

はい、成長が早く丈夫とされ、オトンナ属の中では比較的育てやすい種です。ただし冬型植物であるため、日本の秋〜春が生育期、夏が休眠期という基本サイクルを最初に理解しておくことが大切です。

オトンナ・レトロルサは日本ではいつ水やりを始めればよいですか?

10月ごろ、生長点に新葉が見え始めてから少量で再開するのが目安です。海外の栽培資料にある「10月に新葉が出る」という記述は北半球での栽培のリズムで、日本の暦にそのまま当てはまります。夏の休眠中は断水し、新葉の動きを確かめてから始めてください。

オトンナ・レトロルサは育てやすいのに、なぜ絶滅危惧なのですか?

栽培下での実生株が丈夫で育てやすいことと、野生個体群が置かれている状況は別の問題です。レトロルサはSANBIレッドリストでEndangered(絶滅危惧)に評価されており、違法な現地採取などにより過去60年で野生個体群が30%以上減少したとされています。栽培する際は、正規の実生株を選ぶことが野生個体の保全にもつながります。